脱日本化する「メイソウ」迷走　日中国交正常化５０周年

脱日本化する「メイソウ」迷走　日中国交正常化５０周年
日の丸使い偽装和風路線、国賊批判も　名創優品（メイソウ）

日中国交正常化から９月２９日で５０周年を迎える。両国の産業界のパワーバランスも様変わりし、中国国内では日常生活で反日的な動きは少ない。ネット上での反日の言説は手厳しく、先月はペロシ米下院議長の訪台を機に関係が悪化。日本関連イベントの中止が相次いだ。今月に入り、ようやく官製主導で祝賀ムードを演出するが、机上では笑顔で握手、机下では蹴り合う隣国関係が続きそうだ。

机上は笑顔、机下は蹴り合い
若者は親日、ネットは反日

▲中国雑貨店大手の名創優品（メイソウ）の店内。来年春までに日本的な表現のロゴは完全になくなる

日中関係の険しい現状を産業界で象徴する出来事が８月１８日、明らかになった。
　

「海外展開を強化した2015～18年に日本のデザイナーブランドとして宣伝してきたことが（中国の）消費者の感情を傷つける間違った戦略だった。日本らしさを取り除くために脱日本化する」。

▲名創優品は中国広東省広州出身の葉国富CEO（写真右）と共同創業者の日本人デザイナー･三宅順也氏＝名創優品の公式ウェブサイトより

▲香港での株式上場のためのPRで香港を訪れた名創優品の共同創業者の三宅順也氏

中国の雑貨店大手、名創優品（メイソウ＝総本部は広東省広州市）が日本風の店づくりについて、SNS上で謝罪声明を出す事態に陥った。7月下旬にスペインの店舗でチャイナドレスを着た人形を「芸妓（日本の芸者）」とインスタグラムで紹介したことをきっかけに「精日（精神的に自らを日本人とみなす）ブランド」「断固不買」「二度と行かない」「中国国内の店舗はすべて閉鎖しろ」など批判が噴出。

▲スペインに進出した名創優品はスペインの店舗で販売されるチャイナドレス姿の人形の説明文に「芸伎（日本の芸者）の衣装」と誤表記。現地で翻訳ミスした業者との契約を破棄したが、親日偽装がこんな形で発覚し始めた

巧妙な日本ブランド利用で急発展、批判で日本と離別宣言

名創優品の共同創始者は日本人の三宅順也氏。同社のロゴが赤地に白字で「メイソウ」と片仮名で書いたロゴを使うなど商品自体もユニクロや無印良品、ダイソーの模倣だと揶揄されるほど似ている。

▲中国雑貨店大手の名創優品の店舗内

同社店舗でアルバイト経験のある人物が同店内でクラシックや英語曲だけを流し、中国語曲を流すことを禁止しているとする微博の投稿がネット上で拡散し、火に油を注いだ。

▲中国版ツイッターの微博（ウェイボー）で名創優品でアルバイトしていたことがある男性が昇進試験で店舗内で流す音楽は中国語ソングであってはならないとの回答が正解だったことを告発。英語曲やクラッシック音楽を推奨していたという

▲海外での企業締結式で日本国旗を使って行う名創優品の葉国富ＣＥＯ（左）。「偽装日本風」の経営戦略だと中国内外で批判が強まった

▲海外での契約締結式では、日本国旗を示しながら記念撮影する名創優品の葉国富ＣＥＯ（左から４人目）ら

北朝鮮にも一時進出し、撤退

同社を一代で立ち上げた創業者の葉国富CEOは日本の100円ショップの中国版として「日本らしさ」を全面に印象づける形で中国内からアジア、欧米へ店舗数を急速に拡大。新規に進出した国々、たとえばギリシャ、ルーマニア、ブルガリアで契約する際は日本国旗を使って記念撮影するほどで、14年に池袋店を皮切りに日本にも進出。

北朝鮮の平壌市内にも店舗契約したが、2017年7月末には平壌店がいったん閉店した。北朝鮮当局との間で契約解消され、「進化」という店舗名でリニューアル。18年以降、外国人観光客も入店できるようになった。中国や世界の市場シェアでは、すでに無印良品を追い抜いていた同社には「偽装和風路線」の代償で暗雲が立ち込め、迷走状態が続く。

▲中国雑貨大手の名創優品はスペイン店の商品をインスタグラムで誤記したことを謝罪

20年、ニューヨーク証券市場へ上場したが、米国株は７５％近く急落。21年末で日本国内店舗は完全撤退した。7月13日、香港に上場したばかりだが、スペイン店の問題で株価は10％以上下落し、海外進出計画も座礁しかかっている。約100カ国・地域に5千店以上を展開するほど急成長してきたが、来年3月末までに看板や内装から「日本らしさ」を取り除くと表明した。

▲南京事件で戦犯として処刑さらた元日本軍人４人の位牌を南京市内の玄奘寺に奉納されていたことがネット上で大きな問題に

▲南京市内にある南京大虐殺記念館には犠牲者３０万人と表記。日本側は３万人としている

中国では先月、1937年の南京事件で戦犯となって処刑された旧日本軍人4人の位牌が南京市内の玄奘寺に奉納されていたことがネット上で猛反発され、南京市当局は尼僧を逮捕し、関係者を処分。日本の盆踊りや夏祭りをイメージした各地の企画が取りやめに追い込まれた。

▲南京市内にある玄奘寺の総責任者である伝真法師

和服連行、弾道ミサイル落下

江蘇省蘇州市では日本の人気漫画ヒロインのコスプレをして浴衣姿でいた中国人女性が公共秩序騒乱容疑で公安当局に連行される事件もSNSで拡散された。日本の漫画やアニメが大好きな中国人の若者からは連行された女性に同情する意見が多い一方、浴衣を着た女性がPCR検査を断られるケースも発生している。

▲中国江蘇省蘇州市内で日本の漫画で人気のある浴衣姿のヒロインと同じコスプレをして警察に連行された女性。動画などで一部始終を紹介している

▲北京市内では中国国際映画祭の一環として日本の最新映画４本などを上映

先月はペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、8月4日、台湾周辺で軍事演習を実施していた中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域（EEZ）内に落下。反日感情がSNS上で高まったが、日本製品や日本文化に好意的な中国人はなお多い。今月からは北京や上海などで国交正常化50周年の記念イベントが行われ、10月中旬からの5年に一度の党大会で三期目入りが確実視される習近平総書記としては、岸田文雄首相との電話会談実現をめざし、日中関係の安定を優先させたい配慮がにじんでいる。

和装コスプレ女性を連行　中国蘇州　「日本街」各地で誕生、反発も