出光美術館で「古唐津―大いなるやきものの時代」を観た! | とんとん・にっき

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出光美術館で開館50周年記念「古唐津―大いなるやきものの時代」を観てきました。


出光美術館での展覧会は、内容にかかわらず、義務的といっていいほどですが、できるだけ観るようにしています。ですから時には気が進まない展覧会も、なかにはあります。実はこの「古唐津」がそうでした。チラシをみても、いま一つピンとくるものがありません。行こうか、行くまいか、けっこう悩みました。が、しかし、できるだけ観るようにしていた出光美術館の展覧会、行っておかないと後で悔やむことになります。何はともあれ、行ってこようと自分で自分のお尻を叩いて、出光美術館へ行ってきました。


あにはからんや、会場はたくさんの人で賑わっていました。「開館50周年記念」の展覧会だから、出光が悪いものを出すはずがありません。行ってみれば、行っただけの価値はあるものです。最初のころはやはりピンときませんでしたが、観ているうちに、次第にどんどん引き込まれていく自分を発見しました。今までも何度も書いていますが、陶磁器ほどわからないものはありません。それがよく見ると、なんとなく趣もあり、味わいもあり、引き込まれていくものです。自分でも驚きました。


出光コレクションの古唐津は、総数300件を超えるという。絵唐津、奥高麗、朝鮮唐津、斑唐津、瀬戸唐津、二彩唐津(古武雄)など、単に「古唐津」と言っても奥が深い。これがほとんど桃山時代のものだというから、驚きです。過去の出光の展覧会を図録をひっくり返して調べてみたら、「麗しのうつわ―日本やきもの名品選」というのが見つかりました。Ⅱ章「幽玄の美―ゆれうごく、釉と肌」というのがそれです。「古唐津の釉と土肌は、余情をたたえた景色を織りなして私たちを魅了します」とあります。11点ほど、出ていました。

出光美術館で「麗しのうつわ―日本やきもの名品選―」展を観た!


展覧会の構成は、以下の通りです。


序章    古唐津への招待―その経糸と緯糸

第1章 絵唐津の大皿と茶陶

第2章 茶碗

第3章 朝鮮唐津と斑唐津―綾なす色、温雅なる白

第4章 古唐津の宴―懐石の食器と酒器

終章   近代への響き

          出光佐三と「丸十の茶碗」



序章    古唐津への招待―その経糸と緯糸


第1章 絵唐津の大皿と茶陶


第2章 茶碗



第3章 朝鮮唐津と斑唐津―綾なす色、温雅なる白



第4章 古唐津の宴―懐石の食器と酒器




終章   近代への響き


出光佐三と「丸十の茶碗」

古唐津は、出光コレクションの草創期を代表する一つです。総数300件を超えるコレクションは日本最大級のもので、絵唐津、奥高麗、朝鮮唐津、斑唐津、瀬戸唐津、二彩唐津(古武雄)など、古唐津の広がりを網羅する充実した内容をそなえています。

この大コレクションは、出光興産創業者で出光美術館初代館長である出光佐三(1885-1981)と、一腕の絵唐津茶碗の出会いから始まりました。それは、昭和14年(1939)春のことでした。

この時、品川区高輪にあった佐三の自宅を、一人の古美術商が絵唐津茶碗を持って訪れました。丸に「十」のような簡略な線描があるだけの素朴な茶碗です。これを目にした佐三は、「これは偽物だ、持って帰れ」と、古美術商を追い返しそうになりました。佐三はこの茶碗に出合う前には、古唐津を嫌っていたのでした。

しかし古美術商は臆することなく「これが本物の古唐津です。世間によくあるのは茶人がつくらせた瀬戸唐津や、京都でつくった京唐津のようなもので、そちらが偽物です。唐津の窯趾を何年もかかって研究してこれが本当の唐津だとわかりました」と説明し、佐三もこれに大いに得心しました。

そして「これが本物なら、いくらでも持ってこい」と告げたのです。以後、佐三はこの茶碗を「丸十の茶碗」と読んで親しみ、実際に自らが茶を飲むために愛用しました。飾らぬ素朴さと、朗らかな健やかさ、そして佐三が同じく愛し集めた仙厓の禅画に通ずる枯淡の味わいといったものが、意気軒高たるこの実業家の心を深くとらえたのです。この「丸十の茶碗」との出会いこそが、佐三の本格的な古唐津蒐集の幕開けでした。



開館50周年記念

「古唐津―大いなるやきものの時代」

古唐津は、飾らぬ土味と豪放な造形、郷愁を誘うやわらかな色合いのやきものです。九州で生まれた桃山陶芸の至宝、古唐津に、出光美術館初代館長・出光佐三(いでみつさぞう 1885-1981)は深く心を寄せ、愛し、総数300件を超える日本最大規模のコレクションが誕生しました。
 絵唐津、奥高麗、朝鮮唐津、斑唐津といったさまざまな表情をそなえたやきものは、戦国の世、桃山時代の茶人や大名の高い評価を得たばかりか、近代という新たなる日本を切り拓いた時代においても、実業家、評論家、陶芸家などをも広く魅了し、今なお私たちの心を惹きつけてやみません。
 時代を超えて人々を鼓舞し、癒してきた古唐津には、やきものの原点ともいえる自然さと素朴さ、朗らかさが溢れています。また豪放さと穏やかさ、力動感と静けさといった、矛盾する魅力をも包摂したそのスケールの大きさこそ、桃山陶芸の至宝、古唐津の真髄といえるでしょう。
 開館50周年を記念して、ここに、出光コレクション草創期を代表する古唐津コレクションから、約180件を厳選し、展観いたします。本展を通して、古唐津の、包容力に富む豊饒な魅力をご堪能いただけましたら幸いです。


「出光美術館」ホームページ

kokara1 開館50周年記念

「古唐津―大いなるやきものの時代」
図録

平成29年2月11日発行

編集・発行:

公益財団法人出光美術館







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