議員立候補を「選別」、窮地の民主派 香港 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

議員立候補を「選別」、窮地の民主派 香港
中国的「愛国」で制限 全人代決定
次期選挙で民主派排除も


 香港の民主化運動が最大の危機に直面している。中国の習近平指導部の方針を受け、立法会(議会70議席)から民主派4議員が資格剥奪され、別の15人も抗議のために辞表を提出。来年9月の立法会選挙では「愛国」の有無を条件に立候補の段階から排除される可能性が濃厚となり、民主派は立候補資格が最大の難関となっている。(香港・深川耕治)

 

国安法で中国の香港統治着々
国際世論頼みは限界、袋小路に

 

▲左から香港立法会議員の資格を剥奪された郭栄鏗氏、梁継昌氏、郭家麒氏、楊岳橋氏


中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は11月11日、香港の立法会議員の資格を剝奪(はくだつ)する権限を香港政府に与える決定を下した。一国二制度下で保障される高度な自治は立法、司法、行政が牽制し合って権力濫用を防ぎ、香港市民の権利と自由を守るはずの三権分立を行使することで実現するはずだが、これが完全に失われ、行政は立法、司法まで干渉する異形の一国一制度に移行したことを意味する。

 


これを受け、香港政府は即日、「香港に対する中国の主権行使を拒否する」行為を行ったなどの理由で民主派議員4人の資格を取り消すと宣告した。立法会議員は今後、資格要件として中国に忠誠を尽くす愛国愛党の資質があるかどうか、党派の対中姿勢が問われるようになり、香港の一国二制度や民主主義がさらに骨抜きになる危機に直面している。


「暗黒の一日だったが2期8年、すべての香港人と自由、民主主義、公正のために闘い続けた。立法会はすでに公平な議会ではなくなったが、今後も有権者のために決して諦めてはならない」。
 

▲香港立法会議員の資格を剥奪された郭家麒氏(中央)

 

11月11日、香港政府から議員資格を剥奪された4人のうちの一人、郭家麒氏(医師、公民党)はこう話すが、民主派を取り巻く政治活動環境は急激に悪化している。


同剥奪を受け、民主派の立法会議員15人が11月12日、一斉に辞職届を提出した。全人代常務委員会の決定で「愛国的でない」と判断された議員の資格を剝奪できる仕組みが生まれたことに抗議するためだ。「民意で選ばれた議員の進退が行政長官の判断のみで決定できるようになった。総辞職で抗議声明を内外に伝えたい」(民主党の胡志偉主席)というが、国際世論頼みでは限界があり、選挙戦略が見えず、民主派支持の市民の意見も賛否両論だ。

 

▲民主派の立法会議員4人が資格剥奪されたことに抗議するため辞職を表明した民主派の香港立法会議員15人


辞職には事務手続きなどがあるため全員の辞職が確定するのは12月になる見込みだが、定数70の立法会は親中派41、民主派寄りの中道勢力2、欠員27となり、ほぼ親中派一色となり、親中派の意のまま、完全に掌握した形となった。


これまでも親中派は過半数を握っていたが、民主派が全議員の3分の1(24議席)以上の場合、法案の拒否権を得られるため、これを死守してきた。さらに議事妨害によって市民に不人気の政策を進めにくかったが、まったく通じなくなり、今後は香港政府の打ち出す政策、法案を単に追認するだけの傀儡(かいらい)立法府に成り下がるとの見方もある。

 


民主派最大政党である民主党の林卓廷立法会議員(辞職申請中)は「全人代の要求する『愛国』とは中国共産党一党独裁を標榜信奉せよと強制することであり、同意できない。われわれは天安門事件の再評価を求める香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)を支持する愛国であっても一党独裁支持では断じてない」と中国政府の愛国概念を批判。


民主派の梁家傑公民党主席も「一国二制度が存在するなら自由と人権を保障するために三権分立による公権力の制限が許容されるはずだが中国共産党は一方的に排除し、一国一制度にしてしまっている」と一国二制度の形骸化、機能不全を指弾する。


香港では6月末に施行した香港国家安全維持法と新型コロナウイルスの感染拡大防止を名目にした集会規制が続き、街頭でのデモは警察の厳しい監視下、事実上、難しい。

 

▲香港マカオ事務弁公室の張暁明副主任

 

11月17日、中国政府の出先機関である香港マカオ事務弁公室の張暁明副主任は香港基本法発布30周年のフォーラムで「全人代の決定は愛国愛港(香港を愛する)者が香港を治めるのであって反中国で香港を乱す人物は出ていけという一国二制度の政治規範であり、既定の法律規範だ」と説明。林鄭月娥行政長官も「鄧小平氏は1984年、港人治港(香港人が香港を治める)は愛国者が主体となって香港を治めることであり、自民族を尊重し、香港の繁栄と発展を損なわないことだと語っている」と愛国を強調した。

 

▲香港基本法制定30年の法律フォーラムで記念講演する林鄭月娥行政長官


全人代の決定は、今後、選挙の立候補者の資格基準に適用される。政府に批判的な言動を行ったり、外国に制裁を働きかければ「非愛国的」とみなされ、立候補資格が取り消される可能性がある。香港の選挙管理委員会はこれまでも香港独立を主張する急進民主派の立候補を排除してきたが、穏健民主派も「選別」されない可能性があり、戦々恐々としている。

 

大手学習塾、コロナ経営難で閉鎖破綻か 中国

 

中国軍機の台湾侵入飛行顕著 米台結束、中国の「武嚇」増幅

 

香港「二次返還」論が浮上 深圳経済特区40年

 

親中派与党、選挙延期で惨敗回避も 香港立法会選

 

反中デモ、民主派活動封じ込め 香港国家安全法

 

民主派躍進でも不安、移民増も 香港 国家安全法、民意は反対過半数

 

「中国の監督権」強化じわり デモ再燃封じの香港

無症状感染者に「抜け穴」 中国武漢 封鎖解除で恐々

朝令暮改の地方政府、混乱と焦燥なお 中国の武漢肺炎

初動不備、SARS教訓生かせず 中国・武漢肺炎

香港民主派、共闘へ堅い結束醸成 台湾選挙

香港問題が与党に追い風 台湾総統選 立法委員選は激戦

 

硬軟両様、台湾取り込み加速 中国 韓国瑜氏、総統選出馬か

 

LGBT票取り込みに躍起 台湾与党 住民投票でNO、なお新法

 

混迷する次期総統候補選び 台湾総統選2020

「韓国瑜現象」で国民党急追 高雄市奪還も 台湾統一地方選   

喜楽島連盟「独立」の是非どう交わす 台湾・蔡英文政権  

 

民主派が8割超の圧勝 香港区議会選 民意でも中国動じず

 

民主派、初の過半数獲得へ 香港区議会選

 

区議会選延期への方策か 香港 抗議の取り締まり強化

 

民意問う区議選へデモ休戦なるか 香港 過激化抑止できぬなら延期も

 

香港は持久戦、収束見えず景気低迷 区議会選で民意鮮明

 

建国70周年前に決着どこまで 香港デモ

 

白色テロ憎悪の連鎖、親中派も増幅 香港 民主派デモ隊に暴行

 

「熱血公民」の鄭松泰香港立法会議員に聞く

 

「香港の良心」陳方安生氏に聞く 指導力改め、真の一国二制度堅持を

大学生が見る暗い近未来 連載・香港憤激【下】

資金洗浄の逃避できず 逃亡犯条例案 連載・香港憤激 【中】

自由死守に立ち上がる若者 連載・香港憤激 【上】

過激化した立法会占拠に賛否 激憤する香港の若者たち

香港立法会をデモ隊が一時占拠 催涙スプレー使う警察

観衆なき異例の国旗掲揚式 香港返還22周年

厳戒体制がピークの香港 中国返還22周年
逃亡犯条例案、完全撤回どこまで 香港

民主派が惨敗 議員立法の否決権失う 香港補選
独立派の立候補排除 香港立法会 補選で民主派、代理立て苦慮  

香港カトリック教区の陳日君枢機卿に聞く 

香港カトリック教区名誉司教の陳日君枢機卿 【中華の「顔」】

香港立法会、補選スタート 剥奪議員の雪辱、選管の判断次第
同性婚容認の司法判断に反発 台湾
政治弾圧に反対デモ 「雨傘運動」の主導者ら2000人 香港

中国国歌へ止まぬブーイング 香港 中港矛盾で世論二分も
経済協力28兆円、米中首脳が北朝鮮問題で協調演出  

京劇観覧中にウトウト 中国夢にうなされるトランプ米大統領

習氏一強、見えぬ後継で基盤着々 中国指導部

頼行政院長の実務能力次第 台湾の蔡政権浮揚

革命英雄礼賛で愛国鼓舞 中国教科書
ポスト「一国二制度」問う動き 香港
返還50年後の色は赤と黒 香港青少年座談会

空母「遼寧」、時間差で香港へ 連載 「一国二制度」の前途(下)

民主化進まず格差拡大、独立論の背景に 連載「一国二制度」の前途(中)

中国から移民増、狭さに悲鳴 香港・中国返還20年(上)

民主化デモは大幅減少 香港返還20周年

習近平国家主席の香港での一挙手一投足 香港返還20周年  

香港自決派、台湾与党と連携強化へ 香港返還20周年で危機感

陣痛期の1年、大なた振るえず 台湾・蔡英文政権   
急成長する新型レンタサイクル業界 中国 ofo、摩拝単車に他社急追

台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず

親中派の林鄭月娥氏が当選 香港行政長官選

中国「本命」の林鄭氏優位に 香港行政長官選

旺角暴動の3被告、有罪に 香港区域法院(地裁)

林鄭月娥氏の優位変わらず 支持率は低迷 香港行政長官選挙

中国返還20周年で汚職「赤信号」 前行政長官に禁固1年8月 香港

香港在住の中国富豪、本土連行か 中国警察  

有力候補一本化できず激戦に 香港行政長官選

台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず   

親中派の林鄭月娥氏が当選 香港行政長官選   

中国「本命」の林鄭氏優位に 香港行政長官選

旺角暴動の3被告、有罪に 香港区域法院(地裁)
林鄭月娥氏の優位変わらず 支持率は低迷 香港行政長官選挙

中国返還20周年で汚職「赤信号」 前行政長官に禁固1年8月 香港

香港在住の中国富豪、本土連行か 中国警察  

有力候補一本化できず激戦に 香港行政長官選挙


【香港立法会選挙2016 連載インタビュー 香港「自治」の行方 第1回~第10回】

 

劉慧卿民主党主席(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第1回
大気汚染改善を自賛する陳吉寧中国環境保護相 【中華の「顔」】

劉慧卿民主党主席(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第2回
秋北全国人民大会代表(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第3回

呉秋北全国人民大会代表(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第4回  

新党「香港衆志」の羅冠聡党主席 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第5回
親中派団体「愛港之声」代表の高達斌氏 香港「自治」の行方 連載第6回
梁家傑公民党名誉主席(上) 香港「自治」の行方 連載第7回

梁家傑公民党名誉主席(下) 香港「自治」の行方 連載第8回

香港誌「前哨」の劉達文編集長(上) 香港「自治」の行方 連載第9回   

香港誌「前哨」の劉達文編集長(下) 香港「自治」の行方 連載第10回