革命英雄礼賛で愛国鼓舞 中国教科書 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

革命英雄礼賛で愛国鼓舞 中国教科書
共産党の国家意識、前面に
台湾、尖閣、南シナ海は「領土」


中国では新学期となる9月1日から「国家主権の意識」啓蒙を主眼にした「道徳と法治」「歴史」「国語」の3科目の新たな統一教科書を使用し、従来にはなかった愛国、領土に対する国家意識養成を強化している。台湾では教科書から中国古文を減らし、台湾独自の伝統文化を紹介する本土化が拡大。香港やマカオでは国歌の歪曲・侮辱に対する罰則強化や刑事責任追及を可能にする国歌法の立法化が中国政府の草案審議で民主派は警戒を強めている。(香港・深川耕治、写真も)


中国古文減らし台湾本土化 台湾
国歌法で侮辱厳罰化へ 香港、マカオ



中国教育省の肝いりで編纂された新版の小中学校用統一教科書では「道徳と法治」「歴史」「国語」の3科目で既存の教科書にも色濃かった愛国、領土に関する国家意識についての内容がさらに強化された。


教育省は2012年から同3教科の編纂作業を行い、5年を費やして完成。8月28日、中国教育省の発表によると、「国語」や「歴史」の教科書題材には古典詩歌、中国共産党の革命英雄の物語などの内容がさらに増え、「国語」ではとくに抗日戦争で活躍した武勇伝を記した「狼牙山五壯士」、「朱德的扁擔」だけでなく、中国初の実戦用の国産空母が進水したことを描写した内容が入った。小学用では約40編、中学用では「紀念白求恩」「人民服務のために」「清貧」「黄河頌」「長征」など30編が含まれている。



「歴史」では、新疆、チベットや台湾、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)、南シナ海について「分割すること不可分な我が国の領土の一部」だとして中国側が根拠とする「歴史の根源」を具体的に説明している。



 中国共産党の歴史を前面賛美する愛国主義教育では、たとえば、「国語」の「狼牙山五壯士」では日中戦争で中国の八路軍が河北省の狼牙山に立てこもり、最後まで残った5人の兵士が日本軍に降伏せずに山頂の崖から飛び降り、3人死亡、2人は木の枝に引っかかって助かったという「抗日英雄」の物語を掲載している。



また、新教科である「道徳と法治」では憲法や法治、道徳教育を小学用では約30の法律法規、中学では50の法律法規を使って啓蒙。 民謡民歌、伝統美徳、民族精神、古代の科学技術などを含めて紹介し、「井岡山精神」や「長征精神」などを通して毛沢東、朱徳、周恩来、鄧小平などの歴代の党指導者約40人の生き様を紹介しながら革命英雄や革命に関する事件などを通じて国家意識、愛国意識の高揚を強めている。義務教育課程では教材となっている海外作品はわずか一割程度で「革命教材を増やして西洋化を防止する」(香港紙「星島日報」)との見方も出ている。


「中華民族の偉大な復興」による愛国路線を推進する習近平政権にとってみれば、今秋開催の第19回共産党大会に向け、党指導部の新人事を含め、求心力を高める効果も得られやすい教育体制となっている。



一方、民進党の蔡英文政権による本土化路線を進める台湾では、教育部が中高生用の国語(中国語)課程の内容を大幅に改定し、中国大陸伝統の文語文の題材30編を10編まで減らし、ネット投票形式で題材を選出。10編の題材のうち、4編が世界的に知られる名著で、残り6編は台湾の伝統文化に基づく題材となり、脱中国化が進む。


台湾では二年前から小中学用の教科書について教授60人、教師500人から意見を聴取し、学生必読の30編の文語文を20編に減らし、さらに中高生用の教科書題材としては10編の文語文の課題に絞り込み、四書五経や「桃花源記」、「赤壁賦」、「鴻門宴」などの名著だけでなく、台湾作家の文語体の詩、日本統治時代に生まれた台湾の日本作家の文章も掲載されている。



一方、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は、28日、一国二制度の香港、マカオで適応される国歌の歪曲や侮辱行為に対して罰則強化や刑事責任追及が可能となる「国歌法」草案の二回目の審議に入り、中国国歌を侮辱する行為に対しては香港やマカオでも立法化されれば厳罰化されることになる。10月には三回目の審議が準備されており、中国政府の立法化への動きは加速している。


民主派の郭栄鏗立法会議員(公民党)は「国歌法草案の一部は香港人の自由を剥奪する刑事責任まで含まれており、立法会での審議を尽くすことが極めて重要。市民へのパブリックコメントを集めることでも判断材料にすべきだ」と反発を強めている。



同草案が審議されるきっかけとなったのは15年11月、サッカーワールドカップアジア二次予選の中国対香港戦で観客席にいた香港人サポーターらが中国国歌にブーイングを意味する「BOO」という文字を紙に書いて広げ、問題視されたことがきっかけだ。



2012年、香港では「中国の国旗の前では涙ぐまなければならない」とする愛国教育を推進する道徳・国民教育科を小中学校で義務化する方針が「洗脳教育だ」と13万人を超える抗議デモに発展し、梁振英行政長官(当時)は導入を撤回した経緯があり、市民からの猛反発が予想される。


愛国教育路線をさらに推進する中国と、愛国を政治化する中国に反発して台湾本土化教育へ深化する台湾、中国政府の圧力で愛国への反発を厳罰化していく香港、マカオで教育の潮流もより鮮明化しつつある。


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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

 

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

 

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。

 

中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。


台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず  

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(1)

反対派の宗教団体の結束どこまで

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(2)

香港民主化デモ、スタッフの9割が同性愛者

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(3)

警戒する中国当局、家庭崩壊は党の崩壊に直結

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(4)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(上)

婚姻の4条件崩す恐れ

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(5)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)

乗っ取られた香港の民主化運動

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(6)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(上)

説得力欠く同性愛の遺伝要因説

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連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(7)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)

「差別撤廃」に潜む伝統価値根絶

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(8)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(下)

転向の意志尊重しない同性愛団体

 

連載 中華圏に浸透する同性婚