中華圏に浸透する同性婚 第7回 香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中) | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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中華圏に浸透する同性婚 第7回

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)
同性愛は後天的要因が大半
医師の離脱救済すら阻止 LGBT団体


――人口732万人の香港や人口約13億人の中国で性的少数者(LGBT)の割合はどれぐらいか。


アメリカ心理学会による2013年の米国内での調査結果では成人男性1000人中5~14人(0.5~1.4%)、成人女性1000人中2~3人(0.2~0.3%)。LGBを総合すると2~3%、米国国民健康調査ではLGBT1.6%、米家庭調査協議会で男性2~3%、女性2%となっている。これに準じて見ると、人口の0.5~3%程度となるだろう。


――同性愛者の差別撤廃を求める条例を香港で施行していこうとする動きは医学的な現状からどう見るか。

差別撤廃の法案策定、条例策定の場合、男女や民族、人種など普遍的な側面から改定していくべきだが、同性愛は後天的な環境によって変化するので普遍的とは言えない。たとえば太っている人が差別されれば、自分の意志で太りたいとか痩せたいということは可能なのでその差別をなくす法律ができるかというとそうではない。カナダでは同性愛者が同性愛の生活が決して良いものではないと発表した後、訴えられて職場を失ったケースもある。

――性的少数者(LGBT)の抱える問題点と彼らが主張する差別撤廃の要求について精神科医の立場からどう見るか。


性的少数者(LGBT)とLGBTの差別撤廃や権益拡大を主張する人々は必ずしも一致しない。LGBTは、あくまで自分たちが差別されるのを恐れている人たちであって、ごく少数のLGBTの人たちの存在を利用して、画策する人々がいる。表面上は人は平等や人権を守ろうと主張して差別撤廃の法案成立を目指す形を取っているが、本当の目的は中国の伝統的な文化価値観を破壊して根絶しようとし、新世代に同性愛や同性婚を洗脳して刷り込もうとしている。性解放運動の究極の目的は性の区別をなくすフリーセックスだ。


――LGBTの特徴は先天的なものだとの解釈が根強いが、実際にLGBTの人々やその家族と接して見てどう解釈するか。

LGBTは先天的なものではない。大半が後天的であり、異性愛者に転向できる。性的少数者の権益拡大を主張するグループはLGBTの存在を小中学校の教育で教えようとし、徹底的に伝統的な家族の価値観や婚姻の定義を変えようと立法化しようとするが、もし、同性愛差別撤廃法案が成立すれば、少しでも同性愛に異論のある意見があっても差別的行為として厳しく処罰される恐れがある。性的少数者は差別を受けている被害者として同情を求めて差別化を撤廃しようと呼びかけているが、実際はLGBTのシンボルであるレインボー旗の六色から見えてくる主張は18歳未満でも性行為を自由にして親や教師は阻止してはいけないとか青年男子と未成年男子が性行為をしても自由だというフリーセックスの考え方が潜んでいる。


――同性婚による養子縁組の問題点は何か。

中国では伝統的に男性の父と女性の母から育てられた子どもは健全に育つと見られているが、欧米では同性婚カップルに養子縁組された子どもは精神的に不安定で自分は死ななければならないと感じる「希死念慮」を抱く割合が一般家庭の子どもに比べて3倍以上高いという米国での研究結果が出ている。養子制度はあくまで子どもの人権を優先すべきであり、親たちの人権を優先するものではない。


昨年6月の連邦最高裁判決で同性婚が全50州で合法化された米国では、米心理学会など有力学術組織が同性愛家庭と一般家庭の子供に「差異は無い」と結論付けているが、実際には同性愛家庭は子供に精神的悪影響を及ぼす可能性が高いことを研究結果は示している。


【康貴華(ホン・クァイワ)】1955年3月、香港生まれ。79年、香港大学医学部卒業後、英国王立精神科医学会の会員となり、香港精神医学院院士、香港医学専科学院院士。81年から83年、香港の中国神学研究院で神学を学び、キリスト教の信仰と心理療法を研究。同性愛者やトランスジェンダーの人やその家族との対処経験が30年以上となり、同性愛で悩む人々や家族のために「新造的人協会」を共同設立。明光社理事。カトリック香港教区同性愛問題小組や性文化学会顧問。



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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)


同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。


同性婚が認められる国・地域は以下の通り。


オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン
、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)


登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。


写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。


中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。


連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(1)

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(2)

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(3)

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(4)

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(5)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(6)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(上)

説得力欠く同性愛の遺伝要因説


連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(7)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)

「差別撤廃」に潜む伝統価値根絶

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(8)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(下)

転向の意志尊重しない同性愛団体


連載 中華圏に浸透する同性婚