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 日下さんと、最近テレビに良く出ている森永さんが、それぞれのテーマについて意見を述べ合っている。日下さんの本は過去に多く読んでいるので、チャンちゃんにとってはそれほど真新しいくはないけれど、森永さんの本は、かつて読んだことがないので新鮮である。


【失業中の土地と人】
 田舎には、労働力不在や減反政策で失業している土地があり、都会にも田舎にも失業中の人々が沢山いる。この二つを組み合わせられないのは何ゆえか? 

 森永さんは、霞ヶ関の住人が、「効率優先の考え方で預金通帳の額が増えれば幸せになれる」 と考えているからであると言う。
 既に貯蓄額ゼロの世帯が20%に達しているという。仮に、このような人々が失業し、失業している土地で何かをすることで生活ができるならば、田舎暮しも結構いけてる幸せな生活になるのかもしれない。しかし、農業生活は、慣れない人にとっては大変な生業である。


【売春を発達させたのは貨幣経済】
 昔の日本では、若者達が夜這いに行き、女性が妊娠すると、その時点で女性は男を逆指名することができたという。つまり、父親の遺伝子を持たない子供のいる家庭が日本にはいくらでもあったという。「この子、俺に似てないんだよね」 と言いながら育てるのが当時の日本の文化であり、地域の団結力にもなっていたという。
 明治政府が夜這い禁止令を出し、1950年代に日本から夜這いの習慣が消え、売春制度ができると、性の欲望をお金で買うようになり、借金のカタに山林をとられる農民が続出し、それが現在の国有林野事業のベースになっているということである。 (p.151)

 これはビックリな話ですが、森永さんは、一つのありかたとして提示しています。
 富の格差や老後の心配を抱える私たちの世代のために、売春制度を全廃し、夜這いOKに戻したらどうなるのだろうか? 笑っちゃう思考実験ですけど、地域の共同体化が進んで、子供も老人も地域で支えあう良好な社会に戻れるのだろうか・・・。しかし、そんなのって現在の若者にはありえない(のか?)。考えてみるだけで、頭が梅毒になっちゃいそうな気がする。原初的な生活にいやおうなく突き戻すかのような地球規模の天変地異でもない限り、性にオープンなかつての文化は再現しないように思えてしまう・・・・・。


【基礎を教えない「ゆとり」教育】
 森永さんの見解。

 ある程度のレベルの知識というものを幅広くもたせなかったら、アイデアは出てきません。基礎が身についた上での 「ゆとり」 を作らないといけないのです。 (p.171)
 当たり前すぎるほどに当たり前のことである。考えるのが得意でないのは誰だって同じである。要は材料がいくつあるかである。材料が増えれば自ずとそれらの材料が繋がって考えられるようになるのである。暗記であってもいい。考えるためには、最低限の材料となる核がありさえすれば、水滴ができ、雨になり、川になるのである。それさえせずに、子供たちに 「ゆとり」 をあたえても、脳内はカラッポのまま、せいぜい不善をなすだけではなかろうか。
 イギリスで買い物をした時、暗算で合計額を用意しておいてピッタリ出すと、レジの学生は目を皿のようにしていた。この程度の暗算で何を驚いているのか、と思ったのだけれども、「ゆとり」 教育以降の日本の子供たちも同じようなレベルになっているに違いない。まさに文部科学省の指示に寄って、“愚民が生産” されているのである。


【核を持つか否か】 
 日下さんは、「核をもつかもしれない、という意見を言うことも必要。アメリカにべったりついていても世界中だれもほめてはくれない」 と主張。また、「森永さんはクエーカー教徒と同じ。クエーカー教徒は、『女房、子供を目の前で殺されても、絶対に武器は取らない』 ここまで考えているのなら、私は尊敬します」 と書いている。
 クエーカー教徒は、若いイギリスの貴族が始めたキリスト教の一派で、熱心に祈りだすと体が震える(クエークする)のでその名が付いた。天皇が皇太子だった時の家庭教師の女性がクエーカー教徒だった。 (p.235)

   《参照》  『子どもが孤独でいる時間』 エリーズ・ボールディング (こぐま社)

              【クエーカー教徒 と 惟神人(かんながらびと)】
 私は、両者の意見に賛成である。決して矛盾することではない。


【印象】
 全体を通読してみて、森永さんの考えは、「この辛らつな現実をボヘミアンに生き抜こう」 とでも言いたげな考えに聞こえてくる。経済を語る上では不謹慎である、ということではない。楽天的な明るさに好感が持てるということである。
 日下さんは、常に普通の人とは一風変わった視点で未来へと向かう流れの筋を見出そうとしているように思える。だからこそ日下さんの考えは面白いのだ。
 二人の見解は異なっているけれど、どちらも、日本人の幸せを考えていることに違いはない。

 

<了>

 

  森永卓郎・著の読書記録

     『お金に縛られない生き方のすすめ』

     『辞めるな!キケン!!』

     『ビンボー主義の生活経済学』

     『年収300万円時代 日本人のための幸福論』

     『日本人を幸せにする経済学』

 

  日下公人・著の読書記録