とんとん・にっき2

来るもの拒まず去る者追わず、
中年建築家が日々の駄文を重ねております。

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三谷太一郎の「日本の近代とは何であったのか―問題史的考察」(岩波新書:2017年3月22日第1刷発行、2017年4月14日第2刷発行)を読みました。


本の帯には、以下のようにあります。

「私なりに日本近代についての総論を目指した――」

政党政治/資本主義/植民地帝国/天皇制

4つの成り立ちを解き明かす


この本の内容

政党政治を生み出し,資本主義を構築し,植民地帝国を出現させ,天皇制を精神的枠組みとした日本の近代.バジョットが提示したヨーロッパの「近代」概念に照らしながら,これら四つの成り立ちについて論理的に解き明かしていく.学界を主導してきた政治史家が,日本近代のありようについた問題史的に考察する重厚な一冊.


1936年生まれの、昨年80歳を超えた三谷太一郎は、自らの学問人生を振り返って、次のように言う。

「老年期の学問」は、どちらかといえば、特殊なテーマに焦点を絞る各論的なレベルの発展よりもより一般的なテーマに傾斜した総論的なレベルの発展に力点を置くべきではないかと考えます。


そして、「日本近代そのものについて、総論的なものを目指したことには、それなりに意義があった」とし、145年前に英国近代について総論的考察を試み、成功しているウォルター・バジョットの「自然学と政治学」を、本書の導入部に使ったことは成功した、と述べています。


この本は、「日本の近代は、日本が国民国家の建設に着手した19世紀後半の最先進国であったヨーロッパ各地列強をモデルとして形成された」と始まります。三谷は、バジョットが提示したヨーロッパの「近代」概念に照らしながら、四つの成り立ちについて論理的に解き明かしていきます。その四つとは、政党政治を生み出し、資本主義を構築し、植民地帝国を出現させ、天皇制を精神的枠組みとしたことです。


一般に幕末維新期からスパッと切り離されて明治期が始まったとされてきました。しかし、最近では、そうではなく、多くは幕末期に用意され、幕末維新期と明治は緩やかに繋がっていたとする説が、多く見られるようになっています。この辺、僕にはうまく説明できませんが、「近代」は「前近代」を否定し、それから断絶することによって成立すると同時に、「前近代」のある要素を蘇らせることによって出現すると、バジョットは説明すると三谷はいう。


僕には、第3章「植民地帝国を出現させたこと」、第4章「天皇制精神的枠組み」が、驚きの連続でした。特に「地域主義構想」と「教育勅語」は、守旧派たちとの丁々発止のやり取り、そういう繋がりだったのかと、初めて知ったことばかりでした。なにしろ、知らないことばかりで、「ああ、そういうことだったのか!」の連続でした。


最後に三谷は、次のように言う。

「本書は私が意図したところよりも内容的には平凡であり、むしろ平凡であることがその長所の一つであるかもしれない」と言い、「あえて蜀を望む言を付け加えれば、私はもちろん本書が現世の読者に読まれることを望みますが、できれば後世の読者にも読まれることを望みます」とし、その理由を「本書が試みた日本近代の初歩的な概念把握と近代後の日本および世界への展望がどの程度に有効なものであったかを、後世の立場から検証してもらいたいと願うからです」と、自信を示します。


三谷太一郎
1936年 岡山市生まれ
1960年 東京大学法学部卒業
現在―日本学士院会員,東京大学名誉教授
専攻―日本政治外交史
著書―『増補 日本政党政治の形成』『大正デモクラシー論[第3版]』『増補 政治制度としての陪審制』『ウォール・ストリートと極東』『学問は現実にいかに関わるか』『人は時代といかに向き合うか』『戦後民主主義をどう生きるか』(以上,東京大学出版会)『近代日本の戦争と政治』(岩波書店)ほか


目次

序 章 日本がモデルとしたヨーロッパ近代とは何であったか
第一章 なぜ日本に政党政治が成立したのか
 1 政党政治成立をめぐる問い
 2 幕藩体制の権力抑制均衡メカニズム
 3 「文芸的公共性」の成立――森鷗外の「史伝」の意味
 4 幕末の危機下の権力分立論と議会制論
 5 明治憲法下の権力分立制と議会制の政治的帰結
 6 体制統合の主体としての藩閥と政党
 7 アメリカと対比して見た日本の政党政治
 8 政党政治の終わりと「立憲的独裁」
第二章 なぜ日本に資本主義が形成されたのか
 1 自立的資本主義化への道
 2 自立的資本主義の四つの条件
  (1)政府主導の「殖産興業」政策の実験
  (2)国家資本の源泉としての租税制度の確立
  (3)資本主義を担う労働力の育成
  (4)対外平和の確保
 3 自立的資本主義の財政路線
 4 日清戦争と自立的資本主義からの転換
 5 日露戦争と国際的資本主義への決定的転化
 6 国際的資本主義のリーダーの登場
 7 国際的資本主義の没落
第三章 日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか
 1 植民地帝国へ踏み出す日本
 2 日本はなぜ植民地帝国となったか
 3 日本はいかに植民地帝国を形成したのか
  (1)日露戦争後――朝鮮と関東州租借地の統治体制の形成
  (2)大正前半期――主導権確立を目指す陸軍
  (3)大正後半期――朝鮮の三・一独立運動とそれへの対応
 4 新しい国際秩序イデオロギーとしての「地域主義」
  (1)一九三〇年代――「帝国主義」に代わる「地域主義」の台頭
  (2)太平洋戦争後――米国の「地域主義」構想とその後
第四章 日本の近代にとって天皇制とは何であったか
 1 日本の近代を貫く機能主義的思考様式
 2 キリスト教の機能的等価物としての天皇制
 3 ドイツ皇帝と大日本帝国天皇
 4 「教育勅語」はいかに作られたのか
 5 多数者の論理と少数者の論理
終 章 近代の歩みから考える日本の将来
 1 日本の近代の何を問題としたのか
 2 日本の近代はどこに至ったのか
 3 多国間秩序の遺産をいかに生かすか
あとがき
人名索引


朝日新聞:2017年4月9日

「著者に会いたい」

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