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 世界中での経験が豊富な著者である。机上の理論だけで世界を見てきた方ではない。実学として世界を見てきた方である。
 日本以外の世界中の国々が、国家と言うものに関して、どういった見方をしているのか知って、行動すべきである。タイトルの「国家の正体」とは、諸外国の国家観のことでもあるようだ。


【トヨタはなぜ強いのか?】
 アメリカ人に問われて、トヨタは答えた。「強さの秘密は、すりあわせと改善です」。「俺のところは絶対に系列を壊さなかった」と言った。「すりあわせ」、「改善」、「系列」、「根回し」、「生えぬき」などは、アメリカ経済学・経営学のキーワードになりかけている。
 しかし、日本経済を守るべき立場にある日本政府と学者と新聞が、アメリカに洗脳されて教条的な市場原理主義を日本経済に押し付けたのは困ったものである。(p.82)



【国家は】
 国家は、幼稚産業保護、国産保護のときに出てくるのであって、企業をぶっ壊してアメリカに売るためにでてくるなどは言語道断である。これは日本国民全ての願いなのだが、正面切ってそう論評する学者や新聞はない。 (p.84)


【崇洋媚外】
 日本全体が、第二次大戦に敗戦して以来、崇洋媚外になっているのである。これは正しい国際感覚ではない。どうも民間人よりも公務員のほうがこういう国際感覚に欠けていて、むしろ崇洋媚外を国際化と思っているらしいのは困ったことである。



【日本人は世界で最も知的である】
 日本人は知的である。その上、日本語と日本文は1千年間も一貫して続いているから、その気になれば古い本がいくらでも読める。こんな国は世界中にない。
 イギリスの古い歴史研究はフランス語やラテン語でないとできない。英語で書かれた本はまず宗教改革以後である。
 中国は簡体字にしたから古典を読める人がいないことは、国家のアイデンティティーを確立すると言う意味では大失敗である。韓国も同じで、いまに両国は日本人が書いた日本語の歴史書で自国の歴史を学ぶようになるであろう。
 アメリカもまた日本占領中に、日本の思想の一部を抹殺するべく数千冊の図書を危険図書に指定して日本中の図書館から接収したが日本では効果がなかった。それは各家庭にたくさん本があったからで、そんなことを思いつくとはアメリカには本は図書館にしかなかったらしいと分かる。
 日本の文明度はアメリカ人の想像を超えていた。 (p.100)

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 上海図書館に行ったことがある。壁には各国の文字で 「知識は力なり」 と書かれており、内装の仕方はなかなか上手だとは思うが、都市の規模からいってそれ程大きな図書館とはいえないであろう。市内で見つけた新華書店などの書店規模は、紀伊国屋などには比較すべくもない。図書館や書店自体、かなり珍しいものであり、規模も弱小である。日本の出版事情とは比較にならない。駅の待ち合わせ室で本を、いや活字を読んでいる人を見かけるのはかなり稀である。蛇足ではあるが、書店の平積みには、オカルト物が多いのが中国の特徴である。
 韓国も図書館、書店については中国と同様である。私のこのブログの「日韓政治経済」のフォルダー内に書かれている程度の内容などは、全て古本屋で見つけた本の知識だけで書かれているのであるが、書かれている内容を読んだ日本でIT技術者として働いている申榮照という韓国人から 「反韓国を煽動する団体の回し者」 というような疑念を記述したメールを受け取ったことがある。そして 「韓国の新聞社や放送局に投稿するつもりです」 とも。大歓迎である。韓国人の一般的な知的領域の偏狭さ、そして思想統制状況を、より確実に知ることができた。(韓国の放送局が私を招待してくれたら喜んで参加する。私がノムヒョン大統領とサシで会話しているところを放映してもらえたら最高である。)
 政治や歴史とは何の関係もない職場で働いている普通の日本人であっても、私がこのブログに書いている程度の内容など、誰でも知ろうとすればいつでも知れるのが日本なのである。中国・韓国いずれも、書籍・情報は統制されている。偏頗な知性しかもてない。中韓に比較して、いや全世界と比較しても、日本人全体の知性は、霊峰富士のように均整が取れていて、その裾野は圧倒的に広い。


【中流的国際関係論では・・・】
 ヨーロッパには上流階級がある。その人たちの関係がそのまま国家と国家の関係の一部になっているということが、われわれ日本人には分かっていない。日本人が考えている国際関係論は、中流的国際関係論で中流階級が有力でない国家の外交は理解の外になっている。そのために損をしていることがたくさんあると思う。 (p.110)


【研究所はどの国に作るべきか】
 中国は特許を守らない、著作権を守らない、インチキをする、盗む。とことんずるい。アメリカは今頃やっと気がついて、中国に研究所は作らないとなった。そして、日本人といっしょに考えると良いものができるということがわかってきた。そこで、また日本をたたいて日本の研究所や工場をアメリカ国内に作らせようとしている。 (p.150)


【北京大学の学生】
 わたしが北京大学で話をしたとき、・・・学生達はまずマルクスの資本論に出てくる用語を知らなかった。勉強はスローガンやイデオロギーを覚えるだけになっている。これでは歴史認識がゼロであるから、今後進展する日中経済協力の姿について教えることができない。プラグマティズムで損得を教えるだけになってしまった。 (p.157)

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 学問の上でも弊害となっている歴史認識の欠如は、中国の政治が「自分で自分を礼賛して、過去を否定する」というパターンの繰り返しだからである。文化大革命しかり、繁体字から簡体字への移行しかり。哀れな国である。

 

<了>