出光美術館で「花鳥の美―珠玉の日本・東洋美術」展を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「花鳥の美―珠玉の日本・東洋美術」展を観た!

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出光美術館で「花鳥の美―珠玉の日本・東洋美術」展を観てきました。行ったのは5月6日、1ヶ月近くも前のことです。いつものように金曜日の夜、「列品解説」を目当てに行ったのですが、連休中ということで、残念ながら「列品解説」はありませんでした。今回は陶磁器の出品が多く、僕の苦手な分野なので、是非とも「解説」を聞きたかったのですが、グルッとただ観るだけに終わってしまいました。


展覧会の構成は、以下の通りです。

Ⅰ 花鳥が出逢う水辺

Ⅱ 文様の美を競う

Ⅲ 富貴花の展開

Ⅳ 幻想世界に迎えられた鳥たち

Ⅴ 人々に愛された花鳥の主題


日本・中国の絵画・工芸では、自然の豊かさは花や鳥たちが戯れる姿によって生き生きと表現され、「花鳥」を讃える魅力的な作品がたくさん生まれました。花と鳥たちの出会いの場は、山奥深く広がる水辺でした。ということで導入部は、「花鳥が出逢う水辺」です。


まず最初に、中国・明時代の作品、邉楚善の「夏景聚禽図」です。最初に出てくる作品が、後の展示の導入部となっている場合が多いのが出光の展示の特徴です。作品解説には、以下のようにあります。「叭々鳥や雀が中空を舞い、繁茂する竹と海棠には頬白、鶯、燕などが群れ集う。描かれた花鳥は変化に富み、描写は精緻を極めている。草花を輪郭する筆線は抑揚が効いてたいへん快く、鶉の羽などに顕著に示される細やかな彩色表現が見事である。また、画面右下で体の一部を水中に浸けた一羽は、ぬれた胸毛の質感をいくつかの毛束によってあらわした。どこを取っても実感にあふれた絵画である」。


狩野永納の「遊鶴図屏風」、右隻では中空を舞う山鵲に丹頂が呼応し、左隻には真鶴の親子のもとへ別の一羽が飛来します。岩塊や樹木の輪郭線はどれも太く力強い。胡粉の線でていねいに描かれた丹頂の羽、色彩のグラデーションが素晴らしい牡丹の花弁、金泥で描き起こす葉脈など、細部の表現は見事です。一方、山本梅逸の「四季花鳥図屏風」は、右隻では梅や柳が重なり合うように立ち、岩の陰にはつがいの孔雀が描かれています。左隻では、松がつがいの丹頂に覆いかぶさるように枝を伸ばし、その奥に描かれた竹はもやを介して見ています。強弱の変化を付けた筆触や墨の濃淡が湿潤な空気をもたらします。おおよそ水墨を基調としているが、鳥たちを包む草花の一部には控えめながら彩色が施されています。


伝周之冕の双幅「鳳凰孔雀図」は、幾層にも重なる雲霞がたなびくもと、向かって右幅に鳳凰と梧桐を配し、左幅に孔雀と牡丹を描いています。鳥類をとらえる筆が緻密なのに比べて、樹幹や太鼓岩の輪郭やしわはきわめて簡素に描かれています。羽が金泥の細線で描き起こすなど、鳥類の細部描写の緻密さは見事です。 「吉野龍田図屏風」は、古来より桜と楓の名所として親しまれた吉野と龍田を主題として描かれた屏風です。金地の画面のほぼ中央に巨樹の幹が存在感を示して左右に枝を広げています。楓葉の赤、桜花の白、その対比と装飾的な要素を局面まで突き詰めた作品です。


陶磁器では、まずは柿右衛門の「色絵花鳥文蓋物」が分かり易い。白地に花樹と鳥を合わせて描く図様、明るい色彩に包まれた蓋物で、銘には「富貴」の文字が書かれています。野々村仁清の「色絵鳳凰文共蓋壺」は、金銀の彩色に花唐草文を地文様として、様々な姿態で描かれる鳳凰は、至る所に角度によって千変万化の光を放ちます。景徳鎮窯の「金襴手孔雀文共蓋仙盞瓶」は、金襴手の仙盞瓶で、水注として使われたもの。胴部に桃形の窓をつくり、その中に金彩で雌雄の孔雀を描き、背景には牡丹文をハイしています。窓の外側には蓮弁や牡丹花などの文様をていねいに描いています。


盆では、朱色が印象的な中国・明時代の「堆朱蓮池水禽文稜花盆」と、黒の裏側に朱が僅かに見える「堆黒花鳥文八稜盆」が細工の極地で秀逸です。食籠では、八角形、三段に作った中国・明時代の「堆黒八仙人花鳥文食籠」と、蓋と身を12弁の稜花形に作った中国・元時代の「螺鈿楼閣人物花卉文食籠」が細工、文様ともに圧巻です。


画像が多いですが、おつきあいください。


Ⅰ 花鳥が出逢う水辺








Ⅱ 文様の美を競う



Ⅲ 富貴花の展開


Ⅳ 幻想世界に迎えられた鳥たち



Ⅴ 人々に愛された花鳥の主題




「花鳥の美―珠玉の日本・東洋美術」

花鳥は、日本・東洋の美術作品の中で、最も愛された主題です。四季折々の変化を見せる豊かな自然の下で、幾多の花が、各々の美を競わせながら華やぎある風情を伝えてきました。花を愛でる歴史は、古くから著名な詩歌に詠まれつづけられてきました。その発展と相まって絵画の主題や工芸の意匠として取り上げられ、定着していったことが作品から理解できます。一方、こうした色とりどりの花を求めて集ったさまざまな鳥たちの姿も、花と共に愛でられるようになると、花鳥の主題は、瑞々しい自然の様相と生命の輝きを象徴するテーマとして人々の間で認識されてゆきました。本展では「花鳥の美」と題し、出光コレクションより絵画・工芸の優品、約80件を厳選して特集展示いたします。色彩豊かな花園に満ちあふれる優美さや、日常では簡単に見ることのできない鳥たちが一つの空間に集い戯れる幻想的な絵画の世界をはじめ、草花の特徴と個性的な造形を参考に意匠の面白味を追求した工芸など、華麗で普遍的な美の魅力に迫ります。日本・東洋美術における花鳥の意匠が織りなす不思議な魅力と、その変遷や大いなる広がりをご堪能いただきます。


「出光美術館」ホームページ


とんとん・にっき-katyo1 「花鳥の美―珠玉の日本・東洋美術」展

図録

平成23年4月23日発行
編集・発行:公益財団法人出光美術館











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