民主化進まず格差拡大、独立論の背景に 連載「一国二制度」の前途(中) | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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民主化進まず、中央政府頼み 「一国二制度」の前途(中)
普通選挙実現も遠のく
格差拡大、独立論の背景に


「この20年で香港経済はある程度成功したかもしれないが、政治は大失敗だった」。 民主派の重鎮で06年、香港行政長官選挙に立候補したことのある公民党名誉主席だった梁家傑氏は中央政府の裏切りで普通選挙の実現や政治改革が遅々として進まなかった実情を回顧する。


香港の民主化は1980年代、中英協議でも争点となり、段階的な民主化を求める英国の要求を受け入れ、中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)は90年に採択した香港基本法(ミニ憲法)で、香港政府トップである行政長官を当初は業界団体の代表らによる間接選挙で選び、「最終目標は普通選挙(直接選挙)での選出」と明記した。

しかし、弁護士の梁氏は「当時の中国側の実務を掌握していた魯平氏(中国国務院香港マカオ弁公室主任=当時)が“香港抜き”で中国の都合の良いように決め、結局は裏切った」と断じる。


07年には胡錦涛政権下で全人代が17年の長官選から普通選挙の導入を容認すると決定しながら12年発足の習近平指導部は民主派に厳しい姿勢に転じ、14年には中国政府が一国二制度の白書で「中央政府は香港への全面的な管轄権がある」と植民地を掌握する宗主国のような宣言を行った。同年8月末には中国の意向に沿わない候補を事実上、出馬不可能にする仕組みの導入を発表し、香港を二分する政治闘争となっていく。


中央政府の動きに猛反発し、14年9月末から始まった「雨傘運動」では79日間にわたって学生らが「真の普通選挙」を要求し、幹線道路を占拠。「香港の自治は狭まるばかり。もはや『一国一・五制度』に成り下がった」。若者らで結党した新政党「香港衆志」(デモシスト)の黄之鋒氏は同党所属の羅冠聡立法会議員と共に2021年までを目途に「香港人の未来は香港人で決める」住民投票の実施を訴えている。


立候補制限の即時撤回を求める民主派の要求に対し、習指導部も香港政府も妥協を拒否した。交通が麻痺する生活不便の不満が一般市民にいらだちを募らせ、学生らは袋小路に追い詰めらた。香港警察はバリケードの解除を進め、雨傘運動は79日間で終結。翌15年6月の立法会(議会=70議席)では三分の一以上の議席数を持つ民主派議員が中国主導の選挙制度改革法案を否決。双方の面目で普通選挙実現はさらに遠のいた。


雨傘運動の挫折後、香港こそが「本土(中国語で故郷の意味)」と主張する中国からの独立志向を強める「本土派」が急速に台頭。16年9月の立法会選挙では本土派は青年新政(2議席)、香港衆志(1議席)など6議席を獲得して議会第三勢力となった。


これに対し、基本法の解釈権を掌握している全人代常務委員会は同年11月、青年新政の本土派議員2人に対し「就任宣誓は無効。議員資格が即失効する」との解釈を決定。補欠選出馬も検討しているが資金難が重くのしかかる。


他の本土派議員らも議員資格を争う訴訟が続いている。「一国二制度は失敗だ。貧富の差は拡大し続け、香港住民は自らの政府代表を選ぶ権利すら享受できていない」と最多得票で初当選した本土派の朱凱迪立法会議員は台湾独立派とも連携しながら政治改革を訴える。


朱議員の選挙区は中国と陸続きの境界エリアに近い新界地区。郊外には本土向けマンションが急増し、香港の学校に通う子どものためにマンションを購入する中国人富裕層が多い。「一部の産業以外は過去20年で収入はほとんど変わらない。格差拡大で不満と嘆きの声が上がっている」と言う。進学先や就職先も中国富裕層に奪われつつある中国マネーの猛威は過激な香港独立論が台頭する背景にもなっている。(香港・深川耕治、写真も)



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【香港立法会選挙2016 連載インタビュー 香港「自治」の行方 第1回~第10回】

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蔡英文時代の台湾 本土派路線のビジョンと課題 連載4(最終回)  

 

 

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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

 

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

 

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。

 

中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。


台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず  

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(1)

反対派の宗教団体の結束どこまで

 

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香港民主化デモ、スタッフの9割が同性愛者

 

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警戒する中国当局、家庭崩壊は党の崩壊に直結

 

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香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(上)

婚姻の4条件崩す恐れ

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(5)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)

乗っ取られた香港の民主化運動

 

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説得力欠く同性愛の遺伝要因説

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(7)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)

「差別撤廃」に潜む伝統価値根絶

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(8)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(下)

転向の意志尊重しない同性愛団体

 

連載 中華圏に浸透する同性婚