「好きにならずにいられない」は、宏美さんの39枚目のシングルである。【オリジナル】と断り書きをしたのは、1977年ライブ盤収録の「好きにならずにいられない(Can’t Help Falling in Love)」が邦題としては全く同じで、同名異曲となるためである。シングルとしては「あざやかな場面」以来8年ぶりになる3拍子の楽曲で、スウィングのワルツである。松井五郎×山川恵津子×奥慶一、という『戯夜曼』以来の宏美サウンドの中心トリオによる作品だが、この時期にしては珍しくフェミニンな感じのする作品だ。

 

 

 当時のセールスはオリコン最高位57位と振るわなかったが、ベストアルバムや、節目節目のコンサート(20周年フルサークル、30周年ハピネス、40周年光の軌跡等)には必ずと言って良いほど取り上げられる人気の高い楽曲であるし、宏美さんのお気に入りであることも確かだ。また、『WAGAMAMA』収録のア・カペラver.(編曲:山川恵津子)や、『PRAHA』に収められたオーケストラver.(編曲:野見祐二)なども存在する。

 

 私もこの曲が大好きである。詞の内容も楽曲もとにかくシンプルで解り易い。内容はタイトルそのまんまだし、前サビの上昇型のクリシェもすーっと自然に身体に入って来て、気がつけば口ずさんでいる、そんな歌である。そう、この曲の人気の秘密はそんな流れのスムーズさにあるのかも知れない。

 

 だが、私がこの曲への思い入れが強いのには、もうひとつ訳がある。1984年9月、宏美さんは芸映から独立してスリー・ジーを設立した。その代償として、いわゆる“干されて”、主だったテレビ番組に出演できない、大きなコンサートが開けないといったいった状況に立たされていた。もちろん彼女の実力、キャリアを惜しんでバックアップしてくれる人も多くいたのであろう。翌1985年秋には、『CINEMA SCOPE』ツアーで待ちに待ったコンサートに復帰。そして一定の”禊ぎ”期間が済んだ、ということだろうか。これもわれわれのファン待望の『夜のヒットスタジオ』へのカムバックが1986年6月、ちょうど「好きにならずにいられない」を歌っていた時期だったのである。84年8月の「橋」以来、実に1年10ヶ月ぶりの出演だった。

 

 

 オープニングのメドレーでは、最後に登場して「シンデレラ・ハネムーン」を大人の雰囲気でやや控え目に歌唱。芳村真理さん・古舘伊知郎さんの司会陣、出演者の大歓迎を受け早くもウルウル。さらに、東宝ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』で共に帝劇の舞台を務めた淀かおるさん、毬谷友子さん、安田伸さん、蟇目亮さんがスタジオまで応援に駆けつけてくれたのだ。間奏の時に温かな拍手を送ってくれていた皆さんの笑顔がステキだった。🥰

 

 また、先ほど少し触れたア・カペラver.も、これより5ヶ月後に宏美さんがマンスリーで登場した折りに、着物姿で披露してくれている。こちらもどうぞ。

 

 

 上の動画の中で、古舘さんから「ライオンのコマーシャルに出るためにストレートパーマをかけた岩崎宏美さん」と紹介されている。何と嬉しいことに、そのライオン・オクトシャンプーのCM動画まで上がっていた。感謝、感謝である。もちろんバックに流れるCMソングは、この「好きにならずにいられない」である。

 

 

 時は流れて、1996年12月。娘がお腹の中にいた妻を伴って宏美さんのディナーショーに出かけた。その時のサプライズ曲が、「思い出さないで」とこの「好きにならずにいられない」。ア・カペラver.のトラックを使って歌い始め、途中からSALTのピアノとストリングスが入って来るという、こたえられないスペシャルお洒落な「好きにならずにいられない」。この時、宏美さんとお話しする機会を得た自慢話は、「DREAM ON」のブログをどうぞ❣️😜

 

 今月初めに幕を下ろした『太陽が笑ってる』ツアーでもこの曲はセットリストに入っていた。いつまでも宏美さんのステージを彩る、エバーグリーンの曲であって欲しい。😘

 

(1986.2.5 シングル)