懸賞金、家族聴取で自首促す 香港警察 亡命民主派は屈せず | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

懸賞金、家族聴取で自首促す 香港警察
亡命民主派、あぶり出し屈せず
支援者逮捕でさらに摘発鮮明


香港当局は海外に逃れた亡命民主活動家8人の摘発、あぶり出しに各1800万円の懸賞金をかけ、海外の反対勢力を威嚇しながら自首に追い込む反体制派根絶を目指している。「外国勢力と共謀している」とする香港国家安全維持法(国安法)違反で指名手配する当局に対して亡命民主派は「共謀」の根拠を明示しないのは法概念の乱用だと屈せず、米英豪各国は反中勢力の萎縮を狙う中国の強硬策を厳しく非難している。

 

中国式脅迫に欧米豪非難
域外の反中勢力萎縮狙う強硬策

 

▲香港当局が指名手配した郭栄鏗氏、許智峯氏、羅冠聡氏、任建峰氏、袁弓夷氏、劉祖廸氏、郭鳳儀氏、蒙兆達氏。懸賞金は各100万香港ドル(約1800万円)がかけられている

 

▲香港警察の国際指名手配の記者会見


香港当局が指名手配したのは、元香港立法会議員の郭栄鏗氏、許智峯氏、羅冠聡氏のほか、任建峰氏、袁弓夷氏、劉祖廸氏、郭鳳儀氏、蒙兆達氏の民主活動家8人。英国、米国、オーストラリアに亡命している。
 

8人には、外国で中国や香港政府を批判して制裁を呼びかけたとして国安法の「国家分裂」や「外国勢力との結託」の嫌疑がかけられている。香港警察は7月3日、逮捕につながる情報提供者に容疑者1人当たり最大100万香港ドル(約1800万円)を出すと発表。国安法を香港、中国本土以外にも「域外適用」し、海外での活動も犯罪行為と判断して懸賞金付きの国際指名手配となった。

 

▲香港当局が指名手配した郭栄鏗氏、許智峯氏、羅冠聡氏、任建峰氏、袁弓夷氏、劉祖廸氏、郭鳳儀氏、蒙兆達氏。懸賞金は各100万香港ドル(約1800万円)がかけられている

 


 

翌7月4日には香港トップの李家超行政長官が記者会見で指名手配した8人を「地の果てまで逃亡しても必ず逮捕する」と宣言。「逃亡人生に終止符を打つ方法は自首以外にない」「親族や知人、友人でも懸賞金は受け取れる」と糸目をつけず、情報提供を求める姿勢だ。

 

羅冠聡(ネイザン・ロー)氏
 

8人のうち、当局が最も摘発に力を入れているのが英国亡命中の活動家、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏。
 

7月5、6日には羅氏を資金面で支援した容疑で民主派団体「香港衆志(デモシスト)」の元主席だった林朗彦氏ら団体関係者5人を相次ぎ逮捕。香港在住の両親や兄も警察に呼び出されて聴取を受け、間接的にじわじわと本人に出頭、自首を迫り、「域外適用」で海外の批判勢力を威嚇している。

 

▲2018年ごろの羅冠聡氏(右)と母親


▲2018年ごろの羅冠聡氏(右)と母親、猫たち

 

香港衆志(デモシスト)は雨傘運動に参加した羅氏や黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏、周庭(アグネス・チョウ)氏ら著名活動家が2016年に創設。2019年の民主化デモなどで脚光を浴びたが、黄氏や周氏は逮捕され、20年の国安法施行で解散に追い込まれた。羅氏は2016年に香港衆志の初代主席として立法会選挙で最年少当選。就任宣誓無効と判断され、17年に議員剥奪。国安法施行前に英国入りして亡命し、英国議会や欧州議会に訪問して香港の人権状況を発表したことで「外国勢力と結託した」と見なされている側面もある。

 

▲訪米時、ポンペオ米国務長官と会談した羅冠聡氏(左)
 

羅氏はSNSで「自首、出頭などまったく考えていない。反体制派の声を抑圧し、このままでは香港市民の本当の声を上げられない」と反論した上で「私が外国勢力と結託し、外国から資金援助してもらっているとすれば明確な証拠を出すべきであり、明示できないようなら国家安全の概念を乱用している悪法」と指摘している。
 

中国の恫喝、威圧は英国にも忍び寄る。
 

英中部マンチェスターの在英中国総領事館で昨年10月16日、香港の民主化を求める抗議運動の参加者1人が敷地内に引きずり込まれ、暴行を受けた事件が発生。BBCによると、男性が総領事館の前で民主化を訴える活動に参加していたところ、総領事館から出てきた集団に敷地内に引きずり込まれた。警察官が敷地に入って男性を外に引き戻した。

 

▲香港の地上波テレビ局では、毎月1回は香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)の学習番組の放送が義務化される
 

イギリスのクレバリー英外相は「国内外の個人を脅迫し、黙らせようとする中国のどんな試みも容認しない」と強く非難。米国務省は国安法の「域外適用」について「人権と基本的自由を脅かす危険な先例」と非難した上で懸賞金の撤回を要求し、アルバニージー豪首相も「強く反対する。豪州と中国はこの問題では異なるアプローチを取る」と国境を越えた弾圧に反対している。
 

国安法施行から6月末で3年がたち、同法違反容疑の逮捕者はすでに260人。中国返還26周年を過ぎ、当局は香港や中国域外の反中勢力の徹底した監視、恫喝、威嚇に主軸を移している。

 

▲香港では海外への移民がかなり関心を高めている
 

英国やカナダ、オーストラリアは国安法施行への対抗措置として、香港からの移民の受け入れを開始。英政府によると、特別ビザの発給が始まった21年からの2年間で、香港から14万4500人以上が移住した。
 

8人が亡命する英米豪各国だけでなく、日本、台湾、カナダなど各地に在留しており、国安法の「域外適応」への恐怖心が海外で反中批判する動きをどれくらい抑圧、萎縮させられるか、洞察・分析し、次の厳しい一手を練り上げようとしている段階だ。

 

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