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 日下さんが主催している東京財団の政策研究誌 『日本人のちから』 の巻頭言が中心になって編集された書籍だという。過去の読書記録に書き出した部分が、この書籍にも記載されている。
 短文で言い切っている文章表現が冴え渡っている。政治経済を扱った書物なのに、誰でもきっと頷いたり笑ったりを最低でもそれぞれ5回はするだろう。

 

 

【男性的日本へ】
  “自ら事に当たる” “責任をもって保護する” “外部に立ち向かう” などの精神は、より多く男性に期待されている。
 日本は国内改革でも外交でも、そういう意味での対応をするようになったので、日本は男性化したし、これからますます男性的になるだろうと私は思っている。   (p.4-5)
 北朝鮮の不審船を撃沈した海上保安庁の巡視艇の射撃映像は、まさに日本が男性的になった象徴だろう。

 

 

【按配力なき現実主義の危険】
 按配力がない人には、そもそも区別がないのがよいのである。
 全国一律・一本化、ユニバーサルサービス、国際標準規格、何なら十割そばもこれに加えておこう。
自分の思考力不足に合うように社会のほうを変えようとしている。

 こういう理想主義は思考力の低下を招く。
 将棋を例にとれば、金銀桂香などの別をなくして歩だけでやろうというようなもので、そんなことでは思考の楽しみや冴えが消える。
 実務は常に按配力を要求している。
 それから未来への挑戦は塩梅率の変更にかかっている。    (p.38-39)

 

 

【金儲け一本やりは・・・】
 金儲け一本槍は心の満たされない人がすることである。
 マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、シアトルの湖に面する丘一面に自宅があるが、家を建てるときに図面を広げたら、奥さんが「こんな大きな家なんか私は欲しくない。これは全部お客用じゃないの」 と言った。
 人間、一度に飯を10杯も食べるわけにはいかない。日本では1千年も昔から、慎ましい生活に関するノウハウや常識が蓄積されている。「座って半畳、寝て一畳」 といった教えが落語や浪花節に生きており、知らず知らずのうちに頭に入っている。   (p.151)

 

 

【日本の底力】
 日本人は「世界は平和が正常で、ときに戦争が起きる」と考えるが、略奪精神を基に建国した欧米諸国では弱肉強食の略奪が基本であり、戦争の合間にときどき平和共存と相互扶助の時代があると考える。
 欧米は原始的蓄積を略奪で行なったが、日本は二宮尊徳の教えの通り自らの勤勉によって原始的蓄積を成し遂げた。日本はいくら奪われても高度な勤勉主義で困難を克服し、やがて復興してしまう。再起不能になると思ったら、また別の手で金持ちになる。
 これが日本の底力である。  
 4百年前に徳川家康は、「馬上天下を取るも、馬上天下を治むべからず」として、武力支配を放棄し徳治政治を確立したが、これは今のアメリカが学ぶべき先例である。

 日本人は武力や経済力を超えた「新世界秩序」の作り方を知っている。
 それを言語化し、思想化して世界に向かって説くのが日本のエリートがなすべき任務であり、国際貢献である。 (p.170-171)
 
 
【J&J連合(Jew&Japanese : 日本人とユダヤ人)】
 そのJ&J連合について、新しい展望が見られる。
 これまでは仲間はずれ同士の結合だったと書いたが、これからは「成功者同士」の結合として姿を現すだろうという予測である。
 ただし、両者のやることはまったく違っている。
 対照的だから、それを論ずるのは今後世界の大きな話題になることだろう。   (p.173)
 ビジネスでのJ&J連合の成功例は、東芝のフラッシュメモリに関する共同開発がある。
 対照的というか対極的・対蹠的ですらあるような文化的違いをもちながら、潜在する部分で繋がっていそうな点がいくつかある。
    《参照》   『知られざる技術大国 イスラエルの頭脳』 川西剛 祥伝社
            『大使が書いた 日本人とユダヤ人』 エリ・コーヘン 中経出版
            日本文化講座 ④ 【 日本と古代キリスト教の関係 】


 

【倫理、道徳がしっかりしてないと高くつく】
 倫理、道徳がきちんとしてないと、コストが高くなって大変だということを知っておかなければならない。
 アメリカに学ぶより、アメリカと離れることのほうが日本の国益になる例が増えてきた。これもまた「そんなに深い関係はないと思って付き合いなさい」と言う理由である。
   《参照》   『 「道徳」 という土なくして 「経済」 の花は咲かず』 日下公人 祥伝社