出光美術館で「国宝・風神雷神図屏風」展を観る! | とんとん・にっき

出光美術館で「国宝・風神雷神図屏風」展を観る!

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チラシには「66年の歳月を経て、琳派の三巨匠が描く風神雷神図屏風が、この秋、出光美術館に集う」とあります。ん?「琳派」も「風神雷神図」も詳しいことは判らず、しかもそれが3作品もある?一堂に会するのは66年ぶり?なにはともあれ、これは見逃すわけには参りません。行ってきました、丸の内の「出光美術館」へ。皇居のお堀端に面した「国際ビル」に「帝国劇場」と一緒に入っています。「出光美術館」には、浮世絵展などを観るために、何度か来たことがあります。ロビーの隅にある休憩所からの皇居の眺めは抜群です。「出光美術館」はその名の通り、出光興産の創業者の出光佐三が、その生涯をかけて蒐集した出光コレクションが発祥です。



収蔵品は国宝2件、重要文化財50件をふくむ1万件に及び、国宝「伴大納言絵巻」や、日本の書画、中国・日本の陶磁器、近代作家の小杉放菴や板谷波山、洋画家のジョルジュ・ルオーやサム・フランシスなど、幅広いコレクションが特徴です。今回はロビーに「モディリアーニ」の作品が数点、展示してありました。ちなみに、次回の展覧会は「国宝・伴大納言絵巻展」で、全巻全場面の公開を節目の年に行っていて、4度目の大公開だそうです。「国宝・伴大納言絵巻展」は全3巻、平安時代の作で、源氏物語絵巻などとともに三大絵巻と称されているものだそうです。「新たな発見、深まる謎」という副題が付いており、これも見逃せません。

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桃山から江戸初期の絵師、俵屋宗達が残した最高傑作、国宝「風神雷神図屏風」(建仁寺蔵)。遠くインド・中国に起源をもつ神々の像を、古典絵巻や彫刻作品などにヒントを得て、ダイナミックに描き出したこの金地屏風は、強烈な存在感を放ち続けています。その作品を、後に尾形光琳がそっくり真似て、作品を残しました。この2人の「風神・雷神」の図像を重ね合わせてみると、輪郭線がぴたりと重なっていました。光琳は宗達の絵を、薄紙などを使って写していたらしい。ということが、出光美術館の「国宝・風神雷神図屏風」展で判明しました。つまり、7、80年後に宗達の流れを汲み、琳派の後継者を自負した尾形光琳によって、「模作」がつくられたということになります。そしてそこからさらに一世紀ほどを経て、幕末に江戸で琳派を再興した酒井抱一が、再び光琳画から「模作」をつくりました。



これら3つの作品こそが、江戸の初期・中期・後期にそれぞれ琳派絵師の手で描きあげられた、3つの風神雷神図といわれるものです。その3作を並べ、重ね合わせて見せています。細部を除き、宗達の輪郭線とほぼ一致する光琳の「風神雷神」、武家出身で狂歌や俳諧を好んだ抱一は、新たに描き起こされた、軽妙で戯画的な「風神雷神」となっています。そして3つの屏風図を「目」「髭」「角」「腹」「手」「足」「雲」などに分解して、つぶさに細部を比較しています。琳派の絵をこれほどまで徹底的に比較検討したのは、いままでにないこと、今回が初めてでしょう。「ディテールは細部に宿る」ということもあります。一つの流派として系譜化された琳派ですが、継承される美意識の象徴である「風神雷神図屏風」の揃い踏みは、芸術鑑賞の醍醐味を味わえる貴重な機会だといえます。


出光美術館