「またがってもいい?」
俺がそう言うと、靖史は「倒すなよ?傷つけたらコレやぞ」と言って拳を俺に向けた。
「わーってるって。キーは?」
「ほれ」
靖史は車の鍵やら家の鍵が大量にまとめてあるキーホルダーを俺に投げ渡した。
俺はさっそく単車にまたがった。
ヒロシはこれが済めば開放されると思っているので余裕でタバコをふかしている。
俺はキーを差し込み、エンジンをかけた。
見た目だけではなく、整備が行き届いているのでエンジンも一発でかかり、アクセルを吹かしたら爆音がガレージの中に響き渡った。
音圧が強くて、体の芯にビリビリと伝わってきた。
俺は益々欲しくなった。
俺はまたがったまま、靖史を見た。
そして、道路に出ていいかという意味で外を指差した。
さすがに靖史は首を振った。
エンジンを切った俺は、ヒロシに「お前も乗るか?」という意味で目をやったが、ヒロシは腕で×をした。
「すんげーわ。これ。良い単車だな」
「あったりまえやろ」
そう言う靖史の顔は満面の笑顔だ。
単車乗りはとにかく褒められると嬉しい。
「って事だから、くれ」
「ん?」
靖史は何を言われているのか理解出来ていないようだ。
「だーかーらー、この単車、くれって」
「お前に?」
「そう。俺に。もらう。マジで」
「あっはっは。その単車だけは駄目や」
「うん。まぁ、そういうのはいいからさ、もらうよ。マジで」
俺は真剣に答えた。
靖史の満面の笑みが見る見るうちに素の顔に戻り、巣に戻ったと思ったらそのまま冷酷な表情になった。
欲しいものは今欲しい性格の俺は、このまま単車を発進させて逃げ切ろうと思い立った。
俺は後先考えずに、また単車のエンジンをかけた。
~つづく~
井口達也
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