民意問う区議選へデモ休戦なるか 香港 過激化抑止できぬなら延期も | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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民意問う区議選へデモ休戦なるか 香港
米の香港新法が追い風
過激化抑止できぬなら延期も


反政府デモが4ヶ月以上続く香港では10月5日の覆面禁止法施行以降もデモが相次ぎ、警察とデモ隊の衝突が各地で頻発、さらに先鋭化している。駅の破壊・放火や中国系の商店、銀行ATMなどの破壊で香港経済は疲弊し、治安の不安感は観光業を直撃。民意を問う11月24日の区議会(地方議会=462、任期4年)選挙、香港政局の大きなヤマ場となる来秋の立法会(議会=70、任期4年)選に向け、選挙での勝利優先の穏健民主派、徹底抗戦の勇武派、防戦から攻めに転じたい親中派の持久戦は予断を許さない。(香港・深川耕治)

 

選挙優先の穏健派 徹底抗戦の勇武派

 

▲10月16日、立法会が再開され、林鄭長官の施政方針演説は途中で中止に。民主派議員らから「早く辞任しろ」と怒号が飛んだ


逃亡犯条例改正案をめぐる抗議デモで香港政府は条例案を撤回したが、警察との衝突は激しさを増し、6月以降の拘束者は2300人を超えた。


10月4日、香港政府は立法会(議会)の承認なしに事実上の非常事態法である緊急状況規則条例(緊急法)を中国返還後に初めて発動し、デモ時に覆面で活動することを禁じる覆面禁止法が施行された。香港トップの林鄭月娥月が行政長官が北京での国慶節(中国建国記念日)70周年の祝賀行事から戻った直後の発動で、中国政府の意向は明らか。

 

▲香港新界地区沙田の新港城で数百人規模の香港独立派が香港臨時政府宣言を宣布


デモ参加者の顔をさらして沈静化を狙う思惑だがデモの自由すら脅かす「一国二制度」の機能不全を国際的にも露見した形であり、覆面を禁止してもデモが収まらず、覆面禁止の逮捕者が続出している。10月4日、香港独立派は新界地区沙田で香港臨時政府宣言を発表。宣言内容は米国独立宣言の内容に似ており、香港市民が直接選挙で総統を選ぶ香港民憲草案を憲法草案として宣布した。中国政府が強圧的なスタンスを取るほど、逆効果だ。

 

▲香港の緊急法で突然施行された覆面禁止法に反対する香港市民たち

 

10月16日、立法会が再開され、林鄭長官の施政方針演説、逃亡犯条例改正案を正式に撤回する手続きを行おうとして議会は紛糾。民主派議員らの怒号を浴びながら、内外の非難解消に腐心する。しかし、覆面禁止法の香港市民の反発や国際的な悪評は拭い去れない。


香港紙「明報」の最新世論調査(15歳以上の香港市民751人)によると覆面禁止法について71.4%が反対、19.3%が支持。緊急法を使って新条例を施行することについても「政府は施行すべきでない」が76.6%、「施行してもかまわない」が17.7%で政府の緊急施行への反発は7割を超えている。

 

▲香港の旧香港立法会前で米国の香港人権・民主主義法案の可決を求める香港市民たち


米下院は10月15日、香港に高度の自治を認めた「一国二制度」が遵守されているか、毎年検証することを義務付ける香港人権・民主主義法案を可決した。ペロシ下院議長は「中国政府は香港の一国二制度の約束を守っていない。4か月間、香港の若者たちは、自由、民主主義、正義を失うことはできないというメッセージを世界に発信してきた」と述べ、デモ派を支持。


米上院でも可決する見通しでトランプ米大統領が米中貿易摩擦の中で認めれば、香港問題を交渉カードとして揺さ振り、香港民主派への大きな後押しとなる。米国では1992年に「香港政策法」が制定され、香港が中国本土とは違う関税地域と認定し、優遇措置を与え続けて来た。米政府が同法案施行によって一国二制度が機能していないと判断すれば、香港は中国本土と同じ扱いとなり、物流で栄えてきた香港は大打撃を受ける。

▲香港の中環(セントラル)で米国の香港人権・民主主義法案の可決を求める香港市民たち


今後、香港の政局で大きなヤマ場となるのは民意を問うことができる11月24日投開票の区議会選と来秋の立法会選だ。


地方議会にあたる区議会(18区議会、452議席)、立法会(議会、70議席)は親中派が多数派を牛耳っている。ただ、区議会は行政長官選や立法会(議会)選のように親中派有利の仕組みではないので、民意が反映されやすい。

 

▲香港区議会選挙は11月24日投開票。選挙管理委員会は日程通りを望むが……


有権者登録者数は約35万人で1997年の中国返還以来、最多。区議選出馬をめざす若者の動きが活発化し、14年の「雨傘運動」の学生リーダーだった黄之鋒・香港衆志(デモシスト)秘書長も立候補を届け出た。選管当局が候補者の政治審査し、認めないケースもあるため、立候補できない可能性もある。公認されない場合、デモ激化は避けられない。


返還後、民主派が優勢になったのは2004年、新型肺炎(SARS)に見舞われ、国家公安条例案の是非をめぐる時期。今回は、それを上回る勢いが民主派にあり、民主派が圧勝するとの見通しが高まっている。


穏健民主派は区議会選で民主派が圧勝し、来秋の立法会選で民主派の議席数の大幅増を図り、完全普通選挙の実現を達成するのが悲願。そのためには、区議選の期間、デモの一時休戦で着実な選挙実施を望んでいるが、勇武派と言われる急進過激派は駅や中国資本の商業施設、銀行ATMを次々と破壊、放火するなどゲリラ戦を展開し続ければ、香港政府は過激派の選挙妨害を大義名分に選挙延期や中止を判断し、親中派のダメージをできるだけ少なくする可能性がある。親中派は時間をかけてデモ逮捕者の裁判処理や緊急法での規制強化で動きを封じ、反転攻勢に出る機会を狙っている。

 

 

 

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