宏美さんの独身時代最後を飾る、通算45枚目のシングル。作詞:山川啓介、作曲:三木たかし、編曲:萩田光雄と、それまで宏美さんに多くのヒット曲や名曲を書いてきた先生方の作品である。

 

 ファンの間でも根強い人気のある楽曲で、30周年の際のリクエストでは、並み居るヒット曲を抑えてトップ5入りを果たしたと言う。

 

 

 内容は、言うまでもなく結婚を間近に控えた女性の心情を綴った歌だ。「♪ 名前が変わると あなたに知らせた〜」の歌い出しは、結ばれなかった昔の恋人への便りだろうか。続く「♪ 手紙が戻る 木枯しのポスト」というフレーズから、ある程度の時間が経過して転居先もわからなくなった2人の関係が見て取れる。

 

 サビに入る「♪ ねえみんな いくつになっても未成年〜」からは、青春時代を共に過ごした仲間たちへの感謝の想いが迸り出る。そして、「♪ 幸せになるからね」と静かに新生活への決意を述べるのだ。

 

 また、作詞の山川さんは、いくつかリサイタルで訳詞を担当された曲を紹介する際に私も触れたが、表向きの詞の意味の裏に、ファンや聴衆へのメッセージを仄めかす、いわばダブル・ミーニングがお得意だ。

 

♪ またこの世に 生まれて来ても

 いっしょに 生きようね

 すばらしい仲間たち

 

 このフレーズなど特に、デビュー以来宏美さんと共に歩んできたファンなら、自分たちに対してのメッセージに聞こえ、涙なくしては聴くことができないだろう。

 

 三木・萩田両先生によるメロディーとサウンドも、「岩崎宏美」の大きなひと区切りにふさわしいスケールの大きなバラードである。私など、未だにこの曲のイントロを聴くだけで感動で心が震える。やはり私にとって特別な曲なのだ。奇を衒わないハ長調の素朴なメロディーであることによって、山川さんの素晴らしい詞、宏美さんの素直な歌唱がストレートに心に響く。

 

 特にサビの高音域での歌唱は、85年の独立以降、シングルではほとんど見られなかった出色の歌い上げで、聴く者の胸に迫るものがある。「♪ 思い出に 負けないで 」で2コーラス終わった後、メノ・モッソ(それまでより遅く)で沁み入るように歌われる「♪ 幸せになるからね/ありがとう いい旅を」は、結婚宣言でありながら、同時に青春への訣別でもある。

 

 この曲は、NHK『歌謡パレード’88』のオリジナル・ソングということで、何週かにわたって披露された。その最終回、独身最後のステージ。宏美さんは歌い出す前からほとんど泣き顔であった。1コーラス目のブリッジの「♪ 私たちが〜」まで歌うと感極まってしまい、「♪ この地球を〜」以降は歌えなくなってしまう。サビからは泣きながら、声を振り絞っての絶唱になる。当時そのビデオを何度見て、何度泣いたことか。今こうして打っているだけで、また泣けてきてしまう。

 

 YouTubeにその時のビデオがアップされていた。皆様にもご一緒に泣いていただこう。

 

 

 時は流れてーー。2003年、宏美ファンの仲間で2組目のカップルがめでたくゴールインした。お二人の披露宴で、この「未成年」をピアノで弾かせてもらったのも懐かしい思い出だ。早いもので、そのお二人の一粒種のお嬢さんも、もう高校生である。🥰

 

(1988.12.16 シングル)

 

P.S. 以前、J-Lyric.netは結構歌詞が間違っていると書いた。この「未成年」も、「♪ またこの世に 生まれて来ても〜」のいいところが、何と「♪ またあの世👻に 生まれて来ても〜」になっていた件🤣🤣🤣