出光美術館で「やまと絵の譜」展を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「やまと絵の譜」展を観た!

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出光美術館で「やまと絵の譜」展を観てきました。あたまに「日本の美・発見Ⅱ」とあります。ということで、チラシを見直してみたら、前回観た「水墨画の輝き―雪舟・等泊から鉄斎まで」展は「日本の美・発見Ⅰ」ということでした。次回の「中国の陶俑」展は「やきものに親しむⅡ」となっているので、シリーズ化して展示していこうとする現れなのでしょう。


今回は「やまと絵の譜」です。「やまと絵」という言葉の発生は平安時代、古くは中国の風景を描いた絵画を「唐絵」と呼んだのに対し、「やまと絵」はこの国の様子を写した絵画でした。その後、鎌倉時代に中国より水墨画の技法が伝わってからは、様式や流派までをも含む言葉へと広がっていった、というようなことが書いてありましたが、表記だけでも「やまと絵」は「倭絵」「倭画」「和絵」などとあり、必ずしも衆目の一致する言葉ではないようです。平安時代に誕生した「やまと絵」は、室町時代には華麗な色彩で飾られた「屏風絵」となります。日々の生活への興味は絵巻などに託され、江戸時代の「風俗画」や「浮世絵」となります。


いずれにせよ、四季を彩る草花や、美しい自然の姿を、また折々の行事や風俗を映してきた記憶の集積でもあります。今回は、室町時代のやまと絵屏風から近世への発展、説話絵巻から浮世絵まで、出光コレクションより重要文化財5件を含む約40件が展示されています。数はそれほど多くはありませんが、一つ一つの作品は密度のあるものばかりです。いつもの通り、出光の会場構成と解説は非常にわかりやすく、僕は「やまと絵」についてよく理解できました。


師宣の「立姿美人図」、ふっくらとした女性が左手で着物を持ち上げて歩む姿は師宣ならではの美人画です。やはり師宣、「江戸風俗絵巻」、まさに風俗、』さまざまな職業に人がいて、桜が咲き、』柳が揺れ、四季の移ろいが描かれています。16人の男女が楽しそうに輪になって踊っています。「四季日待図巻」は流罪にあった英一蝶が、三宅島で描いたもの。英一蝶の「凧揚げ図」、幅約10cmと極端に細長い、そのなかに空に上がっていくやっこ凧を表情豊かに描いています。柱に飾るような形式の絵です。


岩佐又兵衛晩年の作「職人尽図巻」は、童子と戯れる布袋や踊る大黒、さまざまな商売や労働に従事する人びとを穏やかに描いています。獅子舞が風塵雷神図のようで面白い。岩佐又兵衛の光源氏を描いた「野々宮図」、稀代の色男を描いた「在原業平図」。「業平図」の画賛に「在原業平朝臣 大方は月をもめてしこれそこの つもれは人の老となるもの」とあります。ともに色を極端に少なくして描いた水墨画のようです。「江戸名所図屏風」は、八曲一双の屏風絵ですが、気になったのはその高さ、107.2cmしかありません。北は上野、浅草から、南は増上寺、芝浦辺りまで、江戸を俯瞰した最古の屏風絵で、描かれている人数が凄い、2200人以上の人物が描かれているという。


会場の構成は、以下の通りです。

第Ⅰ章 「うつつ」をうつす―浮世絵と「やまと絵」 

第Ⅱ章 「物語」をうつす―「やまと絵」絵巻の諸相 

第Ⅲ章 「自然」をうつす―「やまと絵」屏風とその展開



今回は屏風が多かったのですが、とりあえず僕が気になった作品を、下に挙げておきます。

第Ⅰ章 「うつつ」をうつす―浮世絵と「やまと絵」












第Ⅱ章 「物語」をうつす―「やまと絵」絵巻の諸相 






第Ⅲ章 「自然」をうつす―「やまと絵」屏風とその展開






以下、出光美術館のウェブサイトより

「やまと絵」という言葉の発生は、平安時代にさかのぼります。古くは、中国の風景を描いた絵画を「唐絵」と呼んだのに対し、「やまと絵」はこの国の様子を写した絵画でした。その後、鎌倉時代に中国より水墨画の技法が伝わってからは、様式や流派までをも含む言葉へと広がってゆきます。このように、本来「やまと絵」は、水墨画のように特定の技法や主題とははっきりと結びつかない言葉でした。それゆえ、用いる立場や時代によってその意味は大きく揺らぎ、さまざまな解釈を生みます。

本展では、時間の経過にその変遷を追うのではなく、自ら「やまと絵」の継承者だと主張した江戸時代の浮世絵師たちから展観をはじめます。その上で、江戸時代以前に誕生した作品を眺め直し、「やまと絵」の新たなイメージを探ります。

「やまと絵」とは、この国に暮らす人々が、自分たちの生きるこの時、この場所を鮮やかにあらわしてきた絵画です。移ろう四季に応じて劇的に表情を変える自然、日々の生活で育まれた折々の行事、また、そこにつむぎ出される物語――大切に蓄積されてきた「いま」と「ここ」の情景は、どれも現代に生きるわたしたちの心に懐かしく、しかし、鮮烈に響いてきます。いつも身近に親しんでいた何気ない光景に生まれる美しさ。皆さまにとって、「やまと絵」が毎日を大切に過ごすための手がかりとなれば幸いです。



とんとん・にっき-ide1 日本美・発見Ⅱ「やまと絵の譜」
図録

平成21年6月6日発行

編集・発行:出光美術館











「出光美術館」公式サイト


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