香港自決派、台湾与党と連携強化へ
返還20周年へ若年層が危機結束
香港は1国1.5制度 黄之鋒氏
7月1日に中国返還20周年を迎える香港では1997年の返還前後に誕生した若年層の政治意識が変化し、一国二制度に対する評価も二分している。「雨傘運動」を展開した香港自決派の若年層リーダーと台湾のひまわり学生運動から台湾立法委員(国会議員)を輩出した時代力量が連携する動きに中国政府は反中勢力の摘発と取り締まりを強めている。(香港・深川耕治、写真も)
“半独立”の企て認めず 中国政府
独立支持が低下、薄らぐ天安門事件6月12日、台湾の立法院(国会に相当=113議席)で与党系の立法委員(国会議員)18人が香港の民主化を支援する議員連盟を発足させた。香港からは香港立法会(議会)議員ら5人も出席し、香港返還20周年の記念日に合わせ、台湾の尊厳と香港の民主化を死守しようとする活動支持を表明し、連携をさらに深めていく方針を打ち出した。
香港では中国による民主派勢力への圧力が強まり、3月の香港行政長官選挙で林鄭月娥氏(7月1日就任予定、任期5年)が当選後、4月から民主派デモに関与した立法会議員や雨傘運動の提唱者らに対する香港警察の逮捕、起訴が増えている。29日から7月1日までの3日間の日程で習近平中国国家主席が国家主席就任後初めて香港入りし、式典などに参加することから「返還20周年記念日に向け、抗議活動を大幅に減らす狙いがある」(民主党の涂謹申立法会議員)との見方もある。
台湾も「一つの中国」の原則を認めない蔡英文政権が中国の圧力にさらされ、12日、中米パナマが中国と国交を結び、107年の長い交流がある台湾とは断交したことを発表。中国の外交攻勢で昨年12月に西アフリカの島国サントメ・プリンシペが台湾と断交したのに続き、雪崩式に中国の圧力でじわじわと外交空間が狭まり、台湾と外交関係を持つ国は20カ国に減ったことは大きな痛手だ。
荒れ狂う大海に揺れる小舟のような外交空間にさらされる台湾にとって「民主、自由、人権」の共通価値観で香港の民主派勢力と手を携え、巨大化する中国の圧力に結束して対抗する足場を築きたい狙いがある。彼らはこれまでも定期的に香港と台湾で交流してきた。
同議員連盟は、独立志向が強い与党・民進党の立法委員13人と新政党「時代力量」の立法委員5人の合わせて18人の議員が参加。時代力量の黄国昌主席が発起人となり、「中国政府の圧力で香港の人権と自由は圧迫され、深刻化している。立法院で公聴会を開くなど現政権にも働きかけたい」と述べている。
香港からは14年秋の雨傘運動でリーダーだった新党・香港衆志(デモシスト)の羅冠聡主席(立法会議員)、香港眾志秘書長の黄之鋒秘書長、香港大学生連合会(学連)の周永康・元秘書長、人民力量の陳志全立法会議員、本土派の朱凱廸立法会議員の5人が参加。羅冠聡氏は台湾の民進党元職員である李明哲氏の事件や香港の銅鑼湾書店事件を例に挙げ、「台湾は香港の盟友であり、中国政府の強権的な人権圧力に共通してさらされている」と述べ、黄之鋒氏は「香港の『一国二制度』は『一国1・5制度』に成り下がった。習近平氏が秋の党大会前に香港を訪問する時期からこそ交流を深化させる必要がある」と訴えた。
香港では旧来の民主派と返還前後に生まれ育った若年層の民主派の間で香港の民主化、中国の民主化に対する見方が大きく違ってきており、台湾と香港の連携についても不協和音が出ている。
何俊仁民主党元主席は「台湾が香港に関心を高めるのは良いが、自決は独立ではない。台湾は香港のような一国二制度を受け入れないだろうが、われわれは台湾独立を支持しない」と述べており、民主党の主張は本土派とは大きな温度差がある。
民主党は11日、返還20周年フォーラムを開き、香港独立を支持せず、現在の主権の枠組みの下で最大レベルの『自決』を実践すべきだ」「『主権自決』を推進すれば中央が自治権を回収して『1国1制度』を実施することは免れない」との決議文を発表。民主党の胡志偉主席は4月、14年秋の「雨傘運動」に関与した逮捕者を特赦する「大和解」構想を公表したが、民主派や親中派の双方から猛反発に遭い、撤回、謝罪に追い込まれた経緯がある。
民主派内にある世代間の亀裂は天安門事件の再評価をめぐる見方にも浮き彫りになっている。事件が暴動の鎮圧だったとする中国政府見解を見直すように求める旧来の民主派は自らは中国人との認識だったが、事件後に香港で生まれ育ち、香港を自分の「本土」ととらえる独立派の学生ら急成長する若年層にとっては「香港人は中国人とは別々。だから天安門事件は香港人とは無関係」と背を向ける立場が圧倒的に増えてきている。
天安門事件の追悼を長年行っている支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)が主催した5月28日のデモは参加者数が主催者発表でわずか1千人(警察発表450人)。28周年を迎えた6月4日の追悼キャンドル集会は参加者を11万人と発表(警察発表は1万8千人)したが、昨年を1万5千人下回った。大学の学生会が相次ぎ集会の不参加を表明し、事件の風化と若者の「天安門事件離れ」が進んだ(図表参照)。
香港中文大学の最新世論調査(5月23日~6月2日)結果によると、「香港独立を支持」が11.4%(前年比6ポイント減)、「香港独立に反対」は60.2%(前年比2.6ポイント増)となり、香港独立支持が大きく低下している。
中国共産党序列3位の張徳江全国人民代表大会常務委員長は先月27日、北京で演説し、「中央と香港の関係は授権する側と授権される側の関係で、分権関係ではない」とした上で中央政府が行政長官を地方官僚のように「指令権」を保有する権限を活用できるとした。
本土自決や香港独立の動きに対しては「香港に対する国家の主権回復を認めず、香港を国家から分離独立か半独立の政治実体にする企て」と厳しく批判している。
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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)
同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。
同性婚が認められる国・地域は以下の通り。
オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)
登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。
フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア
※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。
アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。
写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。
中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。
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