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 久しぶりに読んだ日下さんの本。2007年3月初版。

 

 

【日本の文化がトップなのは・・】
 日本の文化がトップなのは、外国に侵略されることがなく、イデオロギーの強制を受けず、自ら好きな物を好きなだけ受け入れ咀嚼して、創造的に文化が発展してきたらである。フランスの印象派の画家達は、日本の絵画に宗教のしばりがなく自由に思うままに描かれていることに衝撃を受けた。(p.25)
 イデオロギーや宗教から自由であるということは、総じてタブーが少ないということ。これは、日本が、もともと精神的な自由度の高い国であったことを意味している。
   《参照》   『クール・ジャパン 世界が買いたがる日本』 杉山知之 (祥伝社) 《前編》
             【日本マンガが海外で価値を持った理由:タブーのなさ】
             【タブーなきことの実例】

 日本人が西洋の絵画を見ても宗教の縛りをそれほど感じていないのは、日本に紹介されている絵画の多くは、日本人にとって馴染みやすいものを選んでいるからで、もし現地の美術館に行ってみれば、コッテリとした宗教画や貴族の肖像画ばかりが美術館の殆どを占めていることにウンザリするはずである。

 

 

【実際の動き】
 年金改革より年金離脱。教育改革より不登校。
 大学改革より大学離れ。財政改革より外国債購入。
 外務省改革よりアメリカ永住権取得。政治改革より選挙は棄権。
 ジェンダーフリー論より独身生活。雇用革命論よりフリーター。
 アメリカの本質を論ずるより、アメリカの牛肉は食べないの簡単な答え。
 で、このように日本は着々と変わっている。国民は見事に対応している。 (p.40-41)
 日下さんらしい反語的な皮肉も含んでいるのだろうけれど、このような実際の動きがあるのは、国民があらゆる意図を超えて賢明な証拠だろう。

 

 

【日本の完全勝利】
 その(日露戦争~第2次大戦)結果、白人支配の世界が終わって有色人種はそれぞれ自分の国が持てるようになった。
 こんな大変化はない。白人にとってもこんな大事件は他にない。まずは「人種不平等」の常識を捨てさせられ、さらに「植民地搾取」の利益を失った。
 日本が憎らしくて当然だが、それを口に出してはいえないほどの理想的な人種平等世界がいまは完成してしまった。
 日本では常識の人種平等が世界の常識になってしまったからで、これは日本の “完全勝利” である。
 日露戦争のとき軍事力で勝ち、その後精神でも勝って、世界を根本から変えたのである。
 しかし、日本人はそれをいわない。自存自衛のため当然のことをしただけと思っている。そもそも人種差別意識がないから、人種平等に貢献したという自覚がない。だから日露戦争の世界史的な意味が分からない。白人達の心の中の悔しさを想像する力もない。あってもそんな次元の低いことには深入りしない。(p.45-46)
 これと同様に、日本人が自覚してないのが、「自分で働く」「人に働かせる」という労働観の違いである。
   《参照》   『あと3年で、世界は江戸になる!』 日下公人 ビジネス社
            【自分で働く日本人、他人を働かせる中国人】

 

 

【協働力の可否】
 日本とイラクの関係について、日本の “協働力” の精神が問われている。
 日本は確かに「国内の相互協働力」では世界最高のものを完成したが、それをそのまま海外にも適用しようとするのは幼児的である。
 相手をスポイルする恐れがある。
 イラクの宗教家は、日本と交際するとその危険があると肌で感じて帰ったように思う。
 「日本人は親切すぎる。幼児的である。それが今後イラク人に伝染するのではないか。

 日本人はもっと崇高で偉大な精神を何か語らねばならない。
 それが、いま必要な「国際的協働」である。(p.56)
 遊牧を文化的基盤とする諸外国は、日本人が思っている以上に階級的であり、階級間の非協働性は当たり前であって、それが差別だという認識はない。家畜を見張るものと見張られるものという認識である。
    《参照》  『サハラの果てに』 小滝透 (時事通信社) 《後編》
               【定着社会の富と遊牧社会の富】

 

 

【日本語が国際語に】
 「日下さん22世紀をどう思いますか」
 とあるラジオ番組で聞かれたのでこう答えた。
 「22世紀には英語は滅びているでしょう。その代わりに広く使われるのは日本語です」 (p.66)
 英語が国際語ではなくなって日本語に代わるという予測は大分変わっているが、その根拠はある。私なりにではあるが、事態を直視した結果の予測だから、人々の反対が多いくらいでは変えられない。 ・・・(中略)・・・ 。
 スタジオを出たとき言語学の渡部昇一先生が、
 「中世ラテン語が一気に全ヨーロッパから消えたことがありますからね・・・」
 とフォローして下さった。(p.69)
 日下さんの日本語に関するこの予測は、以前にも書き出しているけれど、地球風水の法則である「ガイアの法則」に合致しているから必ずそうなるのである。
   《参照》   『ガイアの法則』 千賀一生 (徳間書店) 《前編》
             【経度0度と経度135度の文明的特徴】

 ところで、ラテン語が一気に消えた理由って何なのだろう。それも大本を辿れば「ガイアの法則」だろうか。

 

 

【触覚の重要性】
 仏教では認識の成立要件について六入(六根)というが、その順番は眼・耳・鼻・舌・身・意で、身は触覚、意は思考のことである。触覚が一番思考に接近している。
 ギリシャ語で「理解する」の語源は、「さわる」と同じだと何かの本で読んだことがある。ヘブライ語では「知る」をYada(ヤダー)という。その語源はYad(ヤード)、「手」である。
「耳で聞いたことは忘れる。目で見たことは覚える。本当に身につくのはさわったときだ」ともいうらしい。
 そういえば政治家はもっぱら握手してまわっているが、投票所へ行ってもらうためには、触覚が一番必要だといっている。つまり、触覚は意につながり、意は行動につながる。(p.81)
 近年世界中に広まっている電子機器は、目と耳を使うばかり。キーボードをいくら叩いても、触覚の微妙な繊細さなど関係ないのである。

 

 

【甲南カメラ研究所の経営例】
 「ローマの休日」という映画で、グレゴリー・ペッグ扮する新聞記者が、ライターと見せかけてオードリー・ヘップバーンを盗み撮りするのに使った超小型カメラ (p.114)
 は、甲南カメラ研究所がつくった日本製のカメラだった(!)そうです。
 へぇ~、ドイツ製じゃあなかったんだ~、意外。
 ところで、この会社、朝鮮特需が消えた頃、経営難になった。その時、どうしたかというと、
 「わが社は給料を30%あげることにする。これによって倒産は早くなる。一年後である。止めたい人はそれまでに次の仕事を捜せ。止めたくない人は死に物狂いでヒット商品をつくれ。もし新商品が成功すれば30%アップの給料は続ける・・・」 
 この対策が正解だったことはコーナン16という新商品の成功によって分かった。(p.115)
 経営難の見通し状態で、経理を公開して、リストラはせず、逆に給料を30%アップ。
 社員を信用していなかったら、こんなことはできない。
 資本主義から人本主義への飛躍が打開力だった。アメリカ仕込みのエコノミストには見えない日本の打開力である。(p.118)
 下記のリンクを経由すれば、日下さんの人本主義に関する記述に行ける。
    《参照》   『日本人が世界に誇れる33のこと』 ルース・ジャーマン・白石 (あさ出版) 《後編》
               【企業へのロイヤリティ(忠誠心)】

 

 

【公務員制度改革に関する一刀両断の名案】
 橋本内閣のとき首相特別補佐官として改革に獅子奮迅の働きをした水野清氏は一刀両断の名案として「公務員にスト権をあたえるのが根本的解決だ」と話される。
 まさに、いまの国家的行きづまりの根本をつく政策提言である。
 スト権をあたえると、人事院で適正な給与水準とやらを考える仕事がなくなる、不満な公務員はストをして国民の審判を仰げばいい。
 これまで良い仕事をしていたのなら国民は支持するが、無益な仕事をしていたなら国民生活に支障は出ないからかえってその官庁が廃止になる。(p.121-122)
   《参照》   『日本中枢の崩壊』 古賀茂明 (講談社) 《前編》
            【人事院という「おったまげた機関」】

 

 

【自然な成り行きとして】
 覇道のメガネでは王道の勝利は見えない。
 日本はこれから王道の実行国として国際社会の舞台に上がり、自然な成り行きとしてエンパイアになるのである。(p.173)
 公務員改革も日本語の国際語化も、現在のままの世界が続いているだけなら、そうそう実現することには思えない。何かしら地球規模のドラマチックな出来事が起こったら、意外に速やかにことは進むことだろう。


 

<了>