硬軟両様、台湾取り込み加速 中国 韓国瑜氏、総統選出馬か | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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硬軟両様、台湾取り込み加速 中国
親中派首長を厚遇 蔡政権と明暗

訪中後の韓国瑜氏、出馬か 台湾総統選
対中融和、統一戦略で揺さ振り


 昨年十二月、台湾の統一地方選で大勝し、党勢を回復した最大野党・国民党所属の市長や県長が対中交流へ傾斜する政策を打ち出したことに呼応し、中国は訪中する国民党の首長を厚遇し、香港やマカオの一国二制度を台湾にも適応できるよう民意取り込みを加速させている。31日、中国軍機が台湾海峡の中間線を超えて侵犯するなど、武嚇(ぶかく)も行い、硬軟織り交ぜた習近平政権の統一戦略は、2020年1月の台湾総統選で国民党政権の復権として具現化するのか、韓国瑜高雄市長の出馬動向次第となっている。(香港・深川耕治)

 


今後の中台関係、台湾の近未来を見通す上で、昨年12月の統一地方選で「韓流ブーム」を台湾全土に席巻した最大野党・国民党所属である韓国瑜高雄市長の動向は台風の目となっている。

 


台湾南部最大の都市である高雄市の市長になったばかりで「市長職に専念したい」と総統選出馬の意向は未だに示していないが、台湾の最新世論調査(美麗島電子報など)では、20年1月11日投開票の総統選に韓氏が出馬した場合、常に候補者の中で支持率トップを走り、再選のために民進党の予備選に立候補している蔡英文総統、民進党のホープで党内人気のある頼清徳前行政院長よりも高支持率(図参照)


総統選への出馬態度を保留にしている無党派無所属の柯文哲台北市長が出馬した場合でも優勢で、韓氏が出馬辞退した場合、与野党の候補者よりも柯文哲氏が優勢というのが現況だ。

 


1月2日、中国の習近平国家主席が演説で「武力使用」の可能性にも言及して中台統一を迫り、台湾が早期に一国二制度を受け入れるよう攻勢を強める中、毅然と「一国二制度は受け入れない」と表明した蔡英文総統の支持率は徐々に回復基調にあるが、再選可能圏内には程遠い。


中国政府としては、中台融和を積極的に進める最大野党・国民党の首長をできるだけ経済協力で手厚く取り込み、一国二制度を拒み続ける与党・民進党との対応差を見せつけ、中国との和平交渉窓口は国民党しかないイメージを醸成したい狙いがある。とくに台湾での高支持率を誇る韓国瑜氏が総統選に出馬すれば中台統一の道は最も早いと踏んでいる。

 


韓氏は3月22日に香港入りし、28日まで広東省深セン(土ヘンに川)、台湾に近い福建省アモイなどを巡った。


香港では22日、香港トップの林鄭月娥行政長官と会談。さらに中国政府の出先機関である香港連絡弁公室の王志民主任とも会談し、香港の各メディアは次期総統選への布石外交、中国側との腹の探り合いと見て注目度が高かった。

 


台湾の地方首長が同弁公室トップと会うのは極めて異例で、特別待遇ぶりが際立つ。韓、王両氏は夕食を交えながら総統選についても意見交換した可能性が高い。25日には中国政府の国務院台湾事務弁公室(国台弁)の劉結一主任(閣僚級)が、わざわざ北京から深センまで出向き、高雄の農産品などを43億台湾ドル(約150億円)購入する契約を華々しく交わし、韓氏に「両岸(中台)の融合発展」を呼びかけた。

 


対中融和に積極的だった馬英九政権時代、韓氏は非主流派だったが、中台は不可分の領土とする「一つの中国」原則に関する「92年合意」への支持を明言。選挙戦では、独自の対中交流窓口を設け、果物など農産品の輸出や観光客受け入れで「高雄を大もうけさせる」と訴え、当選しているので、公約実現のための訪中だった。ただ、馬英九政権が対中融和で景気浮揚を図りながら失敗した二の足を踏むとの懸念は残る。

 

 


党勢回復して総統選での政権奪還を確実にしたい国民党は、すでに朱立倫・前新北市長、王金平・元立法院長が総統選の出馬を表明しており、高齢の呉敦義党主席が総統候補になることには党内から難色が示されていた。

 


総統選に出馬した場合、支持率が最も高い韓氏が高雄市長一期目1年目を待たずして出馬することに抵抗があるにしても、中国の統一戦略の強力な後押しを得た上で挙党一致で総統候補に躍り出るのか、党内調整が大きな山になる。

 

 

4月5日、韓氏は台北で呉党主席と会談し、7、8日に朱立倫氏や王金平氏とも会談することになっており、韓氏の訪中で中国政府のお墨付きが出たとすれば国民党の総統候補の調整は早期に決まりやすく、各候補の思惑によっては6月ぐらいまでずれ込む可能性がある。

 

 

与党・民進党は蔡英文総統と頼清徳・前行政院長が出馬表明し、世論調査などを参考に今月17日には候補を決定していく。無所属の柯文哲台北市長が出馬するかどうかも含め、総統選で与野党一騎打ちか、三つどもえの選挙戦になるか、判明するのは6月以降になりそうだ。

 

 

 

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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに2016年5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。



中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。

 

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