欠陥ワクチン、汚職不正に募る政府不信 苦悩する中国政権 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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欠陥ワクチン、募る政府不信 中国政権苦悩
記録捏造で製薬会社幹部逮捕
政府から多額補助金、癒着構造


中国の製薬会社・長春長生生物科技がデータ捏造による子供用の狂犬病ワクチンなどの製造販売をしたとして中国当局は7月22日、経営トップで「ワクチン女王」と呼ばれる高俊芳会長(64)ら15人を逮捕し、医薬品の生産停止を命じて製造認定を取り消した。人命を左右する医薬品生産・販売の不正横行は中国内の医療に関わる根深い利権と癒着、許認可をめぐる監視体制の甘さと処罰の軽さが元凶だ。(香港・深川耕治)


ハッカーも子供への危険警告
許認可と処罰の軽さが元凶


今回、問題が発覚した吉林省長春市に本拠を置く深セン(土ヘンに川)上場の長生生物科技(写真右)の子会社・長春長生生物科技(吉林省長春市)は、記録不正による狂犬病ワクチンやジフテリアと破傷風の混合ワクチンを生産したとして国家薬品監督管理局から生産停止を命じられ、親会社を含む幹部15人が逮捕された。


同社はワクチンをインド、ロシア、エジプトなど約20か国で販売している。



長生生物科技は国有企業の医薬品メーカー子会社として1992年に設立され、翌年、高俊芳会長(写真左)がトップに就任。


逮捕直前まで高氏は吉林省政協委員、長春市人民大会代表も兼任して地方政府、党組織とも密接に関連していた。15年の株式上場後も、医学領域の資格や経験が皆無の高俊芳会長、夫(張友奎氏)、息子(張銘豪氏)の3人で発行済み株式の3分の1以上を保有しており、昨年の富豪調査で一族の資産は51億元(約830億円)と推計された。夫の姉妹2人も大株主ベスト10に入っており、放漫な家族主義経営が腐敗の温床となったと言える。


とくに国有企業の子会社を民間企業にして利権を拡大しようとした主要メンバーは、高俊芳会長、韓豪君氏、杜偉民氏の三人で、ネット上では「ワクチン三巨頭」と表現され、とくに高俊芳氏は「ワクチン女王」と称されている。



高俊芳会長の息子、張銘豪氏写真右)は長生生物科技の副会長として潤沢な資金を湯水のように使い、レーシングチーム「銘豪」を結成して上海サーキットや珠海サーキットでレーサーとして派手にレースをする姿が紹介されており、その夫人(隋嘉琪氏)も中国版ツイッター「微博」で超豪華な自宅、高級車、高級化粧品、ブランドファッション、自家用ヘリまで紹介し、奢侈な生活ぶりが中国眼メディアや香港各紙でも紹介され、批判を浴びている。


吉林省当局は、国有企業の子会社だった同社が民間企業になる過程での腐敗問題があるとして汚職捜査を進めている。


今後、党幹部の利権と直結している国有企業問題の一角にメスが入るのか、医療問題での政府不信が高まる中、各派閥の権力闘争とも深く関わるため、今後の動向が注目される。


国家薬品監督管理局は、狂犬病ワクチンに関する同社の製造免許を取り消し、未使用ワクチンの回収を行っているが、同社や湖北省武漢市の製薬会社が製造販売した三種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)が山東省や河北省、重慶市に65万本が流通し、子供など50万が接種したとされ、重慶市酉陽県では7月24日、当局への陳情が行われる(写真左)など、幼児のいる保護者から強い不満が上がっている。



問題は、これまで政府が無料で国民に提供するワクチンと自費で接種する水ぼうそうや狂犬病のワクチンが2016年から政府の制度改正で各地方政府の疾病コントロールセンターが一括管理することになり、巨大な利権空間が生まれたことだ。


各地方政府の疾病コントロールセンターは、かつて新型肺炎(SARS)が中国内を席巻した際、防疫のための砦として活動することで期待と信頼を得てきたが、今や、腐敗、汚職の巣くつになりつつある。




中国メディアの報道によると、とくに長生生物科技は各地方政府の疾病コントロールセンターの管轄職員に賄賂を提供し、「会議費」「サービス推進費」という不明朗な名目での賄賂用経費が2017年は前年比28倍のペースで跳ね上がる異常な経営実態となっていた。



昨年、政府から受け取った補助金は約4800万元(7億8千万円)で前年比で10倍以上の増加。2002年には香港にも支社登録を試みたが、04年には取りやめている。



香港紙「蘋果(りんご)日報」によると、長生生物科技有限公司は中国本土の裁判記録から少なくとも5件の収賄事件で有罪判決を受けている。



昨年8月の河南省法院での判決では、同社から河南省寧陵県の検疫センター長に16万4千元(1元=16円)をワクチン接種の見返り料として支払われ、同センター長は懲役8年の実刑判決で投獄。


水ぼうそうのワクチンの場合、1回5元、狂犬病ワクチン接種の場合、一回あたり20元を支払う換算だったとし、同様の賄賂は広東省湛江市、福建省政和県、安徽省利辛県などでも行われたとしている。



中国系香港紙「文匯(わい)報」も、2001年から17年の間で長生生物科技と子会社の長春長生生物科技が収賄事件に関わる裁判は12件に上り、同社の営業担当者と地方都市の医療関係者との間でワクチン接種に関する優遇措置を受けるために賄賂による交渉を行い、安徽省、河南省、福建省、広東省の四省に集中していると報じている。


その一方、2013年に中国製薬企業管理協会から同社ワクチンが中国製薬業十大ブランド品に認められ、「中国最有力製薬企業100」にエントリーされるなど、自社評価を対外的に高めたい意向が透けて見える。


中国共産党に忠誠を尽くすスタンスを示すため、今年6月29日に同社内の党委員会の記念祝賀会も盛大に開き(写真右=中央が高俊芳会長)、党組織とも密接であることを対外的に示していた。


今月初めに山東省で開催されたインフルエンザ対策シンポジウムでは主催の山東省予防医学学会などと共に共催として同社が単独で入るなど蜜月ぶりを示していたが、今月5日に調査の手が入り、幹部15人が逮捕された。

また、同社製造の乳幼児が接種することが義務づけられている問題のある三種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風混合ワクチン)二十五万本以上が昨年10月に山東省に流通し、21万5千人以上の子供が接種を受けたことが判明。罰金344万元(約5500万円)を支払うだけの軽い処分で終わったこともネット上では「国内産のワクチンはまったく信用できない」「国家はわれわれを愛しているのか」と問題視され始めている。


同社の公式ウェブサイトは7月23日午前、ハッカー攻撃に遭い、トップページには看護師からワクチン接種を受けている男の子が我慢している画像に「やめろ 祖国の花(子どもたち)に会わせる顔なし」(写真右)との文字が書き込まれた。その後、削除されたが、幼児を持つ親たちの不満の矛先は習近平政権にも向かいかねず、憤怒は収まりそうにない。

7月22日、李克強首相は「断固として逸脱した犯罪行為を取り締まり、犯罪者を厳格に処罰する」と述べ、国を挙げて調査チームを設置し、徹底調査と責任追及に乗り出すことを明らかにした。


アフリカ訪問中の習近平国家主席も7月23日、外遊先から同社ワクチン問題に対して「性質は劣悪で目を背けたい惨状。医薬品の安全性を徹底させるのは政府と共産党の責任だ」と異例の「重要指示」を出し、さらなる指導部批判にならないよう沈静化に躍起だ。



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