出光美術館で「水墨画の輝き―雪舟・等泊から鉄齋まで」展を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「水墨画の輝き―雪舟・等泊から鉄齋まで」展を観た!

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出光美術館で「水墨画の輝き―雪舟・等泊から鉄齋まで」展を観てきました。ポスターの絵柄は、長谷川等泊の「竹虎図屏風」の左隻、虎が首をかしげて頭を掻いているところです。 なかなかユーモラスな虎の表情です。近くで見ると虎の毛のふさふさとした細かいところまで描かれています。虎がいいだけではなく、竹がまたいい。竹がすくっと力強いところが素晴らしい。それにしても大きな屏風です。左隻・右隻、それぞれ3.6mですから、計7.2mの屏風です。いや、圧巻です。これがやはり今回の目玉作品でしょう。そうそう、宮本武蔵の「竹雀図」、さすがは剣豪、竹のスパッとしたところが素晴らしいし、また、書も上手いんですね、いや、驚きました。


今まで水墨画はなぜか敬遠してきたので、まともに観たことがなかったのですが、去年の「対決・巨匠たちの日本美術」あたりから素晴らしい水墨画を観る機会が続いています。府中の「山水に遊ぶ」展や、静嘉堂文庫の「筆墨の美―水墨画展」など、あるいはもっとあったかもしれませんが。こんなことを言って笑われそうですが、水墨画をじっと見ていると、色が浮かんでくるから不思議です。白黒の水墨画が、カラーに見える時があるのです。いや、特に根拠はないのですが。まあ、水墨画は結局は「余白の美」なんでしょうけど・・・。


それともう一つ、一口に水墨画と言っても広うござんす。要するに描き方のテクニック、手法を指して言ってるのですが。浦上玉堂のことを念頭に書いているのですが、他の画家とは異なり、画がダイナミックです。特に下に載せた「潑墨山水図」、これは「潑墨」という技法で描かれたそうです。「まず酒を飲んで酔いを得て」、ここが大事、それから「墨を絵絹に潑(そそ)ぎ、揮ったり掃いたりし、また濃淡をつけて描き出す技法」。今で言うアクション・ペインティング、当時としては非常に前衛的、いや、今でも水墨画としては前衛的です。


さて、能阿弥や相阿弥は中国・南宋の画僧・牧谿(もっけい)に学んだという。静嘉堂文庫では牧谿の「羅漢図」がトップにありました。今回、牧谿の水墨画は、霞む遠山と連なる雁を描いた「平沙落雁図」と、枯れ木にとまる叭々鳥を描いた「叭々鳥図」の2点が出ていました。さすがは「日本水墨画の父」を称されるだけのことはあります。もちろん今回の「水墨画の輝き」展、副題に「雪舟・等泊から鉄齋まで」とある通り、他にもいいものが目白押し、特に「屏風」にいいものがたくさんありました。が、しかし、残念ながらここにいちいち挙げるわけにはいきません。


面白かったもの、表情がいいですね、相阿弥の「腹さすり布袋図」、いやいや僕はこんなに太ってはいませんが。まあ、どちらかというと雪舟の「赤衣達磨図」の方が似ていると言えば似ているかも?これは小さな作品ですが一気に描きあげる妙、葛飾北斎の「亀と蟹図」、そして仙厓の「狗子画賛」が、共に実にコミカルで傑作でした。前にも書いたのですが、なんか出光美術館の展示の仕方、というか、解説が端的で上手いというか、妙にわかりやすいんですよね、僕には。好きな美術館の一つです。ソファーに座って、皇居の向こうに沈む夕日に見とれ、時間が経つのを忘れさせてくれました。



Ⅰ水墨山水画の幕開け





Ⅱ阿弥派の作画と東山御物




Ⅲ初期狩野派と長谷川等泊







Ⅳ新しい個性の開花









以下、出光美術館のウェブサイトより

中国・唐時代、水墨画は山水画を描く技法として成立しました。以降、水墨山水画は中国絵画史のメーンストリームとなりましたが、時代が進むにつれて人物画や花鳥画にも水墨が用いられ、宋時代(10~13世紀頃)には、さまざまなジャンルを担う一般的な技法として普及しました。

日本には12世紀末頃の鎌倉時代に禅宗とともに本格的に伝わり、14世紀には、可翁や黙庵といった画僧たちの宗教体験に基づいた作画が認められます。15世紀になると、道釈人物画の制作を主としてきた日本の水墨画は一変し、鑑賞芸術の対象としての水墨山水画を軸とした新しい展開が生まれ、如拙、周文、雪舟などによって、その全盛期が築かれました。以降、日本の水墨画は独自の展開を見せるのです。

本展ではまず、日本で水墨山水画が本格的に描かれ始めた応永年間(1394~1428)を出発点とし、日本の水墨画に大きな影響をおよぼした牧谿、玉澗らの中国水墨画も交えて、室町時代の水墨画を展観します。そして日本の水墨画表現が大きく飛躍した桃山時代の巨匠・長谷川等伯の屏風絵や、個性豊かな画家たちがさまざまな表現を試みた江戸時代の狩野派、琳派、文人画、さらには近代水墨画の富岡鉄斎の作品まで、出光コレクションによって日本水墨画の多彩な世界をご覧いただきます。

水墨画は、水、墨、紙(絹)という素材を使って、モノクローム表現を追求するものですが、古来やまと絵の色彩に親しみ、色とりどりの四季の風情を大切にしてきた日本人にとって、“墨に色彩を暗示させる”ことは重要な表現姿勢であったといえるでしょう。日本水墨画の多様な展開を追いながら、豊かな色彩を喚起する日本水墨画のみずみずしい輝きを堪能していただければ幸いです。



とんとん・にっき-ide2 「水墨画の輝き―雪舟・等泊から鉄齋まで」
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