先月、稀代のヒットメーカー筒美京平先生が亡くなられた。その折りに宏美さんが、「私は筒美先生に80曲くらい書いていただいた」と仰っていた。それまで、もちろん筒美作品が多いことは知っていたが、何曲とかあまり考えたことがなかった。その他の作曲家で宏美さんにたくさん曲を書いているのは誰なんだろう?筒美先生のことがキッカケで、そんなことを考えるようになった。

 

 という訳で、ここは一念発起して、宏美さんの楽曲の発売順の一覧表作りに取りかかった。エクセルデータにしておけば何かと扱い易い。ほぼほぼそれが完成を見、作曲家ごとの曲数が明らかになったので、今日はそれを発表したい。

 

 もうとうにそんなことはやっているよ、という方には申し訳ない。ご笑覧いただければと思う。やってみると、数え方に意外と悩むことがあった。私なりに考え、今回の数え方のルールは以下に従った。

 

①基本的にレコーディングされているオリジナル曲に限った。

 

②ライブ・アルバムであっても、『雪物語』「Music Lovers」のような、宏美さんのための書き下ろし作品はカウントした。

 

③カバー作品であっても、「すみれ色の涙」「思い出さないで」のように、シングルA面となった曲については、オリジナル作品と同様に扱った。

 

④作曲者に複数の名がクレジットされている場合には、2人なら0.5曲、3人なら0.33曲、という風にカウントした。

 

「Love is alive」「虹を架けよう」等、他のアーティストやオムニバス、コンピレーションのアルバムに収められた作品であっても、知り得る限りそれも加えた。

 

「Wishes」「深川 その1/その2」のように、アルバムの中で2回に分かれて収録されているものは、2曲と数えた。

 

「パンドラの小箱」(リプライズ、バリエーション)の扱いは迷ったが、今回はカウントしなかった。

 

⑧セルフカバーも、もちろん再度のカウントはしない。

 

「友達の詩」は、中村中さんのシングルよりも収録アルバムの『Natural』リリースの方が早いため、オリジナルとしてカウントした。

 

 では、いよいよベスト20の発表に入りたい。いつもと違うのは、私の独断と偏見の入る余地がないことである。

 

 いきなり同数で19位が4人いる。

 

💿19位 玉置浩二(4曲)

 ブレイク前の玉置さん、『私・的・空・間』に3曲と、「愛という名の勇気」のカップリング曲「未来への伝言」を書いている。

 

💿19位 滝沢洋一(4曲)

 『戯夜曼』の印象が強いが、「I LIKE SEIJO」も滝沢さんの作品。

 

💿19位 あすなろ(4曲)

 80年代初頭のアルバム曲やB面曲を担当。『緋衣草』のタイトルチューン「満潮」などもそうである。

 

💿19位 和泉常寛(4曲)

 シティポップスはお得意の分野。「Dance with a loneliness」をはじめ、『Me too』に4曲提供している。

 

💿18位 木森敏之(4.5曲)

 火曜サスペンス劇場の初期主題歌4曲+「逃亡者」は、残念ながら40歳の若さで亡くなった木森さんの作品。端数は、例のジョン・スコットさんの名もクレジットした「聖母たちのララバイ」のため。

 

💿15位 中崎英也(5曲)

 15位も3人いる。小柳ゆきなどをプロデュースした中崎さんは、「シンデレラ・ラッシュアワー」をはじめ、『cinéma』『yokubari』に5曲提供している。

 

💿15位 鈴木キサブロー(5曲)

 「酒場でDABADA」(沢田研二)、「DESIRE -情熱-」(中森明菜)などで知られるキサブローさんは、「檸檬」両面や『夕暮れから…ひとり』の曲を担当した。

 

💿15位 さだまさし(5曲)

 宏美さんが「生き神様」と仰ぐまさしさんだが、意外にも提供楽曲は少ない。現在歌われている「残したい花について」は、一般の方からも好評。

 

💿13位 CAT GLAY(6曲)

 13位も2人いる。『FULL CIRCLE』『Shower of Love』の2枚のプロデュースに関わったCAT。「BIRTH」「DREAM ON」「たったひとつだけ」どれも大好き。私はこの路線も捨て難い。 

 

💿13位 馬飼野康二(6曲)

 『忍たま乱太郎』などアニメ音楽でも活躍する馬飼野さん。「万華鏡」「夏に抱かれて」の作曲者だが、これも驚くほど少ない。アルバム曲でも「この広い空の下」など名曲があり、もっと書いていただきたい方だ。

 

💿12位 田村武也(8曲)

 テイチク移籍以降、アルバムに1曲ずつくらいのペースで曲を提供している。これが皆素晴らしい!隠れた名ソングライターである。「天気雨」「シアワセ色」「真夏のサクラ」等、宏美さんもステージで取り上げている。今後ベストテン入り間違いなし❣️

 

💿11位 大野克夫(10曲)

 大野先生のシングルは意外にも「悲恋白書」のみ。70年代のアルバムを中心に名曲を書いた。「ピアノ弾きが泣かせた」は、宏美さんが『阿久悠トリビュート』で再度レコーディング。「今夜のあなた」も大野作品である。

 

📀8位 浜田金吾(濱田金吾、11曲)

 ここからがベストテンだが、8位も3人いる。まずは「愛の生命」「摩天楼」の浜田さん。しばらく間を置いて「聞こえてくるラプソディー」でもシングル楽曲を書いている。シンフォニックライブでも歌われた、『ハムレット』の中の名曲「世界の果てへ連れてって」も浜田さんの作品だ。

 

📀8位 川口真(11曲)

 川口先生もシングルは「熱帯魚」だけだ。だがアルバムでは、70〜80年代にまたがって「学生街の四季」「幸福号出帆」「スリー・カラット・ダイヤモンド」「今夜だけは」と、人気ナンバー目白押しである。

 

📀8位 萩田光雄(11曲)

 デビュー以来、編曲を中心に宏美さんの成長を見守ってきた萩田先生。シングルこそないものの、要所要所で名作を書き下ろしている。「美しい夏」「ヴェニスの花嫁」「自鳴琴」そして「やさしい妹へ」❣️

 

📀5位 坂田晃一(14曲)

 5位もお三方が同数と、大接戦。坂田さんは、『組曲・雪物語』の中の楽曲をオリジナルとしてカウントしたために、ベスト5にランクイン。実際、ひとり芝居を感動的なものにした名曲ぞろいだ。他には「夜空で星が生まれるように」の2曲と「悲しみのほとり」が坂田作品。

 

📀5位 奥慶一(14曲)

 事務所独立後の華やかなヒロリン復活の立役者である。「決心夢狩人」をはじめ、『戯夜曼』『cinéma』にキラキラした曲を多く提供した。「最初の恋人達」も奥作品。実は独立前から『私・的・空・間』に編曲者としてすでにその名がクレジットされている。

 

📀5位 山川恵津子(14曲)

 同じく独立後の宏美さんを支えたエッちゃん。「好きにならずにいられない」は今もステージに彩りを添える佳作だ。「横浜嬢」「星に願いを」「カサノバL」など艶やか且つ痛快なナンバーが多い。今世紀に入ってもポツリポツリと作品を提供している。

 

📀4位 三木たかし(15曲)

 「思秋期」は、リリースから40年以上経った今でも宏美さんの代表曲の一つであり、他のアーティストにも歌い継がれている。世代を超えてネットをバズらせてもいるそうだ。他にもシングル「あざやかな場面」を筆頭に、「パパにそむいて」「ランボルギーニが消えて」「そばに置いて」「未成年」など、ファンなら忘れられない名曲ぞろいだ。

 

🥉3位 穂口雄右(18曲)

 見事トップ3入りを果たした穂口先生。シングルは「二十才前」「Life」だけだが、初期のアルバムに人気曲が多い。「ささやき」「グッド・ナイト」などはコンサートでも歌われた。個人的には「ひとりぼっちの部屋」が穂口先生のピカイチである。

 

🥈2位 樋口康雄(22.5曲)

 胎教・育児3部作のオーケストレーション、指揮を務めた樋口さん。大作曲家とのペアリングで0.5曲ずつ稼いで堂々の第2位。アニメ『ママは小学4年生』の主題歌「愛を+ワンこの愛を未来へ」は、アニメ主題歌史上類例を見ないフル・オーケストラの名曲。他にも完全なオリジナル曲で、「きのうの夢/未来の夢」「家族」「真珠貝の歌」「街はバラード」など、心を打つ楽曲が多い。

 

🥇1位 筒美京平(7977曲)

【訂正 2021.9.14〜15 申し訳ありません。カバー曲「甘い生活」をオリジナルとしてカウント、さらに「女優」をダブルカウントしていました。お詫びして訂正いたします。】

 皆さんの予想通り、後続をぶっちぎって断トツの1位は、やはり筒美先生だった。デビュー曲「二重唱」から「想い出の樹の下で」までは8曲連続で両面とも筒美作品。その後も断続的に「シンデレラ・ハネムーン」「女優」「素敵な気持ち」など、現在でもプログラムを賑わわせる曲たちがズラリと並ぶ。最後の「許さない」まで、シングルA面だけでなんと18曲を数える。

 

 先生はアルバム作りにも積極的に関わられた。Dr.ドラゴンを名乗って陣頭指揮を執った『パンドラの小箱』、宏美さん初の海外レコーディングでご一緒にロサンゼルスに乗り込んだ『Wish』。この2枚は、全曲筒美作品である。

 

筒美京平先生と宏美さん

 

 今回はカバー曲はカウントしていないが、宏美さんが昨年リリースした『Dear Friends Ⅷ 筒美京平トリビュート』は、筒美先生も聴くことができ、たいそう喜んでおられたそうだ。

 

 

 こうして作曲家別に宏美さんの楽曲を改めて概観するのは、興味深いことだった。ベスト20入りした作曲家でも、わずか4曲と言うことは、ほとんどは1〜3曲と言うことである。それだけバラエティに富んだ楽曲に挑戦し続けておられるわけだ。是非また、新しい地平を切り拓き、違った世界を聴かせていただきたいものである。

 

 

P.S.データが揃ったので、近く【作詞家編】、【編曲家編】もアップ予定です。楽しみにお待ちいただければ幸いです。😊