出光美術館で「小杉放菴と大観 響きあう技とこころ」展を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「小杉放菴と大観 響きあう技とこころ」展を観た!


出光美術館で「小杉放菴と大観 響きあう技とこころ」展を観てきました。いつ行っても、なんか出光美術館って、すごくわかりやすく展示してくれています。過去に出光で観た「文字の力・書のチカラ」展、「志野と織部」展、「国宝・風神雷神図屏風」展、等々、僕には展示や解説など、他の美術館に比べてたいへんわかりやすかったように思います。記事はうまく書けませんでしたが。「艶と粋―肉筆浮世絵展」(平成8年1月9日初版第一刷発行)という縦長の図録が手元にあります。この展覧会も僕にはわかりやすかった。


「小杉放菴と大観」展、アタマに「近代日本画のロマン」とあり、そして「響きあう技とこころ」、なるほどと思わせます。今回の展覧会を観て、放菴の人となりや、放菴と大観の関係がよくわかりました。なにしろ今まで僕にとっては日本画の分野はよく知らない分野でした。他にも知らないことはたくさんありますが。今まで日本画は、ちゃんと観てきませんでした。日光へ行ったときも、小杉放菴美術館があるのを横目で見て、その車を駐車場に止めただけで、館内には入りませんでした。今から思うと悔やまれます。まあ、また観る機会もあるでしょうけど。


やはり特筆すべきは、小杉放菴が「日光東照宮」を描いた洋画家、五百白文哉の弟子で、血気盛んな若き頃は酒好きで自ら「未醒」と号した豪快な洋画家でした。パリに留学しても東洋を愛した放菴は、ヨーロッパで池大雅の画帖に出会い、「帰り行くべき道」を示されたと思い、帰国後は日本画に傾倒していきます。横山大観との出会いは、三越主催のパーティ会場で、13歳も年上の大観に血気盛んな洋画家・放菴が喰ってかかったことだというから面白い。画壇に対する不満を語り合ううちに、重大な曲がり角にあった2人は意気投合します。


「日光東照宮」は水彩ですが、その頃の酒を愛した放菴の雰囲気は、油彩の49歳の「自画像」と、「太宰府大伴旅人讃酒像」に重なるように思います。旅人も酒をこよなく愛したという。旅人は「験なき物を思わずは一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし」と詠んだという。これに和して放菴は、「ひとり酒もてあましたるさびしさを独り笑はむかひとり泣かむか」と詠んだという。「天のうづめの命」、これも油彩ですが、テーマは天の岩戸に身を隠した天照大御神を誘い出そうとする天のうづめの命、両手を広げてステップを踏む踊りは、笠置シヅ子がモデルです。当時日本最大のタンカー「日章丸」のために放菴が贈った一枚だという。そういえば佐世保の親戚に連れられて、日章丸を見に行った記憶があります。出光佐三と小杉放菴の親交の始まりでした。


岩を見事に描くことで秀でている放菴の傑作「南枝早春」は、画面の大部分を岩が占め、啄木鳥が梅の木の枝にとまっています。普通なら岩は奇岩といってもいいくらい変で、こんな構図は他に例がありません。さて、「放菴と大観」、今回はどちらかというと放菴が主で、大観は添え、引き立て役です。といっても僕には大観のいいところはよくわかりませんが。放菴と大観の画像を幾つか並べて載せておきます。なかでも僕が好きなのは、中国の故事を題材にした「虎渓三笑」です。3人のふくよかな笑った顔が素晴らしい。同じく「虎渓三笑」を題材に日本の昔話風にアレンジしたという「三笑」、友人たちと酒を飲んで語り合う幸せが滲み出ています。岩の間から寒山拾得が姿を見せるという「寒山拾得」、まるでかくれんぼをしている子供のようです。


「片ぼかし」という技法がテーマに上っていますが、「放菴が持ち帰った東洋的な線」とあります。帰国した放菴がよく使用し、大観がこれを気に入った、とあります。僕にはよく理解できませんでしたので、もう少し勉強してみましょう。


放菴には「金太郎」を描いたものが幾つかあるようです。放菴80歳を過ぎた頃の作、無邪気な金太郎とその足元にうずくまるうさぎを描いた「金時」(昭和30年頃)も素晴らしいが、ここでは鉞をかついで悠々と熊にまたがる「金太郎」(昭和18年頃)を載せておきます。放菴の孫たちが、金太郎のモデルだという。復元した麻紙に濃い墨に薄い藍を重ねて描かれた「瀟湘夜雨」、雨に打たれた柳と、縦に細く描かれた雨が見事な作品です。二曲一双の白梅の古木に羽を休めるアカゲラと天然石の手水鉢を描いた「梅花小禽」も素晴らしいが、ここでは襖四面の「梅花小禽」を載せておきます。大きく弧を描くように枝を張り出した白梅の老木に、山鳥が片足を上げてとまっています。「南枝早春」の啄木鳥といい、アカゲラ、山鳥など、放菴の描く小禽も表情豊かで見事です。



















とんとん・にっき-houanzuroku 「小杉放庵と大観」

図録












出光美術館


小杉放庵記念日光美術館


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