「中国の監督権」強化じわり デモ再燃封じの香港 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

「中国の監督権」強化じわり 香港
デモ再燃封じ、あの手この手

 

昨年来、大規模な民主化デモが続いていた香港は新型コロナウイルスの感染対策を名目に5人以上の集会制限が行われている。中国当局は民主派重鎮15人の逮捕起訴など締め付け強化し、香港基本法の新解釈まで強行、直接介入を強める。9月の立法会(議会)選を前にデモ再燃を封じたい露骨な威圧行為を展開している。(香港・深川耕治、写真も)

 

一国二制度の新解釈が波紋
高官人事、民主派逮捕で揺さ振り

 

▲4月28日、大半の公務員の正常業務を5月4日から開始することを発表する林鄭月娥行政長官

 

香港では新型コロナウイルスの感染が抑制され、5月4日から大部分の公務員が正常業務に戻ることが発表された。4月28日、記者会見した林鄭月娥行政長官は「公衆衛生上の問題がなければ毎年1万件ほどの集会やデモが行われている平和都市だ」としながらも集会制限解除には触れなかった。
 

同発表を受け、香港大学感染伝染病センターの何栢良総監は、香港で新たな感染者ゼロが続けば月内から学校の授業再開が開始され、「5人以上の集会禁止の上限アップも可能」と示唆した。中高校の校長会でも最速で5月26日からの授業再開が望ましいとしている。香港で社会活動が正常化されれば、大規模デモの再燃は必至だ。

 

▲休校措置だった香港の中高校は早ければ5月中の授業再開が行われる見通しだ


中国政府は香港民主派への強硬姿勢を際立たせ、香港立法会(議会=70)議員の資格取り消しをちらつかせて議事運営に介入したり、民主派重鎮15人の逮捕を擁護するなど、米欧の民主国家が新型コロナウイルスへの対応で混乱している間隙(かんげき)を突く形で、9月6日投票予定の立法会選挙へ攻勢を強めている。


香港では昨年6月以降、「逃亡犯条例」改正案をめぐる大規模な反中デモが続き、約7700人が逮捕された。民主派は昨年11月、地方議会にあたる区議会選挙(452議席)に8割以上の議席を占める地滑り的な圧勝で民意を得たが、民主的な選挙制度などの要求は遅々として実現していない。

 

▲香港警察はデモ参加者の徹底した逮捕で逃亡犯条例案をめぐる反対デモ参加者の約7700人を逮捕した


香港では3月末から、感染対策として公共の場で5人以上集まることが禁止され、民主派の抗議活動は4人ごとのデモやオンラインゲームでの抗議など停滞を余儀なくされた。


中国政府の民主派「包囲網」第一波は香港立法会での民主派議員への露骨な圧力だった。


中国国歌を侮辱する行為などを禁じる「国歌法」の早期成立を図りたい中国政府に対し、阻止したい民主派は、立法会の内務委員会で昨年10月以降、委員長を選出できない状態を継続、死守していた。

 

▲香港統治を万全にしたい習近平中国国家主席=香港マカオ事務弁公室のネット画像より


これに対し、中国政府の香港政策を担当する「香港マカオ事務弁公室」と、中国政府が香港に置く出先機関「香港連絡弁公室」が13日、「議員としての職責を全うせよ」と民主派に圧力をかけ、民主派は「香港基本法(ミニ憲法)に反して香港の事務に介入した」と反発。基本法22条には「中国政府所属の各部門は、香港特別行政区が管理する事務に干渉できない」と定められおり、香港政府は従来、香港連絡弁公室などは22条の影響下にあるとの解釈を繰り返し明示していたためだ。


しかし、第二波として、香港連絡弁公室は4月15日、国家分裂につながる行為を禁じる国家安全条例の制定を要求。同弁公室は17日、香港マカオ事務弁公室と香港連絡弁公室は「中国政府を代表して香港の重大な問題について監督権を行使できる」組織であり、単なる「中国政府所属の部門」ではないと従来とは全く異なる主張を展開。「22条の制約を受けない」との我田引水の新見解を打ち出し、4月19日には突如、香港政府も従来の主張を撤回して事実上追認し、中国当局が合法的に香港の問題に直接介入する風穴をこじ開けた。

 

▲4月18日に香港警察に逮捕された李柱銘氏(マーチン・リー=左端)、何俊仁元民主党主席(アルバート・ホー=中央)、香港紙「蘋果日報」創設者の黎智英氏(ジミー・ライ=右)。写真は昨年7月1日の民主派デモ参加時


第三波は4月18日、「香港民主の父」と呼ばれる李柱銘氏、何俊仁元民主党主席、香港紙「蘋果日報」創設者の黎智英氏ら民主派重鎮15人を違法集会に参加した容疑などで逮捕。全員が起訴後、保釈されたが、2014年の雨傘運動の提唱者の一人である戴耀廷氏は「決して偶然ではない。コロナ危機に乗じた火事場泥棒的な政治的措置だ」と警戒を募らせる。


4月22日には香港政府の局長(閣僚)13人中5人を入れ替える異例の人事を発表。基本法の解釈変更で不手際のあった幹部を交代させ、中国の評価が高い人物を起用するなど、更なる親中化が進む。

 

▲2019年7月1日、香港返還22周年の式典に参加した梁君彦・香港立法会主席(議長=中央)と林鄭月娥行政長官(右)


今年6月4日は天安門事件31周年。6月9日は「逃亡犯条例」改正案をめぐる103万人デモから1周年、6月16日には200万人デモから1周年の節目を迎え、デモ再燃のマグマが国際社会への表出として渦巻く。一連の大規模デモを主催した民主派団体「民間人権陣線」は7月1日のデモを呼びかけ、コロナ再発を憂慮する。

 

▲香港区議会議員選挙の投票風景。9月6日の香港立法会選挙の有権者登録は5月2日で締め決められる


現在、23議席(中間派を含めれば24議席)の民主派は「35議席確保への視野が見えてきた」(民主党の涂謹申立法会議員)と民意の後押しに一点の曇りもない。仮に9月6日投票予定の香港立法会(定数70)選挙で昨年の区議会選と同じく躍進し、香港政府を支える親中派が下野すれば中国に都合の良い条例案や予算案が通らなくなり、中国の香港統治が事実上、崩壊する。中国政府としては、最悪のシナリオを断固阻止するため、背水の陣として、あらゆる口実と手練手管を通して民主派を締め付け、選挙戦を有利に進める効果を狙っているが、国際社会の厳しい批判は避けられない。

 

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