香港行政長官選で財界支持を広げる曽俊華氏 【中華の「顔」】 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

香港行政長官選で財界支持を広げる曽俊華氏 【中華の「顔」】


1月19日、正式に香港行政長官選挙への立候補を表明した際、「香港に対する信頼を回復し、社会の二極化に終止符を打ちたい」と述べたが、住宅難対策の土地確保以外は具体策が乏しいとの批判を受けている。


民主派の学生らに理解を示す一方、香港独立派には強硬な立場を取り、拡大する中国の世界的な影響力を強調。しかし、政治改革に対する立場はいまだに明確ではない。「香港の政治的な環境が2014年から実際に変わったのか、見極める必要がある。変わっていないとの結論ならば壁に頭をぶつけているに過ぎず、無意味ということだ」。メディアからの厳しい質問にもユーモアを交えて答え、庶民的な人気が高い。


選挙制度改革については地元のラジオ番組で「中国政府が示した枠組みに沿ったものでなければなならない」「合意形成がなければ議論する意味がない」と急進独立派を牽制。


2007年に香港ナンバー3の財政官に就任後、9年半にわたって財政・経済政策を統括し、習近平政権の経済ブレーンらと親交も深い。24日、香港財界で影響力のある香港中華製造業協会(香港中華廠商連合会=CMAH)を訪れた際、同協会の李秀恒会長や中国の政策助言機関である全国政治協商会議(政協)の施栄懐常務委員ら40人と意見交換。「マニフェストを近日中に発表する前に経済界の意見を聞きたい」と述べ、幅広い香港財界の意見を取り入れる姿勢を示した。

同日、財界とのパイプが少ないとされる林鄭月娥前政務官も同協会を訪問して支持を求め、香港総商会でも激戦を繰り広げる二人が支持を求めて相次ぎ訪問。票の争奪戦となっている。同選で27票を持つ地方議会にあたる郷議局は林鄭氏支持を表明し、政財界では支持が割れ、接戦となっている。昨年12月、財政官ポストの辞表を提出したが、中央政府が一ヶ月以上過ぎて林鄭月娥氏の辞任と同時に受理する異例の展開に中国政府の政治的思惑を指摘する香港メディアも多い。


1951年4月、香港生まれ。原籍は広東省台山市。13歳で米国留学後、マサチューセッツ工科大学で建築学専攻後、米ボストン州立大学教育修士号、ハーバード大学ケネディスクールで公共行政修士号取得。82年から英領香港政庁で勤務し、貿易、財政畑を経験し、香港最後の総督であるパッテン氏の私設秘書となり、97年には香港駐ロンドン経済貿易弁事処長を歴任。その後、香港税関長、商工科学技術局長などを経て07年から香港ナンバー3の財政官に就任。既婚で一男一女がいるが子どもたちは米国に移民。



【香港の近年の主な動き】

 

2014年8月 中国が17年の香港行政長官選挙で、事実上、民主派の立候補を制限する制度改革案を決定
 

2014年9月〜12月 改革案に反発した香港の若者らが香港中心部の大通りを占拠する「雨傘運動」。抗議は79日間続き、計955人が逮捕
 

2016年1月 中国共産党に批判的な本を扱っていた書店関係者5人の失踪が問題となり、抗議デモに約6千人が参加

 

5月 中国共産党序列3位の張徳江氏が香港を訪問し、「少数の者が(国の)分裂をあおっている」と独立論を牽制(けんせい)

 

7月〜8月 立法会選挙で、独立などを訴えていた計6人の立候補を取り消し
 

9月7日 立法会選挙で独立を視野に入れる「青年新政」の2議員が当選

 

10月12日 議員宣誓が無効に
 

11月7日 全人代常務委が2議員の資格を無効とする基本法の解釈を示す


11月30日 香港高等法院(高裁)が議員資格失効に異議申立をした2議員の申し立てを却下


12月2日 香港政府が香港高等法院(高裁)に新たに4人の立法会議員の議員資格失効を求めて審査申し入れ


12月9日 梁振英香港行政長官が来年3月の行政長官選挙への不出馬を表明


12月12日 11日に投票された香港行政長官選挙の選挙委員(定数1200)を決める各界グループ別選挙で親中派が786人、民主派は339人(約27%)を獲得。


2017年1月12日 林鄭月娥政務官が辞任表明し、行政長官選挙への出馬を表明


2017年1月19日 曽俊華前財政官が中央政府から辞職受理され、行政長官選挙への立候補を正式表明。




有力候補一本化できず激戦に 香港行政長官選挙


【中華の顔】


香港行政長官選で財界支持を広げる曽俊華氏 【中華の「顔」】


香港行政長官選へ出馬間近の林鄭月娥政務官 【中華の「顔」】

 

議会での宣誓問題で議員活動ができない游蕙禎香港立法会議員【中華の顔】  


中国を支那と表現した梁頌恒香港立法会議員 【中華の「顔」】

 

香港立法会選でトップ当選、脅迫受ける朱凱廸氏 【中華の「顔」】  

 

香港独立は市場経済では不可能と語る曽俊華香港財政官  

 

香港立法会選挙で脅迫を受ける何麗嫦・選挙管理委員会主任     
 

映画「十年」の蔡廉明プロデューサー   


梁振英行政長官が再選不出馬を表明 香港


民主派議員4人の資格取消申し立て 香港政府  


独立の動き、早期封じ込め 香港  

 

本土派2議員の資格喪失で圧力 香港政府   


習近平国家主席が香港行政長官と会談 再選支持表明なし   

香港高裁も2議員資格「剥奪」判決 両議員は控訴準備へ  

 

議員資格剥奪問題で揺れる香港 一国二制度の矛盾噴出

 

危うい反米親中路線へ転換 中比首脳会談  

 

中国式慈善、疑惑が権力闘争にも 愛国慈善家・陳光標氏が窮地   


【香港立法会選挙2016 連載インタビュー 香港「自治」の行方 第1回~第10回】

劉慧卿民主党主席(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第1回


劉慧卿民主党主席(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く  連載第2回

 

呉秋北全国人民大会代表(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第3回   

 

呉秋北全国人民大会代表(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第4回  

 

新党「香港衆志」の羅冠聡党主席 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第5回


親中派団体「愛港之声」代表の高達斌氏 香港「自治」の行方 連載第6回    

梁家傑公民党名誉主席(上) 香港「自治」の行方 連載第7回    
 

梁家傑公民党名誉主席(下) 香港「自治」の行方 連載第8回

 

香港誌「前哨」の劉達文編集長(上) 香港「自治」の行方 連載第9回

 

香港誌「前哨」の劉達文編集長(下) 香港「自治」の行方 連載第10回

 

 

 

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中台安定維持へ第一投 翁明賢淡江大学国際事務戦略研究所長に聞く 上  
 

対中依存脱却へ経済浮揚策 翁明賢淡江大学国際事務戦略研究所長に聞く 下


 

【連載 蔡英文時代の台湾 本土派路線のビジョンと課題  

 

「天然独」という若者のうねり 蔡英文時代の台湾 連載1


 

村上春樹現象に見る日本との絆 蔡英文時代の台湾 連載2  


 

経済浮揚、日本と連携が必要 蔡英文時代の台湾 連載3  


 

蔡英文時代の台湾 本土派路線のビジョンと課題 連載4(最終回)  

 

 

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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

 

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

 

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。

 

中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(1)

反対派の宗教団体の結束どこまで

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(2)

香港民主化デモ、スタッフの9割が同性愛者

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(3)

警戒する中国当局、家庭崩壊は党の崩壊に直結

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(4)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(上)

婚姻の4条件崩す恐れ

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(5)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)

乗っ取られた香港の民主化運動

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(6)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(上)

説得力欠く同性愛の遺伝要因説


連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(7)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)

「差別撤廃」に潜む伝統価値根絶

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(8)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(下)

転向の意志尊重しない同性愛団体

 

連載 中華圏に浸透する同性婚