親中派与党、選挙延期で惨敗回避も 香港立法会選 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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選挙延期で惨敗回避も 香港立法会選
威圧屈せず代理候補選定 民主派
安全第一、延期論で牽制 親中派

 

香港で9月6日に投開票される立法会(議会=70)選挙に向け、7月31日、立候補が締め切られ、選挙管理委員会が民主派のどの候補を立候補資格剥奪するのか、基準や理由に注目が集まっている。香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)施行で親中派を除く有権者の林鄭月娥政権への不信は増大。昨秋の区議会選の与党・親中派惨敗を繰り返さないように新型コロナウイルスの感染拡大を大義名分に選挙活動の制約を強め、行政長官不信任と親中派敗北回避への最後の一手として選挙延期論も浮上し、強まっている。(香港・深川耕治)

 

活動制限、“コロナ選挙”の様相

選管のさじ加減で立候補失格も

 

▲2016年に行われた前回の香港立法会選挙での開票風景

 

7月29日付の親中系香港紙「星島日報」は一面トップで林鄭月娥行政長官の諮問機関・行政会議が7月28日、9月6日投開票の香港立法会選挙を新型コロナウイルス感染拡大による公衆衛生上のリスクと選挙実施の公平性の立場から1年延期することを内定したと報じた。

 

林鄭行政長官が超法規的措置が可能となる「緊急状況規則条例」(緊急法)を発動し、1年の延期を決めるとしているが、行政会議の出席者からは選挙1年延期について異論は出なかったとしている。


選挙が1年延期されることで現任の立法会議員(任期4年)の任期1年延長を行う必要があるが、香港基本法第69条と立法会条例の例外として次期立法会議員の任期をどうするかを含め、全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会で法改正が認められれば延期が可能となる。

 

▲香港での新型コロナ感染拡大は7月に増え、連日、100人を超える新規感染者が出ている。写真は香港島・上環の香港政府庁舎1階


香港の立法会条例では行政長官が選挙期日の延期を決断できるが、14日以内の実施しかできず、1年延長は現行の条例ではできない。親中派の大御所、曽鈺成・前立法会議長は、行政長官の権限で超法規的に適用できる「緊急状況規則条例」を使って半年から1年延期すべきだとの意見を繰り返し吹聴。中国全国人民代表大会(全人代)常務委員の譚耀宗氏も「一年延長すべきだ」と主張するなど、立法会のあり方に精通するベテラン親中派の提言をあっさり飲んだ形だ。


ネットメディア「香港01」は28日、香港政府が近く選挙延期を決め、8月初旬にも発表して立候補受付は来年に改めて行うと報じ、蘋果日報や香港経済日報も最長で1年延期するとの見方を伝えていた。

 

▲香港立法会選挙に立候補している親中派最大政党の民主建港協進連盟(民建連)の候補者たち


立法会選は立候補受け付けが7月18日から始まり、31日に締め切られた。香港政府としては選挙戦が本格化する前に延期の可否を最終決定するしかなく、孫子の兵法のように「戦わずして勝つ」には政情が親中派に少しでも改善できる可能性のある1年後に延期して立て直しを図りたい意図が透ける。


香港は当初、新型コロナの感染拡大を抑え込んでいたが、7月に入って市中感染が広がり、1週間以上、連日100人を超える新規感染者が確認されており、政府は対策強化に追われている。29日からは公の場で集まることができる人数が2人までに制限され、飲食店内での食事も全面的に禁止されて緊急事態宣言下の状況に逆戻りしたような状況だ。これでは通常の選挙活動、集会ができず、公衆衛生上の観点と選挙の公平性の観点から選挙延期の大義名分になりやすい。

 

▲香港立法会選挙に立候補している民主派候補たち


昨年10月、デモ参加者のマスク着用を禁じる「覆面禁止法」施行でも緊急法が発動されており、「政府の都合に良い緊急状況規則条例だ。コロナという公衆衛生を口実にした政治的な延期決定」(民主派の公民党)と指弾し、提訴して司法判断を仰ぐ可能性を排除しないとしている。


シンガポール(総選挙)や日本(東京都知事選、沖縄県議会選挙など)ではコロナ流行の中で選挙が行われており、予定通りの投開票であれば、親中派以外の有権者に不信を増幅させている逆風下の与党に圧倒的に不利な状況での選挙となる。香港政府が苦し紛れと取られる形で直前に緊急法を使って「異例」の形で一年延期することへの道義的責任や国際世論の厳しい眼をどうかわすか、注目される。


民主派は7月11、12日に予備選を実施し、予想を超える約61万人が候補を選出。直接選挙枠(35議席)で23議席以上(前回選挙は19議席獲得)、業界ごとに投票する職能枠(35議席)で12議席以上(同11議席)獲得を目標にし、初の過半数奪取を目指す。財政予算案を否決して行政長官を辞任に追い込む戦略だ。一年後に選挙が延期されても戦略は一貫して変わらない。

 

▲香港の選管からの質問状の内容を説明する急進勢力「抗争派」の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏


民主派は急進勢力「抗争派」の黄之鋒氏らも立候補しているため、選挙管理委員会のさじ加減で立候補停止処分を受けるケースも想定し、代理候補も準備。民主建港協進連盟(民建連)など親中派はコロナ対策による安全第一を最優先に選挙延期も容認。香港政府も、選管が立候補剥奪を乱発することで国際世論の厳しい眼にさらされないよう選挙延期による仕切り直しを望んでいる。

 

▲香港大学を解雇された戴耀廷同大准教授をウイルス駆除扱いする中国系香港紙「文匯報」

 

民主派の場合、民主派の予備選挙を含め、選挙戦略を主導していた「雨傘運動」の発起人、戴耀廷香港大学准教授が28日、香港大学審議委員会の議決18票対2票の大差で解雇された。戴氏は「解雇は校外勢力が作り出したものだ」と中国政府の圧力を示唆している。中国政府は選挙を親中派に有利に変えていくために民主派の要人を逮捕し、外堀を埋めながらゆっくり時間をかけて優位性を保つ戦略を続けている。


有権者数は昨年の区議選より33万人多い約447万人で過去最多を更新。投票数、投票率が高いほど、浮動票が流れ込む民主派に有利な傾向のため、親中派は区議会選の惨敗を繰り返さないためにも選挙の延期を超法規的に実現したいのが本音だ。

 

▲香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)導入を決めた林鄭月娥行政長官。支持率低迷はレームダック化を深刻化させている

 

香港民意研究所が7月28日に公表した最新世論調査結果によると、林鄭月娥行政長官の支持率は28.9%、香港政府への満足度はマイナス46%、4割以上が零点。同研究所の鍾庭耀総裁は「行政長官の評価は全面否定され、敵意すらあるほどだ」とレームダック(死に体)化する林鄭月娥月が政権の民意を総括している。

 

 

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