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 最近、あらゆる世代の日本全体が老化しているのではないかと思えて仕方がない。
 日本国家の近代史で言えば、立志を持っていた青年・明治、ロマンを抱いていた大正、高度成長を続けていた成年・昭和。現在の日本はメタボリックなボテボテの中年か。
 数日前に読んだ大前研一さんの本と同系統の著作であるけれど、この本の前半には、いろんな人の人生の具体例が各ページに数多紹介されている。読んでいて楽しい書籍である。

 

 

【いつまでも若く生きるために】
 脳の専門家によれば、年をとると記憶力が落ちてくるというのは間違いで、若い時代から思考の整理をする習慣を身につけておけば、年をとってからのほうがきちんと記憶することができるという。しかも人間の脳は、意味のない数字などを記憶するのは苦手にできているが、大切な出来事や大事にしている人のことなら、しっかり覚えることができるというのだ。つまり、何が大事で何が不要か、物事の核心をもう一度整理して自分の脳にインプットしておけば、脳は思い通りに動いてくれるということになる。 (p.167)
 若いとき思考の整理をする習慣が持てない人ほど、年をとってから思考の整理をするのが嫌になってしまうのではないだろうか。そういう人は、大事にしている人の存在のみが、脳の働きを維持する唯一のものになってしまうのだろう。日本人に多そうな気がする。

 

 
【日本のよさを見失った日本人】
 以下の文章は、「日本のよさを見失った日本人」という、この本のまとめ付近の章の書き出し部分である。
 日本人は2000年に1800万人が海外旅行に出かけているが、逆に海外から日本に来る観光客数は、4分の1より少し多い450万人ほどにすぎないという。 (p.219)
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 それでは、日本は外国人を惹きつける魅力のない国かというとそうではない。・・・。サミュエル・ハンチントン教授の著書 『文明の衝突』 から、「世界を八大文明に分けて考えたとすると、1つの国で文明・文化を持っている国は唯一、日本しかない」 (p.220)
 この後、素晴らしい文章が続いているけれど、長くなるので書きださない。クロージング・センテンスはこうである。
 素晴らしい文化を持つ日本を誇ると同時に、自分のしてきたことに自信を持ち、次の自分をつくったらいいと思う。
 自分のしてきたことになどさして自信の持てない我々一般人であっても、日本という国家は、ハンチントン教授が指摘してくれているように、類稀なる素晴らしい国家であることは確かである。
 青雲の明治、ロマンの大正、盛運の昭和、いずれの時代の日本人達も、世界に対面して日本人であることにプライドを持って生きていたように思えて仕方がない。なのに、現在の平成の日本人が、日本の良さを自覚できていないとしたら、明治・大正・昭和を築いてくれた日本の先人に対して、恩を仇で返すような失礼になりはしないか。
 この本の著者である竹村さんなど、昭和1桁世代の方の本を読むたびにそう思えてしかたがない。
 
<了>