あの阿久悠先生がシングルに推したという、ファンの間で名曲の誉れ高い楽曲である。4thアルバム『ウィズ・ベスト・フレンズ』のA面ラストで絶大な効果を残すこの曲は、かつての北海道大学をイメージして書かれたとも言われている。このアルバムが、宏美さんの高校卒業を記念して作られたということを考えると、実年齢よりやや背伸びをした歌であったということもできる(18歳で♪ ビールのジョッキを🍻 あげたわ、は今ならアウト😜)。

 

 とにかく学校というところが大好きだったという宏美さんが、この歌はお気に入りだったことは間違いなく、『宏美』『30TH ANNIVERSARY BOX』『ゴールデン☆ベストⅡ』などにことごとく収録されている。また当時コンサート等でも好んで歌われ、ライブ盤にも音源が残っている(77年)。

 

 私が宏美さんのファンになり、この曲に出会ったのは、まさに大学1年生の時であった。北大ではなかったが、地方の大学で、仲間はそれぞれ故郷を離れて寮生活を送っていたので、この歌はまさに自分たちの生活にピッタリ重なり合うものであった。皆の愛唱歌とまでは行かなかったが、事あるごとに私が流したり歌ったりしていたので、仲間うちでは誰ひとり知らぬ者のない歌とはなっていた。もし阿久先生の推薦通りシングルになっていたら、と考えると残念に思わぬでもない。

 

 この歌を生で聴ける機会は、思いの外早くやってきた。私が大学に入った年の11月、青山学院大学の学園祭で宏美さんと五輪真弓さんのジョイントコンサートがあった。青学に進んだ高校時代の友人の女性が、それを知って私を誘ってくれたのだ。五輪さんはこの年「恋人よ」が大ヒット。五輪さんとの持ち歌交換やデュオの他は、宏美さんがこの年のコンサートで歌っていたナンバーやヒット曲が多かったが、学園祭ということで、この「学生街の四季」も披露してくれたのだ。

 

 肝腎の曲について触れよう。阿久先生の詩は、タイトル通り、学生街の日常の風景を季節ごとに折り込んだ内容。春の新しい出会いから、別れの乾杯の季節までの1年間を歌っている。作曲は川口真先生。フォーク調の親しみやすいメロディーである。編曲は萩田光雄先生で、管楽器・弦楽器・コーラス等も駆使し、華やかでスケールの大きさを感じさせるアレンジになっている。そして、宏美さんの歌唱がどこまでも爽やかだ。頭サビの部分は上のDの音までと音域いっぱいを、若々しい美声と声量で歌い切っている。

 

 この曲は、イントロ、サビそしてエンディングの明るいメジャーのサウンドが全体のイメージを支配している。しかし、サビ以外のメロディーはやや哀調を帯びたマイナーであり、「♪ だけど海の町へ帰った彼/どうしたのか 便りもない」「♪ 愛の行方きめてほしいけれど/まだ二人に 答はない」など、学生時代らしい揺れる想いも表現されている。それをまた、宏美さんが見事に歌い分けているのだ。

 

 

 2010年のデビュー35周年記念コンサート。久々にこの曲が取り上げられた。われわれ永年のファンが、大きな歓喜を以てそれを迎えたことは、ここに記すまでもないであろう。

 

 

(1977.5.25 アルバム『ウィズ・ベスト・フレンズ』収録)