出光美術館で「出光佐三、美の交感」を観た!その3
出光美術館で「出光佐三、美の交感」を観てきました。
展示概要
出光美術館は、令和6年(2024)12月をもって帝劇ビルでの活動をいったん終え、しばらくのあいだ休館します。皆様をこの展示室へお迎えする最後の一年は、4つの展覧会によって当館のコレクションの粋を紹介しています。第2弾となる本展では、当館の創設者・出光佐三(いでみつさぞう)(1885-1981)と同時代を生きた作家たちの活動に、スポット・ライトを当てます。
佐三は、日本・東洋の古美術を蒐集することに情熱を傾ける一方で、自分と同じ時代の作家たちと親しく交流し、彼らの制作活動に寄り添いました。その代表的な存在が、板谷波山(いたやはざん)(1872-1963)と小杉放菴(こすぎほうあん)(1881-1964)の2人です。彼らと佐三の関係は、一方が出資し、もう一方が作品でそれに報いる、というものとはいささか異なります。双方が深い信頼と敬意を寄せつつ、ときに芸術のあるべき姿を語り、互いの感性を深く響かせあった結果として、いくつかの珠玉の作品が生み出されました。
淡く清らな光のなかに優雅な文様を浮かび上がらせ、あるいは東洋の古陶磁に学びながら新しい表現を目指した波山のやきもの。そして、油彩画と膠彩画(日本画)の2つの方法で、東洋の理想像を追い求めた放菴の絵画。本展では、彼らの作品の数々を、生きた時代を佐三と共有し、やはり佐三がその作品の蒐集に意を注いだ2人の画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)とサム・フランシス(1923-94)の絵画とともにご覧いただきます。
展覧会の構成は、以下の通りです。
- 第1章
- 美の交感のはじまり —板谷波山・小杉放菴と出光佐三
- 第2章
- 新鮮な表現を求めて —西洋との出会い
- 特集
- 日本画のような表現 —ジョルジュ・ルオーとサム・フランシス
- 第3章
- 東洋への回帰と創造 —古くて新しい表現
- ここからは第3章を載せることとします。
第3章 東洋への回帰と創造 —古くて新しい表現
板谷波山は、日本陶磁史に例を見ない意匠表現を生み出すとともに、中国陶磁を中心とする東洋陶磁や工芸品、茶道具などの研究を積み重ね、その学習成果を青磁や白磁などの制作に活かしました。それらは単なる古典の再現にとどまらず、豊かな創造性に満ちています。その作陶姿勢には、欧州の芸術様式を研究したからこそ、幼い頃より慣れ親しんだ東洋陶磁の美しさや茶道具への敬意があったものと思われます。
大正2年(1913)、青年油彩画家としてパリに留学していた小杉放菴は、文人画家・池大雅(1723-76)の傑作「十便図」の複製を目にしたことをきっかけに、日本・東洋の絵画の表現に傾倒することになります。これ以降、油彩画では主題と表現に東洋的な情緒を加味し、膠彩画(日本画)では麻の繊維で漉いた中国伝来の麻紙の上に清澄な彩色を施す手法によって、東洋の理想的な絵画世界を追求しました。
板谷波山
小杉放菴
「出光佐三、美の交感――波山・放菴・ルオー」
令和6年6月1日発行
編集・発行:公益財団法人 出光美術館
「出光美術館」ホームページ
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