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 2005年3月初版。この本には、お三方が、単独に出版している著書の中に書かれていることが、小出しに書かれている程度なので、新発見はない。タイトルに関して言えば、「バブル崩壊前の日本とは違った発展段階になるだろう」 という意味の黄金時代である。


【お金を働かせる】
竹村 : 日本人は働いてそれなりに富を手にしたのだから、もうそろそろ楽して楽しむことを考えてもいいと思うし、お金を運用して増やすことを覚えるべきだと思うのですが。
日下 : 本当にそうですね。その点に関していえば、昔イギリスが大金持ちになったときは、インド人を働かせて利息、配当を取りました。また、オランダ人はインドネシア人を働かせて利息、配当を取りました。アメリカは南米と日本人を働かせて利息、配当を取ったんですが、日本の場合はどうしましょうか。
渡部 : アメリカ人を働かせればいい。
日下 : そうそう。働かないだろうけれど(笑)。
竹村 : ものはいいようで、「人を働かす」 のではなく、これからは 「お金を働かせなさい」 という考え方が主流になっていくのでしょうね。 (p.132)
 シンガポールでは、国家がファンド資金を運用して、国民の住宅・医療などの最低保障を維持しているはずである。日本には、諸外国に対して膨大な貸付国債があるといっても、日本政府は、かつて国民に対して戦時国債を発行しておきながら堂々と踏み倒したという過去の立派な実績があるし、社会保険庁の怒髪点を突くほどの呆れた杜撰な実態は国民に遍く知れ渡っていることなので、これら国債が正しく運用されて収益があったとしても、国民に還元されるようなことなどないだろうと、ごく自然に思えてしまう。
 そもそも、諸外国に貸し付けてあるお金も、「債権国が、取立て能力をもっていないと、踏み倒されることになる」と日下さんは言っている。日米安保のような軍事力を後ろ盾にしていないと、踏み倒すことなど平気でやりかねない中国やロシアといった国家 (p.208 ) があることくらいは、知っておかねばならない。
 結論を書くのも憚られるけれど、国家などというものは自分で汗してお金を稼ぐのではないから、その運用など所詮極めて杜撰なものであり、その運用益に期待することなどムダ、ということであろうか。
 今、ニュースで、自民党の桝添厚生大臣が 「安心5つのプラン」 などと耳障りの良いプランを発表していたけれど、おそらく現実的な改善など期待できないだろう。自民党が与党である限り、医師会との癒着関係があるから、後期高齢者を含む医療保険の抜本的な改善は不可能であることを、榊原前財務官が著書の中で書いていたのを思い出す。桝添さんは東大だからこそ既得権益サイドの人脈保守用 “死に体” 人事として厚生大臣の席を与えられていたのではなかろうか。

 

 

【海外にいた経験のある日本人女性】
 塩野七生さんの著作について言及した後で、渡部先生は以下のように言っている。
 海外にいた経験のある日本人女性には、「日本人の男性よ、がんばれ」 と考えている人が案外多いのです。そうはいうものの、自分自身は、日本人の男がふがいないから、大部分は外国人と結婚しているわけですが(笑)。 (p.138)
 このように書いている渡部先生を含め、著者は3人とも海外体験が豊富で、戦争の時代を記憶している昭和一桁世代の方々で、日本の確たるオピニオンリーダーである。男女に関わらず、直接にであれ間接にであれ、海外を体験していないと、「日本」 を尊ぶ気概は薄いものだろう。
 これは、ある程度やむを得ないことなので、日本のことを知りたい人は、海外体験のある著者の本を選んで、彼らの 「日本よ、かくあるべし」 というハートを学ばせてもらえば良いのである。私は3人の著書を合計したら少なくとも40冊以上は読ませていただいている。
 
<了>