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 この本の著者である日下公人さんや、その他、渡部昇一さん、竹村健一さん、長谷川慶太郎さん、堺谷太一さんなどの著作を読んでいるビジネスマンは非常に多いと思います。


【昭和一桁世代の英知】
 その理由は、著者がいずれも昭和1桁(1930前後)生まれであるがゆえに、知性・感性ともに最も鋭敏な青年期に戦争を体験し、さらに、戦後間もない頃の日本経済発展期に海外へ出て、その体験を通して、日本のことを内外から見て聞いて考え続けてくださっている貴重な方々であるからだと思います。
 戦争体験のない私達は、いやおうなく平和ボケ日本人です。世界が日本と違っていることを薄々感じてはいても、その違いを明確に認識するためには意識的に学ばなければなりません。海外旅行を幾たび経験しても、「綺麗」、「楽しい」 、「美味しい」、だけで終わっている観光旅行であるならば、いかんともしがたいものがあります。
 この書籍は、平和ボケ日本人に、日本と外国、内外の考え方の違いを明確に教えてくれます。タイトルの 『闘え、日本人』 はややインパクトの強い表現ですが、要は内外の違いを理解して、外交的に逞しい考え方を日本のみなさんは学んでください、ということなのです。


【まずは、戦争に関するする認識の違いから】
 「戦争は外交の一手段である」 とする定義は、「クラウゼビッツの戦争論」 の定義です。「戦争はあってはならないもの」 と考えて思考停止している普通の日本人をビビらせるに十分な発想の違いを感じることでしょう。
 ごく単純に平和を愛好する日本人であった私も、大学生の頃、渡部昇一先生の 『ドイツ参謀本部』 (中公新書) をはじめて読んだ時、戦争に対する外国の認識の違いに、たいそうショックを受けたものでした。


【災いが大きくなるのは 「理想論」 と 「戦争論」 のどちらか?】
 「クラウゼビッツの戦争論」 の定義は、西欧諸国間で繰り返し行われてきた戦争による災いを軽減するために、合理的に考え出された定義なのです。「馬鹿ナッ」 て思うかもしれませんが、それが事実です。
 知性万能主義、つまり人間が頭の中で考え出した「宗教」や「理想」や「正義」に基づいて政治が行われると、その先に止め処もない流血が発生してしまう、と言うのが歴史上の結果的事実でした。人間が考え出した「宗教」や「理想」や「正義」を貫徹させようとすると、なぜか平和ではなく大虐殺へと至ってしまうのです。
 ヨーロッパ中世の宗教戦争や、人間の平等を「理想」として掲げた共産主義者たちが招いた戦争や大虐殺の事実を知らない人々が今時いるなら、ただただ絶句するのみです。日本人だって、お国のために「正義」を掲げて戦った戦争で、あまりにも悲惨な結果を招いてきたのです。
 「クラウゼビッツの戦争論」 の定義は、そんな最悪の結果を抑止するために、現実的かつ合理的に考えた上で、できた定義なのです。世界の中に日本一国しかないのなら、言霊の国・日本、平和の国・日本で満足していても良いのでしょうが、世界の中の一国にしかすぎない日本なのですから、この定義をスタート地点として、世界を考え行動しなければなりません。


【ブートゥールの人口圧・戦争惹起説】
 85頁以下に、フランス人社会学者・ブートゥールの説が紹介されています。
 「15歳から25歳までの若者の人口比率が15%を超えると、その国は戦争を始め、10%を切ると戦争は終わる」 という説です。この説は確かに当て嵌まっているそうです。但し、例外が2つありました。戦後の日本と韓国だそうです。例外となった理由は、いずれも高度経済成長が若者の人口を吸収したからだそうです。
 中国は、かつて20年間ほど、一人っ子政策を行っていましたが、実際は都市部のみでしか機能していなかったそうです。共産主義国家の公式発表をそのまま鵜呑みできるわけがありません。全体的には膨張傾向です。そして、現在の中国は、経済発展を続けているとはいっても、富の格差は当初から甚だしく、日本や韓国の経済発展段階をそのまま当てはめることはできません。しかも資本主義的な経済政策を一部取り入れているとはいえ、政治形態は人類史上最悪の覇権共産主義なのです。
 現在の日本は、極端な少子化傾向にありますから戦争どころではないのです。なのに、ヤクザ親分国家・中国とヤクザ子分国家・韓国は、日本の靖国参拝に関して軍国主義化だのなんだのと非難したがります。中国・韓国の政治家には、小指の先っぽ程の知性すらありません。あるのは邪悪な魂に基づく、お下品な戦略のみです。


【平和は客観的に考えねばならない】
 日本人は莫大な経済援助・技術援助をしているのに、日本大使館に石を投げつける中国人を 「大嫌い!」 と感情的に考えていても仕方がないのです。日本の技術協力なくして北京オリンピックなどできはしないのに、それでも日本を悪しざまに非難する、どうしようもないヤクザ国家には、冷静かつ客観的な外交力で臨まねばなりません。
 中国国内が抱える本質的な不安定要因が、中国共産党をして、国民の目先を外に向けさせるために「反日」に向かわせているのです。 しかし、ついに中国国内の格差問題を発端に中国人の不満が爆発し、そのブレーキが効かなくなった時は、日本の平和を損なう可能性がある、ということです。
 あまりにも馬鹿馬鹿しい状況ですが、そんな中国を支えることが出来るのは、皮肉なことに日本だけなのです。日本が既に持っている、高度な技術力、強い経済力、深い教養、深遠な文化力に、『闘え、日本人』 に示されている逞しい外交力を加えて、未熟な国家、中国・韓国・北朝鮮のブレーキ失効に備える必要があるのです。
 

<了>