カギ握る対中依存の温度差 台湾総統選 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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カギ握る対中依存の温度差 台湾総統選
混迷する台湾総統選び 与野党とも激戦
鴻海・郭氏が参戦、韓氏保留 野党・国民党


来年1月11日の台湾総統選に向け、与野党は予備選で候補者選びに腐心し、人気と実力を兼ね備える最終候補選びは混迷している。候補によって対中依存の温度差が激しく、台湾独立か対中傾斜か、有権者にとって振れ幅の大きい選択肢しかない選挙戦になりそうだ。(香港・深川耕治)

 


与野党とも、総統候補を選ぶ予備選レベルから党利党略ばかりが先立ち、候補者のメンツに終始する迷走劇が続いている。

 

昨年11月の統一地方選で大勝した最大野党・国民党では、最大勝因である「台湾の韓流」を巻き起こした韓国瑜高雄市長の総統候補待望論が党内外から根強く、世論調査でも総統候補として支持率トップを独走している(図参照)。だが、市長職就任から間もないため、地方自治体の長としての責務を優先し、出馬に否定的な態度を取り続け、党内をやきもきさせている。

 

 

韓氏の熱狂的な支持者は、実は国民党主流派ではなく、無党派中間層が多く、消極的な民進党支持者も取り込む。熱狂的支持者が出馬を求める6万人分の署名を提出し、台湾紙「中国時報」や親中系テレビ局「中視」「中天」も韓氏の広報宣伝部のような様相だ。

 

韓氏自身も、馬英九前政権時代、非主流派であり、今回の党内予備選でも4月23日、出馬しない意向を表明して国民党の「密室政治」を批判。前回の党主席選では馬英九前総統、呉敦義党主席、●(赤にオオザト)柏村元行政院長など主流派を個別に批判したほどだ。党上層部に「民意にもっと注意を払ってほしい」と苦言を呈するなど、台湾での人気の秘密でもある。

 

 

4月17日、大手家電メーカーのシャープを傘下に持つ台湾の鴻海精密工業の郭台銘会長(写真上)が突如、国民党の予備選に出馬し、総統選で後任候補を目指すと表明した。米アップルのiPhone(アイフォーン)などの製造を請け負って一代で年間売上高18兆円規模の巨大製造業を築き、「エレクトロニクス界のチンギスハーン」「台湾版トランプ」と台湾メディアで評価されるなど強烈な個性とリーダーシップに期待する向きが多い。

 


2020年の政権奪還を狙う国民党は4月24日、必勝を期すために公認候補を決める予備選に韓国瑜氏を参加させると発表し、すでに立候補表明している郭台銘氏、朱立倫・元党主席、王金平・前立法院長らとともに選考対象と見なし、6月以降、世論調査結果次第で候補を絞り込み、7月末までに公認候選を決める方針だ。党内予備選では民意調査を参考にするため、韓氏、郭氏の支持率が左右する。

 

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国民党主流派としては、郭台銘氏を第一指名にし、その後、有権者の支持率が伸びそうにない場合、4年前の総統候補を決める党内予備選で洪秀柱氏が確定した後、朱立倫氏に最終候補を入れ替えた方式で乗り切りたいとの思惑も透ける。

 

韓氏は4月30日、党内での世論調査結果次第で出馬有無を受け入れると表明し、党内主流派の思惑を阻みたい意向だ。

 

しかし、郭台銘氏も韓国瑜氏も旧来の国民党の対中融和路線と軌を一にしており、景気低迷にあえいだ馬英九前政権と同じ轍を踏むのではないかとの懸念材料が多すぎる。

 


とくに郭台銘氏は国際的な経営感覚は卓越しているが、政治は素人。中台の防衛力格差が台湾関係法による米国からの武器輸出でなんとか保っている現状を直視せず、「国防では米国から武器を購入するのではなく、逆に人工知能(AI)などで米国へ投資をすべきだ」と述べるなど、安保問題への基本認識が欠けている。

 

米中関係に翻弄される台湾のトップになれば中国に巨大な工場を持つ鴻海への中国圧力はリスクが高すぎる。中国の統一戦略に巻き込まれ、後戻りできなくなるのだ。

 


韓氏も農産品の売り込みや中国大陸からの観光客誘致で対中交流を促進し、経済成長を実現すると主張するが、巨大な中国大陸マーケットは台湾を呑み込み、台湾農産物の生き残りにマイナスとなる懸念も大きい。


一方、与党・民進党も党内予備選がなかなか進まない。


現職の蔡英文総統の支持率は低迷し、頼清徳前行政院長が予備選への立候補を表明するなど、民進党の足並みは乱れている。

 

 

予備選は、中台の現状維持を保とうとする蔡氏と独立志向が強い頼氏を含め、先月行われる予定だったが、蔡氏が党内調整による自身への候補一本化を主張し、頼氏は拒み、延期。5月末までに候補者による世論調査を行って支持率を比較し、6月5日、民進党の中央執行委員会で総統選の総統候補が決定される見通しだ。


与野党の内紛によっては、無党派の柯文哲台北市長が支持率トップに躍り出る可能性もあり、対中関係のあり方を含め、与野党の総統候補が確定しない限り、先行きが不透明だ。

 

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同性婚を認める米国最高裁判決をきっかけに中華圏では同性婚の合法化をめぐり、賛否が先鋭化しつつある。とくに2016年5月に発足した台湾の蔡英文政権は総統選で蔡氏が同性婚容認を掲げたため、与党・民進党の立法委員(国会議員)らが性的少数者(LGBT)による同性婚推進派の意向を反映する形で合法化に向けた法案準備を本格化させている。香港でも同性愛差別撤廃条例案の制定の動きが強まり、中国でも性の乱れを抑止できず、欧米型の同性婚推進や性交避妊教育の推進が市民権を得始めている。(香港・深川耕治)

 

同性婚を認めている国は22カ国、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は29カ国・地域。アジアでは台湾以外にタイ、ベトナムも国会での法案審議が準備されつつある。

同性婚が認められる国・地域は以下の通り。

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド(2017年より)

登録パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通り。


フィンランド、グリーンランド、ドイツ、ルクセンブルク、イタリア、サンマリノ、アンドラ、スロベニア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、アイルランド、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、オーストラリア、イスラエル、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ギリシャ、マン諸島(英王室属領)、ジャージー諸島(英王室属領)、ジブラルタル(英国領)、マルタ、エストニア


※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーにおいては登録パートナーシップ制度にあるカップルが同制度にとどまることは可能だが、新規にパートナーシップを登録することは不可。


アジアではこれまで同性婚が認められた国ないが、タイ、台湾あるいはベトナムにおいて法案が可決されればアジア初となる。

写真は香港での同性愛差別撤廃条例を通過させるための民主派デモ。



中国共産党一党独裁に反対し、民主化を求めるデモのはずが、2014年7月1日の民主化要求デモでは、先頭に同性愛差別撤廃を求める巨大なレインボー旗が広がり、民主化デモを完全に乗っ取る形になったため、同デモに毎年参加していた、同性愛に反対するカトリック香港教区の陳日君枢機卿らは2016年のデモに参加することを取りやめた。

 

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