ポスト「一国二制度」問う動き 香港 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

ポスト「一国二制度」問う動き 香港
「30年後も不変」強調 親中派
中国崩壊で自決伺う 本土派
基本法で政治改革を 民主派


7月1日に中国返還20周年を迎えた香港は林鄭月娥行政長官率いる新政権が中国の習近平国家主席の意向に沿う親中色を強めてスタートした。高度な自治を保障する香港の「一国二制度」は返還後50年は有効だが、期限後となる2047年7月以降の香港はどうあるべきか、「二制度」より「一国」を強調して独立派を牽制する中国に対し、香港内ではポスト「一国二制度」の見解に温度差が開き始めている。(香港・深川耕治、写真も)



アヘン戦争(1840〜42年)以来、英国の植民地だった香港が1997年に中国に返還される際、英中共同声明を遵守して50年間は資本主義を採用し、共産主義の中国と異なる制度を維持することが保障されるのが一国二制度だ。


外交と国防を除いて「高度な自治」が認められ、香港の憲法にあたる香港基本法には、中国本土では制約されている言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由などが明記されている。同法は中国人民代表大会(全人代)常務委員会に「解釈権」があり、選挙制度改革や立法会議員の扱いなど政治課題の最終決定権は事実上、中国共産党指導部にある。


基本法では香港トップを選ぶ行政長官選挙について「広範な代表性を持つ委員会が民主的手続きで指名した後、普通選挙で選ぶ」ことを最終目標として明記。同選挙は「選挙委員会」のわずか1200人だけが投票できたが、基本法の解釈権を持つ中国の全人代常務委員会は14年8月、香港政府の報告に基づいて、17年選挙で18歳以上の市民が1人1票で投票する仕組みを決定した。



しかし、中国側の決定は、親中派が大多数を占める指名委員会が候補者を2〜3人に絞るため、民主派は「民主派を意図的に排除するもの」と反発し、決定の撤回などを求めて同年9月から幹線道路を79日間占拠してデモを展開する雨傘運動となり、旧来の民主派とは別に若年層を中心に香港こそ故郷とする本土派、香港の未来は香港人が決めるとする自決派、中国からの分離独立を目指す独立派などを誕生させる要因となった。


返還後20年で経済の「中国化」も底流で深く浸透し、香港の主要産業である金融、不動産業で中国企業の比重が高まり、香港上場企業の半数は中国系となっている。

2012年以降、中国・習近平政権によって香港市民の自由は侵食され中国に批判的な本を扱った銅鑼湾書店の関係者が失踪し、当選した本土派の香港立法会議員に北京から議員失格の判断が示され、香港のメディアが中国企業に買収され、中国の圧力を受ける構造が常態化。一国二制度はさらに空洞化している。

習近平国家主席は返還20周年の一連の講演で「香港の一国二制度は世界が認める成功を収めた」と強調。香港独立の動きに対しては「中央の権力に挑戦する動きは絶対許さない」と厳しく非難し、「香港が国家の主権と安全、発展の利益を守るための制度は完全なものとする必要がある」と述べ、香港基本法(ミニ憲法)23条で義務付ける国家分裂や政府転覆を禁止する法律の新制定を求めた。


香港では03年、立法会(議会)で同法案制定の動きが強まり、民主派議員らの拒否権行使で廃案になった経緯があるが、発足した林鄭政権では推進する動きだ。現段階では2047年以降の香港が一国二制度を維持するか、中国の一都市として一国一制度に糾合されるかは明言していない。


7月22日、全人代常務委員会香港基本法委員会副主任の梁愛詩氏は「一国二制度は香港の繁栄維持を助ける仕組みであって50年間不変とは50年後に大きく変わるという意味ではなく、二国二制度は出現しないし、不可能。一国一制度か一国二制度の二択しかないが、一国一制度にしようとすると香港の制度は中国内地の制度とかみ合わないので50年後も結局は一国二制度の継続で落ち着くだろう」と話している。


香港選出の全国人民大会代表(国会議員)、呉秋北・香港工会連合会理事長(写真左)は単独インタビューで一国二制度の実践課題を克服し、政経両方が安定すれば、47年7月以降の香港は「一国二制度を継続することになるはずだ」と見通し、中国政府が強硬に一国一制度に変更して「中国の一都市に完全中国化する動きはない」と香港住民の不安感を払しょくする見方を示している。



しかし、一方で親中派の中には「47年以降は一国二制度のままで良いと中央政府が判断すれば一国二制度の延長、継続を決めるだろうが、そうでなければ香港は一国一制度に戻り、中国の一都市に回帰すべきだ」(民間組織「愛港之声」の高達斌主席=写真右)との根強い中国「完全回帰」願望を持つグループもあり、親中派内でも独立派への猛反発から意見の齟齬(そご)は埋まりそうにない。


一方、民主派も独立を望まない穏健派、独立を視野に置く急進派では大きな差異がある。


香港の民主派政党である公民党の梁家傑・前名誉主席(写真左)は単独インタビューで「一国二制度で求められている港人治港(香港人が香港を治める)は香港基本法の遵守による民主回帰が原点だ。中央政府が香港の管治権ばかりを新たに強調すれば一国二制度は歪められ、民主的な政治改革が遅々として進まないまま終わってしまう」と話している。



7月23日~26日に神奈川県三浦市で開かれた「2017年中国、香港、台湾の政局変化と日本の中国政策」国際シンポジウムでは香港の雨傘運動を主導した香港大学の戴耀廷副教授(写真右)、香港立法会議員の資格を失った本土派である青年新政の梁頌恒氏と游蕙禎氏、時事評論家の程翔氏らが参加。



香港の民主派が台湾独立派、日本の支持者と連携しながら国際的な団結で一党独裁の大国・中国に香港が糾合される動きを阻止することの重要さで参加者が一致し、戴耀廷氏は「2047年より以前に中国は崩壊する局面に陥る可能性が大きく、それまでに一般大衆に自主と自決の意識を植え付けさせ、不断の抗争を続けることが重要。最終的には中国の連邦制の中に香港が入る形が理想だ」とし、中国崩壊論による独立のチャンスをうかがう必要があることを強調した。


今後、立法会(議会・70議席)で法案の否決ができる3分の1(24議席)以上の議席数を民主派が死守できるかどうか、補欠選挙の動向を含め、一進一退の攻防が香港の一国二制度の行方を大きく左右していくことになる。



返還50年後の色は赤と黒 香港青少年座談会

空母「遼寧」、時間差で香港へ 連載 「一国二制度」の前途(下)

民主化進まず格差拡大、独立論の背景に 連載「一国二制度」の前途(中)  

中国から移民増、狭さに悲鳴 香港・中国返還20年(上)   


民主化デモは大幅減少 香港返還20周年  

習近平国家主席の香港での一挙手一投足 香港返還20周年  

香港自決派、台湾与党と連携強化へ 香港返還20周年で危機感  

陣痛期の1年、大なた振るえず 台湾・蔡英文政権   


急成長する新型レンタサイクル業界 中国 ofo、摩拝単車に他社急追    

台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず

親中派の林鄭月娥氏が当選 香港行政長官選

中国「本命」の林鄭氏優位に 香港行政長官選  

旺角暴動の3被告、有罪に 香港区域法院(地裁)

林鄭月娥氏の優位変わらず 支持率は低迷 香港行政長官選挙  

中国返還20周年で汚職「赤信号」 前行政長官に禁固1年8月 香港

香港在住の中国富豪、本土連行か 中国警察   

有力候補一本化できず激戦に 香港行政長官選



台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず 

親中派の林鄭月娥氏が当選 香港行政長官選

中国「本命」の林鄭氏優位に 香港行政長官選  

旺角暴動の3被告、有罪に 香港区域法院(地裁)

林鄭月娥氏の優位変わらず 支持率は低迷 香港行政長官選挙  

中国返還20周年で汚職「赤信号」 前行政長官に禁固1年8月 香港

香港在住の中国富豪、本土連行か 中国警察

有力候補一本化できず激戦に 香港行政長官選挙

【中華の顔】


香港メディア大手ネクストメディアの黎智英(ジミー・ライ)元会長【中華の「顔」】


習政権擁護を強調する江沢民氏の妹、江沢慧氏【中華の「顔」】


台湾の国民党主席選挙で先行する呉敦義前副総統【中華の「顔」】

朝鮮半島問題で中国の立場を説明する王毅中国外相【中華の「顔」】

女性初の香港行政長官に就任する林鄭月娥氏【中華の「顔」】

 
大気汚染改善を自賛する陳吉寧中国環境保護相 【中華の「顔」】 
 

政協副主席への就任濃厚な香港の梁振英行政長官【中華の「顔」】

汚職スキャンダルがヤマ場を迎える香港の曽蔭権前行政長官【中華の「顔」】

香港行政長官選で財界支持を広げる曽俊華氏 【中華の「顔」】

 

香港行政長官選へ出馬間近の林鄭月娥政務官 【中華の「顔」】



議会での宣誓問題で議員活動ができない游蕙禎香港立法会議員【中華の顔】                 


中国を支那と表現した梁頌恒香港立法会議員 【中華の「顔」】

 

香港立法会選でトップ当選、脅迫受ける朱凱廸氏 【中華の「顔」】  

 

香港独立は市場経済では不可能と語る曽俊華香港財政官  

 

香港立法会選挙で脅迫を受ける何麗嫦・選挙管理委員会主任  
 

映画「十年」の蔡廉明プロデューサー  


梁振英行政長官が再選不出馬を表明 香港   


民主派議員4人の資格取消申し立て 香港政府  

独立の動き、早期封じ込め 香港  

 

本土派2議員の資格喪失で圧力 香港政府


習近平国家主席が香港行政長官と会談 再選支持表明なし   

香港高裁も2議員資格「剥奪」判決 両議員は控訴準備へ  

 

議員資格剥奪問題で揺れる香港 一国二制度の矛盾噴出

 

危うい反米親中路線へ転換 中比首脳会談  

 

中国式慈善、疑惑が権力闘争にも 愛国慈善家・陳光標氏が窮地   


【香港立法会選挙2016 連載インタビュー 香港「自治」の行方 第1回~第10回】

劉慧卿民主党主席(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第1回


劉慧卿民主党主席(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く  連載第2回

 

呉秋北全国人民大会代表(上) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第3回   

 

呉秋北全国人民大会代表(下) 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第4回  

 

新党「香港衆志」の羅冠聡党主席 香港「自治」の行方 識者に聞く 連載第5回


親中派団体「愛港之声」代表の高達斌氏 香港「自治」の行方 連載第6回    

梁家傑公民党名誉主席(上) 香港「自治」の行方 連載第7回    
 

梁家傑公民党名誉主席(下) 香港「自治」の行方 連載第8回

 

香港誌「前哨」の劉達文編集長(上) 香港「自治」の行方 連載第9回

 

香港誌「前哨」の劉達文編集長(下) 香港「自治」の行方 連載第10回

 

 

 


 ☆ ~ ★ ~ ☆ ~ ★ ~ ☆ ~ ★



 



同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

 

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

 

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。

 

中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。


台湾の同性婚合法化、ヤマ場に 賛否二分で着地点見出せず  

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(1)

反対派の宗教団体の結束どこまで

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(2)

香港民主化デモ、スタッフの9割が同性愛者

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(3)

警戒する中国当局、家庭崩壊は党の崩壊に直結

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(4)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(上)

婚姻の4条件崩す恐れ

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(5)

香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)

乗っ取られた香港の民主化運動

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(6)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(上)

説得力欠く同性愛の遺伝要因説

t;3">

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(7)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(中)

「差別撤廃」に潜む伝統価値根絶

 

連載ルポ・中華圏に浸透する同性婚(8)

香港の精神科医・康貴華氏に聞く(下)

転向の意志尊重しない同性愛団体

 

連載 中華圏に浸透する同性婚