資金洗浄の逃避できず　逃亡犯条例案連載・香港憤激【中】

チャイナマネー隠蔽できず　連載・香港憤激【中】
親中派に不都合な改正案　習近平独裁に都合良く

逃亡犯条例案　攻防の裏側

３月１６日、京都市内に宿泊し、会席料理を食そうとした香港の民主派で民主党の重鎮、涂謹申立法会議員は突然、逃亡案条例案の改正審議入り情報を聞いて食べるどころではなくなった。

香港政府が20日間のパブリックコメントを求める期間を発表し、事の重大性を知らせぬまま審議も行わず、強硬に条例案の修正を通そうとしていた動きを知ったからだ。

条例案の改正を急ぐ表向きの理由は、香港人が台湾で起こした殺人事件。犯人は香港に逃亡後、香港警察に拘束され、１０月には出所する見込みで、それまでに台湾当局に引き渡す条例改正を目指すものだった。実際は香港市民だけでなく、香港に滞在するビジネスマン、外国人旅行者まで中国政府にとって不都合な犯罪容疑をかければ、中国に引き渡しが可能な恐ろしい法案だ。

即刻、香港に戻り、立法会での審議阻止に動く。弁護士出身の涂氏は立法会で同条例案の審議委員会委員長を務めており、最も条例案の恐ろしさを知るキーマンだ。

英国領時代だった1996年、同じ条例案の審判に関する主席を務めていた。

当時、香港は英国など20ヶ国との間で逃亡犯を引き渡すことを認めていたが、中国、マカオ、台湾、インドなどは認めないことになっていた。

今回の逃亡犯条例案は香港から中国本土への一方通行の引き渡しを認めるもので、中国本土から香港への容疑者引き渡しは認めない。

同条例案の審議委員長には立法会（７０議席）で与党となっている親中派（４５議席）が選ばれやすいが、不動産業界の議員は委員長ポストを快く思わず、結局、２５議席しかない民主派の●氏で落ち着いた。

「実は、この不自然な条例案に反対していたのは、香港でビジネスを行っていた中国の人民大会代表や全国政治協商会議（政協）委員などだった」と●氏は内幕を話す。彼らが汚職したり、社会保障費を未払いだった場合、香港に行けば巧妙なマネーロンダリングで安全が確保されていたが、できなくなるからだ。

親中派ビジネスマンにとって、中国本土の不正な巨大チャイナマネーをシフトできる安全な逃避地が香港だったが、今後は資金洗浄できなくなる危機に直面したからだ。しかし、中国は習近平国家主席の権力集中が進み、他派閥のリーダー候補が次々と汚職を建前に脱落させられる中、同条例の改正は習近平体制の長期維持にとっては非常に都合の良いものとなっている。