習氏一強、見えぬ後継で基盤着々 中国指導部 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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習氏一強、見えぬ後継で基盤着々 中国指導部
習派3人、盤石布陣で刷新
ポスト習、5年で競わせ選別


中国共産党の第19回大会は10月24日、習近平2期目政権を構成する中央委員、中央委員候補、中央規律検査委員会委員を選出し、25日、最高指導部である政治局常務委員会のメンバー7人が発表された。栗戦書中央弁公庁主任と趙楽際中央組織部長の習派2人を軸に習氏一強が加速し、江沢民派や胡錦涛派は弱体。ポスト習近平と目される習派の陳敏爾重慶市党委書記、胡錦涛派の胡春華広東省党委書記はいずれも政治局常務委には入れず、ポスト習は有力候補を競わせて5年後まで見極める習氏のキングメーカーとしての圧倒的な権力基盤強化が増している。(香港・深川耕治)


江派、胡派は弱体、求心力加速
脱江胡派へ転換、習氏一極へ
栗戦書氏と趙楽際氏が習派主導


党大会人事の焦点は「反腐敗」汚職摘発で陣頭指揮を執った習総書記の片腕、王岐山中央規律検査委書記の進退とポスト習の政治局常務委入りだった。王氏を勇退させ、次世代の後継者を政治局常務委入りさせない人事となったことで習氏は二期10年の慣例を覆して政権三期目すら視野に入れる長期政権となる外堀を固めつつある。


中国の帝王学では易経の最初の卦である乾為天の用九にある通り、「羣龍󠄂(ぐんりょう)首无(な)きを見る」で国家指導者が群れをなした龍(集団指導体制)の権力構造を取り、「龍の首(指導者トップ)」の顔を見せない(個人崇拝を戒める)ことで絶対権力を固めることが理想的な国家指導ということになる。ただ、習氏は反腐敗を通して個人崇拝に踏み込む動きもあり、言論統制をさらに露骨に規制する政策を打ち出しており、集団指導体制を内側から一強として絶対権力化しつつある。

習氏はチャイナセブンという最高指導部の「羣龍󠄂」で集団指導体制であるように見せながら、反腐敗闘争で民衆の支持を受けて政敵を排除し、過去5年間で習氏一強の権力集中を急速に進めた。最高指導者の現職中に毛沢東、鄧小平以来3人目となる自らの名を冠した指導理念「習近平による新時代の特色ある社会主義思想」を党の憲法とも言うべき「行動指針」に明記した党規約改正案を採択。名前が入っていない江沢民氏や胡錦涛氏を超越し、党内の絶大な権威と権勢を得ることになった。


政権1期目で汚職摘発で反腐敗による汚職摘発に習氏の片腕である王岐山氏を中央規律検査委書記として辣腕を振るわせながら自派閥の政敵となる江沢民派、胡錦涛派を大々的に摘発し、慣例である68歳定年制を厳守して勇退させた。習氏はここ一年、政権の事実上のナンバー2となって政敵をつぶしていく王岐山氏に複雑な警戒感を抱くようになり、定年の慣例を覆して指導部留任まではしなかったとの見方も出ている。後任には同じ習派の趙楽際氏が中央規律検査委員として抜擢され、習政権の後半5年を汚職取り締まりの特権で担う。

最高指導部である政治局常務委員会メンバー7人のうち、習氏と李克強首相のみが留任。退任した5人のうち張徳江氏、劉雲山氏、張高麗氏の3人は江沢民派、王岐山氏は習派、兪正声氏は無派閥で江派や胡錦涛派の退潮が目立ち、新メンバー5人は栗戦書中央弁公庁主任と趙楽際中央組織部長の習派2人と胡錦涛派である汪洋副首相、習氏のスピーチライター役だった王滬寧中央政策研究室主任、江沢民派の韓正上海市党委書記で、いずれも習氏との関係は良好で忠誠心をにじませている。

一方、ポスト習近平と目される50歳代である習派の陳敏爾重慶市党委書記、胡錦涛派の胡春華広東省党委書記はいずれも政治局常務委には入らず、昇格が見送られた。後継候補を置けば、露骨な権力闘争や権力委譲が長期政権樹立への弊害になると判断し、自派と胡錦涛派の一騎打ちになる構図を避けたと見られる。むしろ、「後継空白」で政治局常務委員を除く政治局員18人の中から次世代指導者候補を競わせ、後継を見極める強かな権力温存策となっている。

前回の党大会では党中央委員(204人)のうち、胡錦涛派である共産主義青年団(共青団)系が50人を超えて最大派閥だったが、今回の党大会では習近平氏が福建省や浙江省のトップ時代に部下だったグループである習派が約50人で最大派閥に取って代わり、江沢民派、胡錦涛派の退潮が著しい。さらに政治局常務委員7人を支える政治局員18人のうち留任は3人のみで新たに15人が昇格し、習近平派は12人で8割を占めるほどの圧倒的多数となっている。


習氏は政治局常務委メンバー6人の紹介の際、第十九回党大会と五年後の第二十回党大会までの5年間には「二つの百年(中国共産党結党100周年となる2021年までの百年)目標」が交わる「歴史の結節点」の時期であり、「第一の百年目標は実現し、第二の百年目標をスタートする時期だ」と説明した上で2018年は改革開放40周年、19年は中華人民共和国建国70周年、20年は小康社会(ややゆとりのある社会)の全面成就、21年は世界最大の政党である中国共産党結党100周年という党の権威を高揚する国家イベントが目白押しであることを強調した。


台湾に最も近い福建省リーダーを経験した習近平総書記が、後継を起用せず、求心力を温存して長期政権へ着々と布石を打つ裏には、毛沢東すら成し得なかった中国共産党の悲願である「台湾統一」を結党100年の節目までに達成、成就したい指導者としての思惑がある。


現段階では台湾の蔡英文政権は「統一」にはNOを突きつけ、台湾の外交空間は中国の強国路線によって狭まるばかりだが、台湾住民の主流民意は「現状維持」を望み、決して統一は望まないのが実情だ。これを揺さぶっても逆効果であることは習氏自身、自戒すべきであり、北朝鮮問題も祖国統一に暗い影を残し続ける。

2022年の次期党大会までに習氏の権力基盤がどこまで強まるか、反対勢力「不在」の一人勝ち状態は建国の父・毛沢東に並ぶトップに権力を集中させる「党主席制」導入の観測が絶えない。党規約に自らの名を入れた「思想」復活は思想からの解放を訴えた鄧小平理論から逆行しかねず、個人崇拝や神格化に陥った毛沢東時代の苦い教訓を活かせるかで大きく変わる。


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