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 日下さんの本はどれであれスラスラ読めて、それでいて印象に残るところが多い。

 

 

【消費需要の○○弾力性】
 経済用語を使って言えば、(日本とアメリカでは) 「消費需要の価格弾力性」 がぜんぜん違う。安くなれば買うというよりは 「おもしろければ買う」 のだから、日本では 「文化弾力性」 とか 「興味弾力性」 という概念をつくらなければならない。  (p.66-67)
 アメリカで消費需要の多くを占める住宅は、移民国家ゆえに、車、教育、次に住宅という順番でお金が使われることが分っているので、住宅の買占め需要が膨らむ傾向がある。日本にはこのような消費順位はないのだから、アメリカ連邦準備銀行が金融を緩めて景気が良くなったからといって、日本がまねをしても同じようには行かない。 “インフレターゲットの設定” とか、アメリカの学者の受け売りをしてはいけない、と日下さんは書いている。
 日米の経済比較をする上でも、“量” を基準に計りやすいアメリカと、“質” を基準に計らねばその本質を見出しえない日本という違いがある。

 

 

【二極化】
 働く必要のない高等遊民と本当に貧しい人(ホームレス)というのは、行動様式その他が似てくるということを、戦前の体験などから具体的に示した上で、以下のように記述している。
 二極化とは 「上」 と 「下」 ではなく、 「上&下」 と 「中」 になる。こういう二極化論は誰も言わないから、頭の体操として付け足しておこう。  (p.115)
 日下さんらしい記述である。

 

 

【経済的に日本は独走している】
 日本経済は、単にボリュームで巨額であるとか、黒字であるとかを超えて、質的に独立している。美や風流に加えて、品格・道義・徳性といった新しい段階に達している。そういう独走である。  (p.67)
 貿易黒字、対外債務の収支黒字、知的財産権の黒字だけでも、世界市場で、かつてない希な強さの日本なのであるけれど、日下さんが強調しているのは、これら 「量」 で表されるものよりも 「質的に独立しているものの強さ」 である。
 中国は、せいぜい「量」としての発展のみであり、日本のような 「良質」 な国家になれるか否かを問うならば、中国の将来を日本が怖れる必要があるかどうかは明白である。
 質的にも文化的にも日本は圧倒的に秀でているから、日本経済は独走するのである。

 

 

【イエローハウス】
 “強すぎる円” の問題をアメリカ人は日本原因説で考えるが、それは天動説的な誤りで、ホントはアメリカに原因がある。貯蓄と消費のアンバランスをこのまま放置していると、やがてアメリカは破産して、日本人その他が管財人としてこのワシントンへ乗りこんでくることになる。連邦準備銀行とホワイトハウスの間の空き地に新しいビルを建って、それは 「イエローハウス」 と呼ばれるかもしれない。  (p.161)

 

 

【 「人種差別撤廃」 を世界で最初に唱えた国】
 1917年にワシントンはセパレート・シティになっている。セパレート・シティとは、バス、学校、公共施設たとえばトイレまで、人種差別になっている街である。黒人と白人を完全に分けていた。
 1919年のヴェルサイイユ講和会議で、日本は 「人種平等規約」 を提案する。国際連盟の規約に 「あらゆる人種は平等である。人は人種によって差別されない」 という一項を入れることを提案したのである。しかし否決された。
 アメリカで 「公民権法」 が成立したのは1957年。 「人種差別撤廃法」 が1964年に可決された。
 日本のほうが45年も先進国である。   (p.154-157)

 

 

【日本マンガ・リテラシー(読み書き能力)が世界を変える】
 日本精神は、人間にとっての現実をそのまま素直に受け入れすべての人々を 「共生する人間 」 として認め合うことを特徴としている。
 日本のマンガ・アニメはそういう日本精神の特徴をよく表わしていて、世界の人々に刺激を与え、世界の人々を惹きつけている。欧米人にとってそれは 「日本マンガ・リテラシー」 という能力の発達だと私は思っている。
 絵とストーリーとキャラクターの3拍子がそろうことによって、はじめて日本人の思想やセンスや常識が先方に伝わっている。
 これは文章や字引ではできないことである。 (p.206)
 
【 “無宗教” は “理性なき野蛮人” と理解するヨーロッパ人】
 欧米人に宗教を聞かれて “無宗教” と答えると、理性に欠陥がある人と思われる可能性がある。にもかかわらずそれを公言するとは、なるほど理性が不足の野蛮人か・・・・と先方は考えてあなたの顔を見るのである。信心は迷信の一種ではなく理性の働きだ、というスコラ哲学がヨーロッパではまだ残っているから、それを心得ておかねばならない。    (p.209)

 

 

【日本のマンガは暴力とセックスが多いか?】
  「日本のマンガには暴力とセックスが多い。深い日本精神がその奥にあるというなら、それは何か教えろ 」 という質問が出た。この質問は良くでる。
 アニメーションは、日本では1年間に4000本も作られている。その中にはほのぼのとした愛情物語から、人間の内面を深く描いた哲学的なもの、そして暴力やセックスまで全部ある。
 ところがアメリカは、その暴力とセックスだけを買っていく。真ん中は買ってゆかない。   (p.210-211)
 インターネットの利用状況も、セックス関連が実質8割を超えているのは世界的な傾向であるらしい。
 つまり、外国人バイヤーの需要に合わせた選択段階で生じている日本マンガに対する偏向と誤解である。

 

 

【22世紀は日本語の世紀】
  「日下さん、22世紀をどう思うか」 とやぶから棒に聞かれたので、直感的に、「22世紀には英語は廃れます。日本語が中心になります。英語まじりの日本語が国際言語になるでしょう」 と言った。 (p.218)
 今日の世界が国際語として英語を使っているのは、英国とアメリカが経済的な覇権国家であったから、というに過ぎない。これからは、経済力と文化力で他を圧倒する日本が世界の中心になるのだから、日本語が中心になってゆくのは当然である。
 今日までアメリカが延命しているのは産業界を中心に日本化してきたからである。中国が経済的に持続発展するとするなら日本化することにおいてのみである。日本なくして22世紀の世界はない。
 
 <了>

 

  日下公人・著の読書記録

     『デフレ不況の正体』

     『思考力の磨き方』

     『独走する日本』

     『日本と世界はこうなる』

     『こんなにすごい日本人のちから』

     『反「デフレ不況」論』

     『人生応用力講座』

     『僕らはそう考えない』

     『「大和」とは何か』

     『日本人の「覚悟」』

     『官僚の正体』

     『お金の正体』

     『栄光の日本文明』

     『「見えない資産」の大国・日本』

     『強い日本への発想』

     『アメリカはどれほどひどい国か』

     『遊びは知的でなくてはならない』

     『「逆」読書法』

     『あと3年で、世界は江戸になる!』

     『日本の黄金時代が始まる』

     『「マネー」より「ゼニ」や!』

     『男性的日本へ』

     『よく考えてみると、日本の未来はこうなります。』

     『上品で美しい国家』

     『数年後に起きていること』

     『アメリカに頼らなくても大丈夫な日本へ』

     『「質の経済」が始まった』

     『 「道徳」 という土なくして 「経済」 の花は咲かず』

     『失敗の教訓』

     『 「人口減少」で日本は繁栄する 』

     『国家の正体』

     『日本人を幸せにする経済学』

     『闘え、日本人』

     『自信がよみがえる58の方法』

     『「考える力」が身につく本』