出光美術館で「没後90年 鉄斎」を観た! | とんとん・にっき

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出光美術館で「没後90年 鉄斎」を観てきました。行こう行こうと思っていましたが、とうとう会期末が近づいてきてしまいました。正直言って、鉄斎の描く黒々とした水墨画は、あまり好きではありませんでした。が、そうも言ってはいられません。ちゃんと観ておこうと思い、金曜日の夜の「列品解説(ギャラリートーク)」を聞いてから観たいと思っていたのですが、どうしても時間が合わない。結局のところ、会期末は迫るし、なかなか行けないしで、なにはともあれ、観るだけは観ておこうと、暑い中、大慌てで行ってきました。会場はけっこう混んでいて、意外や意外、お年寄りばかりでなく、若い人も数多くいました。鉄斎人気、恐るべし…。


図録の初めの「ごあいさつ」は、以下のようにあります。


ごあいさつ

幕末・明治・大正と激動の時代を生きた富岡鉄斎(1836-1924)は、学問の道を志し、儒学者として大成する傍ら、書画の制作に勤しみました。当時の東西画壇においては、西欧化が次第に進む中で、鉄斎は先達文人たちが遺した想いに共感し、たくさんの書物を通じて学び得た世界観を、自らの絵筆により描き出したのです。そして若き頃から日中のさまざまな書画の優品にふれ、それらの画法に倣った鍛錬の成果が、最終的にはこれらの諸要素が見事に混ざり合って、独自の画境を築くに至っています。とくに晩年に数多く手がけた仙境画の作品群には専ら定評があります。これらは豪放磊落、大胆かつ自在な筆勢ばかりが際立ってみえますが、部分に注目すると、そこには繊細な色彩感覚にあふれた表現美が見て取れます。また水墨の色調は透き通るほどに瑞々しく、その潤いは画面いっぱいに広がって幽玄な妙趣を醸し出しています。本展では、没後90年を迎えた近代文人画の巨匠・鉄斎の魅力に迫るべく、出光コレクション約70件を一堂に展観しました。5章のテーマの下に、その偉業を辿りつつ、近代の京都画壇を牽引した奇跡の画業を回顧します。

出光美術館


ポスターやチラシ、図録の表紙には、鉄斎86歳の作「梅華邨荘図」が使われています。図録の解説には、「モチーフの形態や輪郭を骨太に力強く捉えている。一見すると粗放な筆致であるが、墨や色、各々のモチーフの形象が不思議と融け合い、表現主義的なダイナミックな山水画あらわれる。梅の芳香のなか、谷間の集落で酒を求める人物が描かれているが、まさに鉄斎が求めた理想郷の姿である」とあります。


「もっとみどころ」には、以下のようにあります。

近代画壇において、鉄斎は「仙境画」の画家でした。「万巻の書を読み、万里の道をゆく」という実践実証の姿勢は、当初、実景を描く方向へと向かいましたが、年を重ねてゆく中で、書物より学び得た理想の世界が、絵筆を通じて自らのこころの中で広がってゆくことに気づきはじめます。そして次第に、古典を素材とした仙人の像や桃源郷の故事、あるいは仙境の景色を専ら描くようになってゆきました。


出光美術館では、過去に「ユートピア 描かれし夢と楽園」という展覧会がありました。その時の図録を見直してみると、幾つかの「扇面」とともに、道服姿の男、荘伯微が口から吐き出した仙境を自慢げに唐子に見せている「口出蓬莱図」が出ていました。鉄斎58歳の清々しい作品です。


鉄斎といえば、全体的に淡い墨と濃い墨を用いて大胆に描かれた作品が多いという印象が強い。出光の「日本の美・発見1 水墨画の輝き 雪舟・等伯から鉄斎まで」では、鉄斎の3作品が出ていました。「仏鑑禅師図」(大正8年・1919)、「渓山図」(大正10年・1921)、「高士弾琴図」(大正12年・1923)がそれです。自然の息吹を伝える水墨表現で、そこには色彩はほとんどありません。


鉄斎は、大雅、蕪村、玉堂、竹田といった日本の代表的な文人画家の系譜に連なる最後の文人です。京の法衣商の家に生まれ、幼少から聴覚を患ったため、学問の道を辿り、まさに「万巻の書を読み、万里の道を行く」ことを実践するかのような人生を歩みました。鉄斎は自分を儒者であって画家ではないと自負してやまなかったが、その画は余技の域を脱しており、深い漢学の知識を背景として、自己のほとばしる感性を豪快に筆に託して、独自の画風を打ち立てました。


展覧会の構成は、以下の通りです。


1 若き日、鉄斎の眼差し 学ぶに如かず

2 清風への想い 心源をあらう

3 好古趣味 先人への憧れと結縁

4 いざ、理想郷へ

5 奇跡の画業 自在なる境地へ

6 扇面を愛す



1 若き日、鉄斎の眼差し 学ぶに如かず




2 清風への想い 心源をあらう



3 好古趣味 先人への憧れと結縁



4 いざ、理想郷へ





5 奇跡の画業 自在なる境地へ



6 扇面を愛す



「没後90年 鉄斎」

幕末・明治・大正と激動の時代を生きた富岡鉄斎(1836~1924)は、学問の道を志し、儒学者として大成する傍ら、書画の制作に勤しみました。当時の東西画壇においては、西欧化が次第に進む中で、鉄斎は先達文人たちが遺した想いに共感し、たくさんの書物を通じて学び得た世界観を、自らの絵筆により描き出したのです。そして若き頃から日中のさまざまな書画の優品にふれ、それらの画法に倣った鍛錬の成果が、最終的にはこれらの諸要素が見事に混ざり合って、独自の画境を築くに至っています。とくに晩年に数多くてがけた仙境画の作品群には専ら定評があります。これらは豪放磊落(らいらく)、大胆かつ自在な筆勢ばかりが際だってみえますが、部分に注目すると、そこには繊細な色彩感覚にあふれた表現美が見て取れます。また水墨の色調は透き通るほどに瑞々しく、その潤いは画面いっぱいに広がって幽玄な妙趣を醸しだしています。本展では、没後90年を迎えた近代文人画の巨匠・鉄斎の魅力に迫るべく、出光コレクション約70件を一堂に展観します。5章のテーマの下に、その偉業を辿りつつ、近代の京都画壇を牽引した鉄斎の、奇跡の画業を回顧します。


「出光美術館」ホームページ


tomi2 「没後90年 鉄斎」

図録

第1刷 平成26年6月14日発行

第2刷 平成26年7月29日発行

編集・発行

公益財団法人 出光美術館






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