出光美術館で「茶陶への道 天目と呉州赤絵」展を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「茶陶への道 天目と呉州赤絵」展を観た!


出光美術館で「茶陶への道 天目と呉州赤絵」展を観てきました。「やきものに親しむⅧ」とあります。前回の「やきものに親しむⅦ」は「中国の陶俑 ―漢の加彩と唐三彩―」でした。またいつものように金曜日の6時から担当学芸員により行われる「列品解説」に間に合うように行ってきました。もう最近では、出光といえば金曜日の夕方に行って「列品解説」を聞く、というのが僕の習慣、恒例になっています。


今回は「茶陶への道 天目と呉州赤絵」ですが、出光には珍しく大阪市立東洋陶磁美術館から借り受けた「国宝・油滴天目茶碗」が目玉です。ただし、展示は12月5日までです。僕ももちろん今回は、この「国宝・油滴天目茶碗」を観るために行ったようなものでした。たしか重要文化財の「油滴天目茶碗」は、東京国立博物館(古田織部―土井大炊頭利勝―木下和泉守長保―松平不昧―文化庁―東京国立博物館)にも、静嘉堂文庫美術館(大阪の藤田家旧蔵)にもありました。静嘉堂文庫美術館では何度か「国宝・曜変天目(稲葉天目)」を観ていますが、「国宝・油滴天目茶碗」は、それに次ぐ高位にあったものです。天目とは、中国製の黒釉茶碗を日本で呼び倣わした名称です。スッポン口に小さな高台という天目形をなし、鉄質の黒釉が掛かっています。


解説には、以下のようにあります。

天目茶碗では焼成時に釉中に生じた酸化第二鉄が、冷却の過程で結晶が生じることによって、さまざまな斑文が顕れることがあるが、この椀は内外にびっしりと円い―油滴のような斑文となる“油滴天目”の最高傑作である。金・銀・青などに神秘的に輝く油滴は、内外ともに見られ、引き締まった器形と調和している。豊臣秀次―西本願寺―京都三井家―若狭酒井家と伝来しており、その間に添えられた付属品類が、この椀の歴史と価値を物語っている。


そんなこともあり、普段はほとんど展示されたことのない「付属品類」も、挽家、挽家袋、天目台、木札、添状に至まで、しっかりと展示してあります。添状には「油滴天目由来」が書かれています。「秀次所持聚楽道 具の内西本願寺に 有之而其後六角の 三井へ来り居候を同所より 譲り請るものなり 堆朱の臺箱書付は 遠州筆に有之右は三井 にて添候哉に候へ共随分 能臺故此まゝに添て 永く置くべき事」とあります。


出光所蔵のもので、今回出されている「天目茶碗」は、「禾目天目茶碗」3点、「天目茶碗」、「油滴天目茶碗」、「金彩文字文天目茶碗」、各1点ずつ、計6点です。すべて中国南宋時代のもので生産地は「建窯」です。


図録には以下のようにあります。

浙江省北部の天目山の禅寺に留学した僧が持ち帰ったことを由来する“天目”茶碗は、福建省建窯(建陽市)を中心に北宋時代に生まれ、南宋時代以降福建省各地で焼造された。建窯産の浅い椀であることを示す“建盞(けんさん)”は、一般に低く小さな高台から器壁が開いてゆき、口縁下で1回すぼまってさらにまた外反する(鼈口)形態で、高台の周りが無釉である。これらの中は釉中の鉄分が酸化第二鉄に変じ冷え固まる時に生ずる結晶が、銀色・青色・茶色などの美しい斑文を生ずることがあり、我が国で曜変・油滴・禾目(兎毫、今日陽の建盞)などに区別され、室町時代には唐物の代表とされ珍重された。今日に伝えられた曜変3椀と油滴1椀は、国宝に指定されている。


「列品解説」は、出光美術館中国陶磁担当の金沢氏、声も大きく、説明も簡潔で、たいへん好感が持てました。僕が今まで出たなかでは、一番たくさんの人が集まりました。中国の福建省という、極めてローカルなところが産地の福建陶磁、最初は龍泉や景徳鎮のイミテーションとして作られ、海路日本へも数多くもたらされました。そんな意味で「茶陶への道」でもあった、というわけです。それほど大したものでないものが、日本に来てから大事にされ、価値が出てきました。彼も語っていたように、今回の展覧会はそれほど名品が集まっているわけではありません。唐物陶磁を主とする出光コレクションの福建陶磁に、ともに運ばれた龍泉や景徳鎮などを加えて、「一衣帯水」の間柄を彩った陶磁文化を紹介するというのが、今回の展覧会です。

特別出品



宋代福建陶磁のはじまり



天目―福建に生まれた鉄釉の美



珠光青磁―輸出された福建青磁


茶入と茶壺―日本文化が育んだ唐物茶陶



呉州赤絵―漳州窯の展開


華南三彩―交趾焼



明清時代の徳化窯


「やきものに親しむVIII 茶陶の道 ―天目と呉州赤絵―」

やきものに親しむシリーズの第8回は、出光コレクションの陶磁分野から、中国福建省の陶磁をとりあげます。本展では、天目や呉州赤絵を中心に、福建陶磁およびその周辺の陶磁を、当館コレクションによって紹介するとともに、この機会に館外の名品も加えて福建陶磁の美をさまざまな角度から鑑賞していただきたいと考えています。福建省は、山地が多く平野が少ないため、古来より省外から穀物を輸入する必要があり、商品作物・手工業製品の生産が盛んな土地柄でした。またそれらを運ぶ海上貿易商人――海商として活躍する福建人も数多く輩出しました。陶磁器生産も福建各処で興り、宋代以降、重要な省外輸出品の一つになっていきました。当初は、越州や龍泉の青磁(浙江省)、景徳鎮白磁(江西省)などの模倣品がつくられましたが、やがて福建独自のやきものが現れます。建窯の天目、同安窯の青磁、徳化窯の白磁、漳州窯の呉州手などがその代表です。一方これらの福建陶磁は、もとは日用雑器であったり、貿易品の容器であったりしたものでしたが、とくに我国ではその中の優れたものや日本的な美意識に叶うものが、寺院や武家の室礼や喫茶、後には唐物茶陶として重要な文化要素となり、新たな価値を与えられて伝世され、伝えられる中でさらに価値を増してゆきました。そうした“日本文化の中で育まれた陶磁美”が、福建陶磁の心髄であるとも言えるでしょう。今回の展示では、器形・釉薬や文様の美しさとともに、そうした、伝えられる中でさらに付け加えられた価値をも含めてご鑑賞いただきたいと思います。


「出光美術館」ホームページ


とんとん・にっき-tya23 やきものに親しむⅧ

茶陶への道 天目と呉州赤絵

図録

発行日:平成22年11月13日
編集・発行:出光美術館










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