1983年を迎え、宏美さんの新曲「素敵な気持ち」が発表された。「聖母たちのララバイ」「思い出さないで」と大きなバラードが続いた後で、軽めのポップスは私たちファンの耳には新鮮に響いた。それまでロングドレス姿でのステージが多かったが、この曲ではパフスリーブに膝丈のワンピース、同じデザインで赤とカラシ色があり、どちらも素敵だった。

 

 

 セールス的には成功したとは言い難いが、宏美さんがこの曲を好きなことは間違いない。1999年の『Never Again〜許さない』、2015年の『My Songs』と、二度にわたりニューアレンジで吹き込み直しているし、毎年恒例のアコースティック・ライブではよく取り上げられている。また、現在行なわれているツアー『残したい花について』(コロナウイルスの影響で休止中だが)では、バックバンドにギターが加わったこともあり、久々にコンサートで聴くことができる。

 

 「素敵な気持ち」は、筒美京平作曲・萩田光雄編曲だが、発表当初からマイケル・ジャクソン&ポール・マッカートニーの「ガール・イズ・マイン」のパクリだ、と指摘されていた。確かに、バックのサウンドはソックリだし、「♪ Because The Doggone Girl Is Mine」というところと「♪ 素敵な気持ち〜」というところは瓜二つ😅💦

 

 

 しかし筒美先生は、流行りの洋楽のサウンドを取り入れつつ、日本人好みのメロディーラインを持ってくるセンスは抜群である。Bメロの「♪ ねえ〜不思議だわ〜」というところからの広がりと高揚感は、個人的にはマイケルの曲を超えていると思う。また、2コーラス終わった後のCメロともいうべき部分の「♪ い〜つ〜も〜」や「♪ そばに来てね」「♪ この〜ままで」では、宏美さんの地声の音域より上のEやE♭を使用し、レコーディングから宏美さんにファルセットで歌わせ、軽やかな雰囲気を演出している。

 

 あと一つ。1コーラス目は「♪ ハートに〜(四分休符)ほらひとつ〜」の「ほら」は軽めに歌っていて、2コーラス目では「♪ ゆっくり〜(八分休符)あーなたへと〜」と「あーなたへと〜」を声を張り上げて歌っている違いが良い。もっとも、近年のライブでは、1コーラス目から「♪(八分休符)ほーらひとつ〜」と歌い上げているが。

 

 いつまでもライブで取り上げて欲しい佳曲である。

 

 

(1983.2.21 シングル)