デビューアルバム『あおぞら』のB面ラストに収められている。このアルバムでは、本当に瑞々しい16歳の宏美さんの声を堪能できる。何という澄んだ、一点の曇りも、憂いも、そして迷いもない歌声なのだろう。時にあどけなさを残しつつ、何と歌の上手な少女なのだろう。そう思わずにはいられない。「天まで響け」とはよく言ったものだ。

 

 名曲の誉れ高いこの曲は、阿久悠・馬飼野康二コンビの作品である。最初の『岩崎宏美ベスト・ヒット・アルバム』、3枚組の『宏美』に始まり、CD時代にも『30TH ANNIVERSARY BOX』『岩崎宏美ゴールデン☆ベストⅡ』などにも、もれなく収録されている人気ナンバーである。

 

 

 ライブ盤にも一度だけ入っている(キー=-1)。1980年リサイタルのアンコール、「私たち」のあと最後にこの曲のイントロが流れると、会場のボルテージは最高潮となる。「♪ ひとり窓辺で 空を見つめて〜」と歌い出した途端、満場割れんばかりの拍手。宏美さんはすぐに泣き出してしまい、嗚咽をこらえながらの絶唱となる。私もその場にいたが、思い出すだけで胸が熱くなるシーンである。

 

 

 そして2001年、シングル「夢」のカップリング曲として、再びレコーディングされている(キー=-2)。古川昌義さんのアレンジで、ギターとアコーディオンだけ歌われる。グッと穏やかで温かな演奏である。当時も、よくコンサートのアンコールで歌われた。

 

 

 歌とは不思議なものである。同じ詩、同じ曲なのに、その時の歌い手の年齢、置かれている状況、そして歌い方によって全く違って聞こえることがある。そしてもちろん、聴き手の心持ちによって。

 

 オリジナルバージョンの歌唱は、愛する人を想って、というより「恋に恋する」少女の気持ちを歌っているように聞こえる。あまりにも健康的で、人を愛するが故の煩悶懊悩といったものが感じられないのだが、そこがまた素晴らしい。

 

 ライブバージョンは、宏美さんの「今日は最後まで、皆様の温かい応援、本当にもぅ心に滲みてます」という涙ながらのMCに全てが表れていると思う。この時期宏美さんは、大人の歌手への脱皮を試みるも、セールス的には低迷し、苦しい1年だった。「♪ あなたおやすみ いって下さい/この私が いった後で」ーーーそんな状況で宏美さんが歌うこの歌は、変わらずに応援してくれるファンへの、宏美さんからの感謝のメッセージのように聞こえる。

 

 そして2001年バージョン。「♪ たとえ今 はなれても/心の糸 つながれている」「♪ ひとときも忘れない/この気持ち 愛なのね」ーーーこれはもう、離れて暮らす息子さんたちを想う母としての宏美さんの歌にしか聞こえない。そして、その延長線上で生まれたのが、母親としての気持ちに特化した「同じ空の下で」(2004年)だと思うのだ。

 

 今度宏美さんがこの歌を披露してくれる時、宏美さんはどんな想いで歌ってくれるのだろうか。そしてそれをわれわれファンはどんな気持ちで受け止めるのだろうか。

 

(1975.9.5 アルバム『あおぞら』収録)