政協副主席への就任濃厚な香港の梁振英行政長官 【中華の「顔」】
今年6月末に退任する香港トップの梁振英行政長官は中国の政策助言機関である全国政治協商会議(政協)全国委員に選出され、さらに同副主席に選出されるとの見方が広がっている。3月3日に開会した政協の年次会議では梁氏はひな壇の前にある最前列に着席。次回はひな壇中央に座る可能性が高まっている。北京の情報筋によると、中国共産党中央統戦部がすでに梁振英氏を政協副主席に正式指名した。早ければ3月10日午前の会議で承認される見通し。
この内定が決まれば3月13日の閉幕式で梁振英氏の政協副主席への就任が正式発表される。初代の香港行政長官だった董建華氏も行政長官退任後、政協副主席となり、行政長官退任後の名誉職のような色合いが強まっている。
元香港立法会主席(議長)だった范徐麗泰(リタ・ファン)政協常務委員会委員(写真右)は3月9日、香港メディアの記者団の取材に対し、3月26日に投開票される香港行政長官選挙では「梁振英氏の腹心だった林鄭月娥前政務官への支持を表明する。林鄭氏こそ香港の重要な時期に必要な人物だ」と述べ、支持率が現段階でも低いという批判に対しては「仕事ぶりを見てもらえば自然と支持は上昇する」と親中派ならではの楽観論を漂わせた。
梁氏は2012年3月、行政長官選挙で1200人の選挙委員の投票で689票を獲得して当選。同7月、行政長官に就任し、2014年秋の大規模デモ「雨傘運動」で民主派への対話譲歩を拒否して強制排除するなど中国指導部の意向に従ってきた。しかし、独立を視野に置く本土派、自決派の立法会議員に対する資格剥奪を司法に委ねる形で断行するなど、中国寄り過ぎるスタンスに対する拒否反応も強く、中国本土観光客の爆買問題などで財界系の親中派政党・自由党からさえも反発が強まるなど、支持率が低迷していた。
1954年8月、香港生まれ。原籍は山東省威海市。香港理工大学建築測量系を卒業後、74年、英国の西イングランド大学に留学。85年から香港基本法諮問委員会に加入し、香港基本法の起草に携わり、97年、香港行政会議メンバーとなり、99年から同会議召集人に就任。2003年、全国政治協商会議常務委員に就任。12年7月から香港行政長官となり任期5年で17年6月末に退任予定。17年3月、全国政治協商会議(政協)委員に就任。唐青儀夫人との間に一男二女。
【香港行政長官選挙】
中国が主権を持つ香港特別行政区のトップを金融や不動産、教育、医療など職業別団体の代表、立法会(議会)議員らで構成する選挙委員会(定数1200)が投票し、選出する間接選挙。立候補には選挙委メンバー150人以上の推薦が、当選には過半数の得票が必要となっている。
昨年12月11日の選挙委メンバー選では、親中派が786人(約66%)と過半数を握ったが、民主派は325人(約27%)と改選前の約200人に比べて勢力を拡大。民主派寄りメンバーも加えると、計339人で30%近い勢力になって民主派も徐々に力をつけてきている。
1997年の香港返還時に、有権者「1人1票」の普通選挙を将来導入すると規定したが、中国は2014年に事実上、親中派しか立候補できない制度を一方的に決定。反発した市民や学生らの大規模な選挙民主化要求デモ「雨傘運動」が14年9月から約3ヶ月続いた。制度改革は白紙に戻り、17年も選挙委による間接選挙のままとなっている。
【香港の近年の主な動き】
2014年8月 中国が17年の香港行政長官選挙で、事実上、民主派の立候補を制限する制度改革案を決定
2014年9月〜12月 改革案に反発した香港の若者らが香港中心部の大通りを占拠する「雨傘運動」。抗議は79日間続き、計955人が逮捕
2016年1月 中国共産党に批判的な本を扱っていた書店関係者5人の失踪が問題となり、抗議デモに約6千人が参加
5月 中国共産党序列3位の張徳江氏が香港を訪問し、「少数の者が(国の)分裂をあおっている」と独立論を牽制(けんせい)
7月〜8月 立法会選挙で、独立などを訴えていた計6人の立候補を取り消し
9月7日 立法会選挙で独立を視野に入れる「青年新政」の2議員が当選
10月12日 議員宣誓が無効に
11月7日 全人代常務委が2議員の資格を無効とする基本法の解釈を示す
11月30日 香港高等法院(高裁)が議員資格失効に異議申立をした2議員の申し立てを却下
12月2日 香港政府が香港高等法院(高裁)に新たに4人の立法会議員の議員資格失効を求めて審査申し入れ
12月9日 梁振英香港行政長官が来年3月の行政長官選挙への不出馬を表明
12月12日 11日に投票された香港行政長官選挙の選挙委員(定数1200)を決める各界グループ別選挙で親中派が786人、民主派は339人(約27%)を獲得。
2017年1月12日 林鄭月娥政務官が辞任表明し、行政長官選挙への出馬を表明
2017年1月19日 曽俊華前財政官が中央政府から辞職受理され、行政長官選挙への立候補を正式表明。
2017年2月22日 香港高等法院(高裁)で曽蔭権前行政長官に禁固1年8月の有罪判決
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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)
同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。
同性婚が認められる国・地域は以下の通り。
オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)
登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。
フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア
※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。
アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。
写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。
中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。