香港は持久戦、収束見えず景気低迷 区議会選で民意鮮明 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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持久戦、収束見えず景気低迷 香港
11月の区議会選で民意鮮明に 民主派優位、対立は激化


 逃亡犯条例改正案をめぐる混乱が続く香港では改正案の撤廃表明後も抗議活動が続いている。警察とデモ隊や住民同士の衝突が各地で頻発し、デモ抗議を続ける民主派と警察を支援する親中派の対立は混迷の度を増し、持久戦の様相を呈している。中国は建国70周年の国慶節を1日にひかえ、米議会で香港新法を成立させて米中通商紛争に香港が巻き込まれる波及効果を警戒。11月には香港区議会選で民主派優位の展開となれば民意が鮮明となり、中国の強圧と民意の乖離は香港経済の衰退をもたらし、勝者なき闘いに陥りかねない。(香港・深川耕治)


欧米の支援頼みで持続 デモ隊
米国の香港新法に恐々 中国

 

 

6月9日から始まったデモは、9月16日で100日。累計の逮捕者数は1400人を超えた。

 

9月13日と同14日はデモを支持する黒Tシャツの人たちと中国国旗を持った警察擁護派の青色の服を着た集団が小競り合いになってけが人や逮捕者も出るなどトラブルも頻発。

 

香港警察は放火や駅の破壊など過激な行為を繰り返す若者らの取り締まりを徹底し、デモの勢いを沈静化させたい構えだ。

 

 

9月15日、数万人規模の市民らが警察の許可を得ず、香港島中心部の大通りをデモ行進した。9月4日に林鄭月娥行政長官が「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明した後、最大規模。

 

デモ隊は「五大要求」(①逃亡犯条例改正案の完全撤回②市民の抗議活動を「暴動」とする見解の撤回③デモ参加者の逮捕)を一貫して掲げ、若者の一部は警察と激しく衝突。14年の雨傘運動が79日で挫折した教訓から持久戦を継続する構えだ。

 

 

8月31日、警察が地下鉄車内で催涙スプレーを噴射し、若者を警棒で無差別に殴った暴力行為がSNS上で動画としてもアップされ、デモ隊は猛反発。地下鉄を運営する香港鉄路が警察に協力し、活動妨害したとして不満の矛先を向け、少なくとも40箇所以上の地下鉄駅の設備を相次いで破壊している。

 

 

香港ではSNS動画の影響もあり、デモ隊を支持する世論がなお根強く、同情論として黙認される下地になっている。穏健的な抗議デモでは香港政府や中国政府を変えられず、過激化するデモが先鋭化し、対立の溝は深まるばかりだ。

 

 

懸念されているのは香港経済。アジアの金融センターだったはずの香港がデモの過激化で景気が低迷し、景気衰退が顕著になってきていることだ。

 

 

香港の観光業界は過去100日間で大きな打撃を受け、8月、香港を訪れた観光客数は前年同月比で4割減。ホテル・レストラン従業員協会が先月末、加入しているホテルスタッフに調査した結果では、ホテル稼働率が夏期でで通常は9割なのが3割を割り込み、とくに5つ星ホテルの稼働率は1割前後に落ち込んでいるという。

 

 

危機感を募らせ、レームダック(死に体)化する林鄭月娥行政長官は9月17日、誰でも参加できる100~200人規模の対話集会を開いて市民の意見を聴取すると発表し、不満を吸い上げる狙いだが、中央政府の意向もあり、現時点で五大要求のすべてを対話を通して受け入れることはあり得ない。

 

一方、デモを主導する民主派は英米への民主化支持を要請し、国際世論からの外圧を頼みの綱にしている。米議会では超党派の議員が香港に約束された「高度な自治」を毎年検証するよう米政府に義務づける「香港人権・民主主義法案」を民主党主導で6月に提出し、早期に新法が成立させ、中国への圧力を強める動きが本格化している。

 

 

9月15日、民主派は米総領事館前と英総領事館前に多数集結し、旧宗主国の英国政府と米国政府に対し、香港の自由が低下していく中、中国政府に圧力をかけて市民を守ってほしいと訴えた。

 

米国では1992年に「香港政策法」が制定され、香港が中国本土とは違う関税地域と認定し、優遇措置を与え続けて来た。前提条件は高度な自治を認める「一国二制度」が機能していることだが、米政府が同法案施行によって一国二制度が機能していないと判断すれば、香港は中国本土と同じ扱いとなり、物流で栄えてきた香港は大打撃を受ける。

 

トランプ米大統領は来年の大統領選に向け、中国との貿易交渉で香港問題を交渉カードとして揺さ振り、有利にまとめたい思惑がある。中国としても重い頭痛の種だ。

 

 

雨傘運動のリーダーで訪米中の黄之鋒・香港衆志(デモシスト)秘書長は9月17日、首都ワシントンでの米議会公聴会に出席し、香港で続くデモの状況について証言。「香港人権・民主主義法案」の可決を促し、香港市民への支援を訴えた。

 

訪米に先だち、ドイツを訪問し、同国のマース外相と会談するなど香港民主派の活動に対する国際的な支援を求めている。

 

民意の指標になるのが11月24日投開票の香港区議会議員(18区民選452人)選挙だ。

 

前回は親中派323議席(70.5%)、民主派が127議席(27.7%)、その他が8議席。凋落傾向が続いた民主派は巻き返し、香港各メディアの報道では11月の選挙で03年の選挙以来の民主派の大勝が見込まれている。

 

選挙結果が民意の大きな指標となっても、中国政府や香港政府は政治について態度を大きく変えることはない。

 

だが、「今日の香港は明日の台湾」と言われる通り、来年1月の台湾総統選挙への政治的影響は非常に大きく、香港問題や外交問題で中国の脅威を目の当たりにしている台湾では、再選を目指す台湾与党・民進党の蔡英文総統にとって追い風になるだろう。

 

 

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