1984年9月、宏美さんは10年近く所属した芸映プロダクションから独立した。テレビ出演もコンサートも激減。10月9日の武道館に於けるカシオペア、スクエアとのジョイントコンサートを最後に、私が宏美さんの生の歌声を聴く機会は絶たれた。

 

 半年間の空白の時を経て、宏美さんのライブを見ることができたのは、翌85年5月3日、代々木公園に於けるスポーツフェアのステージだった。ポニーテールにパンツルック、派手なメイクに、「ああ、宏美さんは自分の足で歩き始めたんだな」と感慨深かったことをよく覚えている。この時宏美さんは、10曲ほどのプログラムのうち、6月発売予定のアルバム『戯夜曼』から5曲披露した。そのラストを飾ったのがこの独立第1弾シングル・「決心」である。歌の内容に比してこの曲のタイトルが若干硬い感じがするのは、事務所から独立した宏美さんの気持ちを、このタイトルに託しているからではないか、と私は勝手に思っている。何か吹っ切れたような歌いっぷりに、宏美さんの「決心」を感じたのであった。

 

 

 また、この曲は売り方も上手かった。カメリアダイヤモンドのCMで、池上季実子さんのバックにまず両A面の「夢狩人」を流した。テニスボールを打った音のような印象的な電子音(?)のパーカッションのアレンジに、それまでの宏美さんのイメージとはギャップのある「♪ 誘われても 抱かれても 夢狩人」という強烈なフレーズ。視聴者の興味を引いておいて、第2弾は宏美さんご本人が出演して「♪ いい男になってね 時間をかけて」とあくまでも爽やかな「決心」を流す。岩崎宏美健在を印象付けるスマッシュヒットとなったのだ。

 

 

 

 私は、「万華鏡」の頃に宏美さんのファンになったので、眞峯氏と同じく「遅れてきたファン」であるが、もし「万華鏡」でファンにならなかったとしても、この「決心」で間違いなく宏美ファンになったであろうと確信している。それくらいこの曲にぞっこん惚れ込んでいるのだ。

 

 私は自分の結婚式に、参加しているバンドに自分がアレンジした「岩崎宏美メドレー〜45回転で抱きしめて」を演奏してもらった。そのラストでは、妻にこの「決心」を歌ってもらった。「♪ いい男になってね 私の隣で」と歌って欲しかったのである。😜ノロケでスミマセン。

 

(1985.4.5 両A面シングル)