イメージ 1

 タイガーバームの胡財閥に嫁いだ日本人女性である著者。香港とシンガポールの華人社会に長年住んでいた経験から、日本に対する厳しい意見と憂国の意見を書いてくれている。


【ウォール街を牛耳る人々】
 アジアにおいて金融に強いのは中国人、特に上海人です。私の印象では、ウォール街を牛耳っているのは、意外に思われるかもしれませんが、ユダヤ人ではなく上海人です。 (p.20)
 実生活の中で、華人社会の人脈の凄さを知っているから、この様な印象を持っているのだろう。
 中国諺辞典というのをパラパラと見たことがあるけれど、その中の8割近くがお金に関する諺だったので、呆れるというか憮然としたことがある。日本なら1割以下ではないだろうか。
 しかし、それも異民族の侵入や天災にみまわれ続けてきた華人にとって、必然的な結果なのであろう。最終的に頼りになるのは直截に「お金」だけなのである。「お金」に関する華人の才能は既に民族のDNAである。労働に価値をおいてお金に淡白な日本人は、世界の中ではかなり異質な人種であることは知っておいたほうがいい。

 

 

【品格のない優越感】
 日本人は、東南アジア諸国に対してとても複雑なメンタリティーを持っているようです。一方で戦争で迷惑をかけたという贖罪意識があるかと思うと、もう一方では、東南アジア諸国に対して非常に品格のない優越感を持っているように見受けられます。 (p.43)
 私も海外の空港で、品格のない優越感を醸し出している日本人を見ることがある。現地の空港職員が軽蔑気味な視線を送っていることにすら気付けていないから如何ともしがたい。同じ人物が、成田空港では決してそのような優越感を示す様な態度はとらないのであるから国の内と外で露骨な二重人格なのである。品格ある人々ならば、何時何処にあろうとも優越感とは係わりのない世界を生きているものであるが・・・。
 私の主人も、「イギリス人は悪賢かったが、礼儀正しく威厳があった」と言っていました。それに対して日本人は、暑いとなれば裸で現地の人の前で命令をする。これでは尊敬されません。 (p.45)
 東南アジアの人々は、植民地であった時代に、西欧の凛とした貴族精神の一端を垣間見ていることを日本人は認識していない。独立に寄与したか否かという国家単位の視点より、一般民衆にとっては自分の目で見た印象の方が遥かに大きい。

 

 

【ママ・リー】
 私に大きな影響を与えた人がいます。その人はリー・クアンユー・シンガポール上級相(前首相)のお母さんです。国民みなに「ママ・リー」と慕われた人で、・・(中略)・・。私にとって彼女は母以上の存在であり、また師でもありました。 (p.192)

 彼女が世の普通の母親と違うのは、功なり名をとげたら、貧しい人々の弁護をしてやるように、と息子たちに教えたことです。この母親の教訓、叱咤激励は見事に花を咲かせ、今日の人民行動党の精神の土台となり、シンガポール建国の礎となり、・・・ (p.193)

 彼女には、いつかきっと見返してやろうなどという妙な闘争心はなく、ましてや劣等感などみじんもありませんでした。クリスチャン・ディオールの靴よりも6ドルのスリッパのほうが楽と、ローカル製のスリッパでスタコラ歩き、洋服といえば・・・・ (p.195)
 この本の中で、最も印象的だったのは、このママ・リーに関するくだりだった。日本の教育が崩壊してきた理由の一つに、こういった気高き精神を持つ母親の生き方が全く伝えられてこなかったことがあるのではないだろうか。
 日本の雑誌社が著者に取材すると、必ず宝石や衣装の事を質問するのだという。語り継ぐべき精神性より、物やお金に興味を示すだけの状態に堕している現在の日本である。

 

 

【著者が語る中国人】
 日本も、自分がフェアだから向こうもフェアだろうとは、間違っても思わないでいただきたいのです。今の中国人は孔子様の子孫ではないのです。 (p.51-52)

 中国の現在、中国人の考え方、その底力をよく認識していただきたいのです。中国が日本や欧米との貿易をのどから手が出るほど望んでいるなどとは夢にも考えないでください。中国人と日本人は同じ黄色人種ではありますが、まったく似たところのない異質な民族なのです。 (p.125-126)
 

【日本の若い人たちへのメッセージ】
 米、中の間に挟まれ今までに経験しなかった状況を迎えようとしております。日本の将来は若い貴兄たちの手の中にあります。日本が存続できるか否かは貴兄たちの毎日の心がけ次第です。
 ご自分の国が、衰亡・消滅するかもしれない曲がり角がすぐ目の前に来ていることに、貴兄たちは気付いておられるでしょうか。「これぞ自分の国」だと信じられる国を失ってしまったら、どんなに惨めな思いをしなければならないか、考えておられますか。 (p.233)
 世界のパワー・エリートは、米・中・欧の三極で世界を支配する予定でことを進めている。著者は、中国・華人社会の中に身を置いているが故に、そのことの一部を肌で感じ、祖国・日本の人々に伝えるべく、日本に滞在してこういった発言をしてくれているのだろう。
 米・中に挟撃されて追込まれるであろうが、日本は最終段階でこそ真価を発揮するだろう。そうして、日本人は、偉大なる使命を果たさなければならない。
 
<了>