慈善団体から民主派あぶり出し 香港 記者協会もターゲット | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

慈善団体から民主派あぶり出し 香港
民主派の記者協会、学生記者勧誘で保安局マーク

「一国二制度」が形骸化する香港とマカオで民主派を徹底排除する動きが鮮明になっている。香港では教育界、法曹界の団体が親中色に一変し、慈善団体の税務再調査による民主派あぶり出しも始まった。9月12日に投開票されたマカオ立法会選挙では民主派議員ゼロとなり、12月の香港立法会選も民主派の立候補、議席取得は困難になっている。(深川耕治)

 

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昨年6月末に国家安全維持法(国安法)が施行後、香港では言論や政治活動の自由が奪われつつある。香港紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」が6月に廃刊に追い込まれ、民主化デモを主催してきた民間人権陣線が解散し、民主派の活動空間は国安法の締め付けで八方塞がりになっている。

▲香港教育専業人員協会(教協)は9月11日、特別会員代表大会を開き、正式に解散を決定した

 

▲解散後、教協の事務所を去る馮偉華会長(中央)ら


中国官営メディアから「香港の癌を駆除せよ」「違法政治活動を扇動して混乱させ、学生を洗脳している」と断罪されて解散を余儀なくされていた香港民主派の香港教育専業人員協会(教協)が9月11日、会員代表による多数決(賛成132、反対6、棄権2)で正式解散を決定。1973年に創設され、約9万5000人の会員が加入する香港最大の教員労働組合は幕を閉じた。

▲2018年5月、香港教育専業人員協会(教協)の創立45周年の祝賀大会でスピーチする林鄭月娥行政長官。わずか3年余で香港政府と同協会の関係断絶を公表


長年、香港の民主化運動に積極的な役割を果たし、2018年5月、教協の創立45周年の祝賀大会では林鄭月娥行政長官がスピーチする親密さだったが、2019年の大規模デモでは中高生を含む学生たちは教協に賛同する若者たちが多く含まれ、中国当局が激怒。わずか3年で香港政府は関係断絶した。9月12日、親中派で結成した新たな教職員組合「香港教育工作者工会」が発足。12月の立法会選への出馬準備も進めている。

 

▲▼9月12日、親中派で結成した新たな教職員組合「香港教育工作者工会」が発足した

 

▲8月24日に行われた香港弁護士会の理事改選(5人)のすべてが親中派。民主派はいなくなり、親中派が主導することになる

法曹界も中国当局の圧力で親中化が進む。

 

香港政府が公認する香港弁護士会は民主派と親中派が入り乱れる構図で理事会(20人)のうち、民主派6人、非民主派9人で残り5人の理事改選が8月24日に行われ、すべて非民主派が当選。

 

▲香港弁護士会(香港律志会)の歴代会長の名前が刻まれたボード

 

理事改選前に中国共産党機関紙「人民日報」が「政治的偏りがあってはならない」と批判、林鄭月娥行政長官が「政治的な中立を保てないなら教協と同様、関係を絶つ」と表明したため激震が走り、改選の投票で存続最優先で非民主派票約2000票、民主派票約1000票で親中派が圧勝した形だ。

 

▲記者会見する支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)の幹部メンバーたち

 

▲支連会の幹部である李卓人氏(左から4人目)、何俊仁氏(左から3番目)はら次々と逮捕され、有罪に


9月8日、香港警察は天安門事件犠牲者を追悼する支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)の幹部4人を逮捕。警察側が「外国の代理人」と指弾し、国安法に基づいて収入源を明らかにするよう求めていたが、支連会側は資料提出を拒み、鄒幸●(杉の木を丹に)副主席ら4人が国安法違反容疑で拘束された。

 

▲香港で返還後も毎年6月4日に行ってきた支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)主催の天安門事件追悼キャンドル集会。昨年からコロナ問題で開催されず、組織解散は時間の問題に(深川耕治撮影)

教育団体、法曹界、政治団体の次に香港政府がターゲットにしているのは慈善団体だ。香港には約9500の慈善団体が政府に登録されており、免税を隠れ蓑に民主派への資金源になり得ると見て、国家安全維持法(国安法)に抵触する場合、資格取り消し処分になるとして9月13日、税務条例を改正し、税務再調査であぶり出しを開始している。

慈善団体には学校や宗教団体、社会福祉団体が入っており、親中派政党・民建連の陳克勤立法会議員は「慈善団体は根本的に政治と関与してはならない」と支持し、中間派で香港行政会議メンバーである湯家◆(馬ヘンに華)弁護士も「慈善団体は香港で厳格な規則管理があり、政治的なマネーロンダリングは許されない」と話している。

▲9月14日付の親中系香港紙「大公報」1面トップ


メディアへの締め付けもさらに強まっている。

9月14日付の親中系香港紙「大公報」1面トップには民主派のジャーナリストが多く所属する香港記者協会が中高校生に学生記者として大量に入会させようとする行為をしていたとして国安法違反の疑いがあるとする鄧炳強保安局長のインタビュー記事を報じた。

記者協会側は「学生会員は13%しかおらず、しかも正式会員ではない」と否定しており、執行役員11人のうち、1人だけが学生記者で9人が正式会員(うち8人はメディア機構所属)となっている。

陳朗昇記者協会主席は「正式会員は約400人で学生会員が60人不足しているので昨年の母の日に13歳の学生記者を募る活動をしていた」と弁明するが、当時、大規模な民主化デモが行われている最中での学生記者募集活動だっただけに香港当局には国安法違反の疑念を抱かせる行為に映っている。大公報の報道では、陳朗昇主席が警察の記者会見で抗議行動を展開し、当局を批判する帽子をかぶっている写真が掲載され、やり玉に挙がっている。

 

▲9月15日付の親中系香港紙「大公報」2面トップ

「大公報」は翌9月15日付でも記者協会側の弁明に論駁。陳朗昇主席の政治的非中立の言動や各学校で新聞講座を行うことで勧誘したり、学生記者を含め、同会員の記者活動が民主派に大きく加担していることを断罪している。

香港紙「蘋果日報」の廃刊に続き、中国共産党に批判的な香港メディア組織の徹底排除に向け、香港保安当局が動きを強めそうだ。

 

▲9月12日に投開票されたマカオ立法会選挙。1999年12月、ポルトガルから中国に返還されたので、ポルトガル語表記もある

 

▲9月12日に行われたマカオ立法会選挙後の選挙管理委員会の記者会見

香港に隣接する中国の特別行政区マカオでは9月12日、立法会(議会・33議席)選挙が行われ、親中派が30議席を占め、3議席が中間派で民主派は議席ゼロとなった。マカオ当局が「愛国者」と認めない民主派候補の立候補資格を取り消したためで、1999年にポルトガルから中国に返還されて以降、初めて民主派皆無の議会となった。

12月19日に行われる香港の立法会選挙(70議席から90議席に増員)でも、民主派候補の立候補自体が「愛国者」と認められずに資格取り消しになるケースが濃厚で議席取得が極めて困難。民主派排除は立法府だけでなく教育界、法曹界、言論界、財界で急速に進み、来年3月の行政長官選挙で「愛国」こそ正義とする親中派独走のまま林鄭月娥氏の再選を盤石にしようと外堀を完全に埋めている。

 

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