まず、宏美さんの39thシングルと区別するため、タイトルにオリジナルの原題を明記したことをお伝えしておこう。
今日お話しするのは、言わずと知れたエルヴィス・プレスリーの大ヒット曲(1961)。作詞・作曲はJ.D.ワイス、H.ペレッティ、L.クレイトアー。フランスの作曲家、マルティーニ(1741〜1816)の作品「愛の喜び」(Plaisir d'Amourー1980年のリサイタルで宏美さんも歌唱)を元に作られたと言われる。確かに、メロディーラインやコード進行に類似が認められる。ルーマニア出身のソプラノ歌手、アンジェラ・ゲオルギューが歌う「愛の喜び」(伊語版)、エルヴィスの「好きにならずにいられない」の両方をご紹介しておこう。
エルヴィスのオリジナルは、スローな3連バラードで演奏される。内容は、タイトルの通りで、「君に恋をするのを止めることはできない」ということを、言い回しを変えながらリフレインしている。マイナーに転調するパートでは、
♪ Like a river flows
Surely to the sea
Darling, so it goes
Some things are meant to be
つまり「川が海に流れ着くように、運命づけられたものはある」と歌われ、昨日取り上げた「赤い糸」を思い出してしまった(汗)。
宏美さんはこの曲を、1977年の秋のコンサートで、タイム・ファイブとの共演で披露している(タイトルのクレジットは「好きにならずにいられない(Can’t Help Fallin’ in Love)」)。原曲のスロー・ロッカ・バラードから一転、エイトビートのアッパーチューンに変身したアレンジだ。訳詞が山本伊織さん、編曲は前田憲男さん。「♪ Fallin’ in love」と何度も繰り返し、ブラスの合いの手が入るリフレインが印象的だ。
眞峯隆義先生の『岩崎宏美論』では、当時の会報の「誌上実況中継」にこの曲についての記載がないことから、「このCDに収録されている公演日と『誌上実況中継』の公演日が別で、プログラムが一部異なっていたことによるのかもしれない」と推測されている。
私もこのコンサートには参加しておらず、推測の域を出ないが、眞峯先生とは別の考えである。この曲の前半の英語詞の部分は、タイム・ファイブのメンバーだけで歌っているように聞こえる。「♪ 青空に 住みましょう〜」の日本語詞の部分から、宏美さんのソロである。セットリスト中のポジションや、タイム・ファイブのコーラスのみの部分が比較的長いことから考えて、私はこの曲はインテルメッツォ(間奏曲)的な扱いで(そのためプログラムや誌上中継では割愛された)、宏美さんは衣装替えをして曲中で登場された可能性もあるのではないか、と思う。この辺り、コンサートに参加された先輩諸兄のフォローをお願いします!
Bメロで登場した宏美さんは、高音部分では後年のものとは若干声質の違いを感じさせるファルセットも使用している。Bメロ最後の「♪ ふたりだけで」からAメロ「♪ 愛するすばらしさ〜」に戻るあたりは、声はよく伸びるしもう堂々たる歌いっぷりで、聴いていて思わず唸ってしまう。歌詞を間違えかかるのもご愛嬌で、可愛らしい。😍
今日この曲を取り上げて気づいたのは、『ROYAL BOX』のこの曲の歌詞カードが途中までしか記載がないこと。😭あれ?と思ってオリジナルのLPの方を見たら、ちゃんと書いてあった。素晴らしい企画アルバムだけに、ちょっと惜しい校正ミスですね。
私のバンド仲間で同じくトランペットパートのAちゃんは、結婚式で主賓挨拶を頼まれる機会が多く、みんな話なんか聞いちゃいないから、最近はこの「Can’t Help Falling in Love」をトランペットで吹くことにしてるんだそうな。それもいいな。8月に部下の結婚式があるので、練習しようかな。😜
(1977.12.20 アルバム『ラブ・コンサート・パート1 〜新しい愛の出発〜』収録)