出光美術館で「悠久の美」を観た! | とんとん・にっき

出光美術館で「悠久の美」を観た!


出光美術館で「悠久の美―唐物茶陶から青銅器まで―」展を観てきました。チラシには、「悠久なる美の伝統を誇る中国。日本は常に中国の優れた文化に憧れ、受容してきました。・・・本展では、中国をその源流にまで遡り、その真の醍醐味に触れていただきたい」とあり、出光コレクションより厳選した古代青銅器や玉器、古代の陶器類に、従来親しまれてきた宋から明・清時代までの書画・工芸品をあわせた約160件が展示されています。


先日、格安ツアーで上海へ行ったときに、上海の中心地である人民広場のなかにある「上海博物館」を見学することができました。博物館の建物の形が面白い。中国古代の宇宙観、「天空地方」(天は円く地は方形)説に従い、方形を土台とした円柱形の建物になっていました。


百万点近くに達したという所蔵のうち、重要文化財だけでも13万点に及ぶと言います。特に古代青銅館は、紀元前2000年前後から紀元5世紀の春秋・戦国時代まで400点余りの青銅器が展示されていました。その多様な形と、繊細な文様には驚かされました。また古代陶磁器館も新石器時代から清朝まで、中国陶磁器8000年の多岐多様な歴史を観ることができました。展示されていた500点余りの作品は中国陶芸史上の名窯を代表する傑作を観ることができました。

「上海博物館」を観た!(上海・その1)


さて、出光美術館の今回の「悠久の美―唐物茶陶から青銅器まで―」展の展示で特徴的なのは、時代の新しいものからはじめ、中国美術の歴史を意図的に遡っていく展示構成をとっているところにあります。


展示構成は、以下の通りです。

第1章 唐物荘厳 まだ見ぬ中国文化に憧れた日本

第2章 三代憧憬 いにしえの古代王朝に思いを馳せた中国

第3章 源流遡上 古代中国工芸の精華


鎌倉時代以降、禅宗文化の流入を契機にもたらされた多様な品々は「唐物」として珍重され、大切に伝えられてきました。「唐(中国)」からもたらされた品物です。水墨画や墨跡、茶陶、漆器や青磁等はその代表です。一方、我々に馴染みの薄いのが青銅器や玉器をはじめ、紅陶や黒陶、灰陶や加彩陶器など古代の陶器類です。逆にこちらの方が、特に青銅器類が、中国美術の本流であると、今回の展覧会で伝えています。


「青銅器」はほとんどが商(殷)・周時代に信仰された天の神々や祖先の霊に対する祭祀に用いられた供応のための容器であったものです。青銅器は、これまであまり展示される機会が少なかったのですが、今回の展示で青銅器の形から「青磁」「釣窯系」「五彩」に分かれていく過程が、また「青銅器」から「青磁」へそして「胡銅」へ至るという流れが示されていました。


図録には以下のようにあります。(悠久の美をめぐって:八波浩一)

日本では「唐物」というコンテクストのなかで受け入れられて珍重され、さらに今日に至るまで大切に伝えられてきた青磁や胡銅などの工芸品が、実は古代中国の理想王朝の伝統復活の一つの形として進められた宋時代の「三代」造形の「倣古」という背景をもち、それに端を発した「倣古」の長い伝統のなかで生み出された様々な名品の一部であったということである。

第1章 唐物荘厳 まだ見ぬ中国文化に憧れた日本





第2章 三代憧憬 いにしえの古代王朝に思いを馳せた中国


第3章 源流遡上 古代中国工芸の精華



「悠久の美―唐物茶陶から青銅器まで―」
悠久なる美の伝統をほこる中国。日本は常に中国の優れた文化に憧れ、先進の制度や情報、絵画や書、工芸品などの文物を受容してきました。特に、鎌倉時代以降、禅宗文化の流入を契機にもたらされた多様な品々は「唐物」として珍重され、大切に伝えられてきました。水墨画や墨蹟、天目茶碗などの茶陶、漆器や青磁、胡銅と呼ばれた銅器などはその代表です。一方、中国美術の本流にありながら、私たちにはやや馴染みの薄いのが青銅器や玉器をはじめ、紅陶や黒陶、灰陶や加彩陶器などの古代の陶器類です。墓に埋納されたり、時代があまりにも古すぎて請来の機会にめぐまれなかったりといった理由から、その他の工芸品のように知られてはいませんが、これらの作品には当時の驚くべき技と巧みの粋がこめられています。また、洗練された器形、神秘的な装飾意匠や象徴的な意味合いは、かたちを変えながらも後の「唐物」の世界にまで受け継がれているのです。その意味では、これらの品々は「唐物」の源流といっても過言ではありません。本展では、出光コレクションより厳選した古代青銅器や玉器、古代の陶器類に、従来親しまれてきた宋から明・清時代までの書画・工芸品をあわせた約160件を展示いたします。「唐物」の美しさを堪能しつつ、さらに、その源流である古代の青銅器や玉器、陶器に示された技術の巧みを再確認し、中国美術の、特に工芸美術の真の醍醐味にふれていただきたいと思います。


「出光美術館」ホームページ


とんとん・にっき-yuu1 「悠久の美―唐物茶陶から青銅器まで―」

平成24年4月3日発行

編集・発行:公益財団法人出光美術館

編集補助:株式会社芸術新聞社










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