昨日、2020年8月15日。75回目の終戦記念日は、われわれ岩崎宏美ファンにとって、別の意味で忘れられない日となった。2月23日の埼玉会館でのコンサートを最後に途絶えていた宏美さんの生の歌声を、半年ぶりに聴くことができたのだ。アコースティックライブの長年のコラボレーションで、青柳誠さん(Pf)、古川昌義さん(Gt)、そして宏美さんのお三方は阿吽の呼吸である。乾き切った心身の隅々まで、宏美さんの歌声が沁み渡っていった。

 

 

 東京 COTTON CLUB は、検温・消毒の徹底、観客数を半分以下に減らし、ドリンク・フードメニューの限定等の感染症対策の取り組みがなされていた。テーブル席も全てステージ向きで、対面にならないよう配置。スタッフや客、ましてアーティストに感染者が出ては大変だし、一方で商売として成立しなければならない。名古屋ブルーノートの件を持ち出すまでもなく、店側も必死であろう。

 

 私は、経済的理由(おこづかい限度額😜)と家庭内平和維持のため、大好きな宏美さんのコンサートと言えど、遠征などには滅多に行かれないことは前にも書いた。この毎年のライブハウスツアーにしても、大阪・名古屋(以前は福岡も)に遠征する友人を横目で眺めながら、さらに東京の4公演全てに参加したい衝動を抑えながら、毎年ワンステージのみの参加にとどめていた。

 

 ご案内の通り、宏美さんのライブハウスツアーでは、メインの固定曲数曲を除いて、ステージごとにセットリストが変更され、全てに参加できてようやくツアーの全貌が判るようになっている。今回はコロナ禍で私は比較的裕福だったこと(苦笑)、半年ぶりということで家での風当たりも強くないこともあり、昨日は初めて1st、2ndのステージを通して堪能することができた。新しい素敵なステージ衣装も2種類拝めた。😍

 

 さて、「残したい花について」は、現在休止中の『もうすぐ45周年!』のツアータイトルにもなっている曲だ。宏美さんの敬愛するさだまさしさんが、宏美さんの還暦を祝して2018年に書き下ろしている。ライナーノーツやMC等でご存知の方も多いと思うが、宏美さんからの「大きなバラードの後、ピアノ一本で歌えるような曲」というリクエストにまさしさんが応えた曲である。

 

 まさしさんから送られてきた音源をご夫婦で聴いて、今ちゃん(夫の拓哉さん)が「愛があるなぁ」と言われたそうだが、まさに!宏美さんへの、そして全ての人々に対する愛が溢れた曲である。歌詞も曲もあくまでシンプルでストレートに心に刺さる。スタジオ録音版の編曲は、近年の宏美さんのステージを支えるバンドリーダーの上杉洋史さんである。

 

 

 再び COTTON CLUB のライブに話を戻す。ここからは若干のネタバレを含むが、このブログをアップする頃には、今日のステージも終了するであろうから、お許しいただけるであろう。半年ぶりのステージということで、宏美さんご自身も1stステージの最初の挨拶から涙声になるところもあった。恒例の古川さんのギター一本、青柳さんのピアノ一本で歌う曲、そして一五一会を弾きながらの新曲初公開もあった。ラストは代表曲のあの曲であったが、1stのアンコールはこの「残したい花について」であった。

 

 宏美さんがMCでおっしゃったことには、「今日この曲をリハーサルで歌った時には、リハーサルなのに2番が全然歌えないくらい泣いちゃった」そうだ。今日は聴いている私も、ハナから涙腺が緩みっ放しであった。特にアンコールのこの曲は、コロナ禍の渦中、いやまさに「禍中」に聴くとまた違った感慨を覚え、溢れる涙を堪え切れなかった。宏美さんの歌声は、どこまでも温かかった。

 

 

 3番の歌詞の前半を以下に載せてみる。

 

♪ 何を歌おうかな 人生の記念に

 下手だけど精一杯 頑張ったんだから

 楽しい歌や 切ない歌を

 舞台中に広げて 抱きしめたいから

 

 宏美さんが歌詞の通りに、この半年ぶりのステージで数ある名曲の中から「何を歌おうか」想いを巡らせての選曲だったことがよく伝わってきた。中でも、この「残したい花について」は聴く者に強く訴える歌唱であった。(「何を歌おうか」考えた末、2ndステージのアンコールで宏美さんが選んだ曲は、さらに大きなサプライズであった。その曲については、また機会を改めて書いてみたい。

 

 本当に宏美さん、青柳さん、古川さんをはじめ、この2日間のライブ実施のために尽力されたオフィシャルやお店の全ての皆様に、改めて感謝と労いの言葉を送りたい。ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。1日も早くこの事態が収束し、安心して演奏活動やお店の営業が通常に戻るよう、祈ってやみません。

 

 

(2018.8.15 アルバム『PRESENT for you * for me』収録)